2024年の1年間で、統計史上最悪の約23億円の被害を出したニセ電話詐欺。なかでも警察官をかたる詐欺が急増している。果たしてどんな手口なのか。
「2時間後に携帯電話が停止されます」
帽子を被り、何やら制服のようなシャツを着た男。その背後には「警察庁」と大きく書かれた横断幕にエンブレム。さらに机の上にはトランシーバーやファイルの他、手錠がむき出しのまま置かれている。

これは本物の警察官ではない。福岡県警の警察官をかたったニセ電話詐欺の画像だ。この写真を撮ったのは関東在住のA子さん。きっかけは1月末に携帯電話に掛かってきた自動音声の電話だった。

A子さんによると「女性の声で『ソフトバンクなんですけれども、2時間後に携帯電話が停止されます』と案内があって『このことに疑問がある人は番号を押して下さい』」と電話があったという。

突然、掛かってきた電話で「2時間後に携帯電話が止まる」と告げられたA子さん。何のことか分からず、自動音声に促されるまま『1番』のボタンを押した。

すると電話口に出たのは、店舗としては実在しない『ソフトバンク福岡』の『マツシマ』と名乗る男。A子さんによるとマツシマは電話口で「この携帯電話からの被害が福岡県警に15件ある。それで2時間後に停止されます」と告げてきたという。

「うちはauを契約しているので、その時はちょっと『あれ?』と思いました。福岡県警の方に回しますということで、それで福岡県警の警察官に電話が回りました」とA子さんはマツシマからの電話を振り返る。
「マツシマ」から「福岡県警・佐藤」へ
次に電話口に現われたのが、福岡県警の警察官をかたる「佐藤」という男だった。「『これから福岡に事情聴取に来て下さい』と言われたので『それはちょっと無理です』ってお伝えしたら『上の方と相談してみますから、ちょっとお待ち下さい』って(言われて)。『ちょっと場所、変えますから、ちょっと準備しますから』と言われて、また少し待たされて…」とA子さんは「福岡県警・佐藤」なる人物とのやり取りを振り返った。そして…。

「ちょっと(時間が)経ったら『LINEでお友だちになりましょう』って言われて『オンライン事情聴取をします』って言われました」と話すA子さん。何とLINEで“お友だち”になり、突然“オンライン事業聴取”が始まったのだ。

「福岡県警・佐藤」のLINEのトップ画面には「佐藤(福岡県警)」と表示されている。そしてA子さんはLINEのビデオ通話で福岡県警の「佐藤」と対面した。その時、捉えられたのが制服姿の画像だったのだ。

「警察庁という垂れ幕が画鋲みたいなもので壁に張ってあったので、ちょっと不自然な感じはしました。向こうは、自分の警察手帳を出して、普通に”近所のお巡りさん”という感じの雰囲気で話していました」。A子さんは「福岡県警・佐藤」との対面は不自然な状況だったと記憶しているという。

「福岡県警・佐藤」は“オンライン事情聴取”と称してA子さんに家族構成などを聞くと突然、最後に「これで確認が取れました。無関係証明書を3部発行します。福岡県警、ソフトバンク、そしてあなたに郵送します。3~4ヶ月間、保管しておいて下さい」と言ってビデオ通話を終えたという。
全国さまざまな県警を名乗り犯行か
「(無関係証明書は)送られてないです。実際、地元の警察に話したら『詐欺です』って言われて…。怖いですよね…」と一連のやりとりを話すA子さん。結局、無関係証明書は送られていないという。警察庁のロゴや横断幕をバックに福岡県警の捜査員をかたった詐欺犯。実は或る事案と酷似していた。

警察庁が公開した2024年6月発生の警察官をかたった詐欺犯とのビデオ通話の画面には、関東在住のA子さんと接触した「福岡県警・佐藤」と似た点が複数ある。服装も背景も同じなのだ。机の上に置かれたファイルまで同じだった。

高知県警と福岡県警をかたった詐欺。福岡県警の捜査関係者によると「詐欺グループが警察署を表現した同じセットを使い回しながら、さまざまな県警を名乗って犯行を繰り返している可能性もある」という。

2024年1年間で約23億円の被害を出したニセ電話詐欺。警察は「オンラインで警察が取り調べをすることも、ましてやお金を請求することもない。お金の話が出たら詐欺を疑ってほしい」とあらためて注意を呼びかけている。
(テレビ西日本)