伊豆に春の訪れを告げる河津桜まつり。2025年は河津桜の原木発見から70年の節目の年にあたり、関係者も例年以上の盛り上がりを期待していたが、2週間を過ぎても人影はまばらで駐車場係も手持ぶさたの様子だ。一体、何が起きているのか?
早春の伊豆の風物詩

2月1日から始まった伊豆に春を告げる河津桜まつり。
例年、満開になると辺りは一面ピンク色に包まれ多くの観光客が訪れる。
しかし、2025年は「まったく咲いていない」と出店者が自嘲気味に話し、観光客も「咲いていないのはわかって来たので、こんな感じかな」と冷めた様子だ。

まったくといっていいほど花が咲かず、桜並木は開幕から2週間が経っても枝が目立つばかり。
河津町観光協会・板垣雄大さんは「今の時期に咲いてほしいが、開花はまだ先になりそう」と話す。
まつりが始まるタイミングにはつぼみが膨らみ始めていたため、開花の近さを予感させたが、その後の最強寒波によって“まさか”の事態となった。

桜の木を見上げても咲いている花を探すのが難しい状況で、人通りは例年と比べて激減。
まつりの期間中にも関わらず閉じたままの店も目立ち、出店者は「客が少ない。やっぱり桜も咲いていないので、そこはしょうがない」と肩を落とす。
当然のことながら、まつりの実行委員会が管理する駐車場も閑散とした状態が続いている。
担当者に話を聞くと「毎年この時期になると朝早くから京浜地区から客がかなり来るが、今日も見ての通りガラガラ。そんな状況が毎日続いている。困っちゃう」と戸惑いを隠せない様子だ。
開催期間の延長を決定

こうした中、河津桜まつり運営委員会は華麗に咲き誇る桜を多くの人に楽しんでもらうため開催期間を延ばすことを決めた。

関圭宏 委員長は「こんな寒いことは初めてなくらいで、我々も正直戸惑っているが、逆に河津桜が長く楽しめるように我々も準備していきたい」と前を向く。
期間延長に困惑する人も

ただ、開催期間の延長によって新たな悩みが生じている人たちもいる。
「延長するという方向性が決まってそのニュースが伝わってから、いま入っている日程から満開になるであろうという日に(宿泊予約を)変える客がだいぶ増えてきた」と話すのは河津七滝温泉にある旅館「青木の坂」の鈴木彰治さんだ。
見頃にあわせて宿泊日を変更する客が続出する一方、もともと入っていた予約の穴を埋められない状況に陥っているという。

また、まつりの出店者は遠方から来ている人も少なくない。
出店者の1人は「大阪から来ていて(期間中は)帰らない。その分だけ費用(滞在費、人件費など)がかかる。出店するにしてもバイトなども入れなければならない」と困惑を口にする。
なぜ開花がこれほど遅れているのか

近年では類をみないほどの開花の遅れ。
県の伊豆農業研究センターによる2月12日の調査では、2分咲きになるのが3月に入ってからと見られている。

伊豆農業研究センター 生育・加工技術科の加藤智恵美 科長は「桜の花は単純に暖かければ早く咲くというわけではなく、前の年から準備を始めていて、秋頃に一度寒さに当たることが必要。寒さが欲しい時期に暑くて、暖かくなってほしい時期に寒いという、逆、逆に来ているので(開花が)遅いのかなと思う」と解説する。

異例の事態に多くの人が翻弄され、様々な方面から困惑の声が漏れる2025年の河津桜まつり。
関係者は桜が満開に咲き誇る日を心待ちにしている。
(テレビ静岡)