2月15日に1日限定で金沢市内にオープンした「注文に時間がかかるカフェ」。スタッフの学生には全員にある共通点がある。一体どういうカフェなのか、取材した。
スタッフは全員"吃音者”
金沢市の人気観光地・ひがし茶屋街。
築120年以上の町家で1日限りでオープンしたのが「注文に時間がかかるカフェ」だ。

スタッフ:「注文に時間がかかるカフェのスタッフは全員吃音者です。言葉がうまく出ませんが他の人と同じように接してもらえると嬉しいです」
「吃音」とは話す内容が頭に浮かんでいても言葉が滑らかにでてこない「発話障害」の1つ。国内には人口の1パーセント、約120万人いるとされている。
このカフェを全国で展開している奥村安莉沙さんは「私自身が吃音があって、でも人と話すのが好きで吃音があっても安心して接客に挑戦できるカフェをやりたいと思って始めました。今日参加する学生たちには接客の夢に挑戦することで自信を持ってほしいなと思っています」と話す。
一人の高校生が接客に挑戦

スタッフの1人、高校3年生の北川白朋さん。飲食店での接客は未経験だそうだ。吃音でこんな経験をしたことも…
北川さん:
これは小学5年生のときなんですけど、これで国語の授業を終わりますみたいなことを言うんですけど、それが全く出てこなくてクラスのみんなが笑ってて先生も笑ってて、そんなときは味方もいない頼る人もいないという感じで泣いちゃいました。
経験を自信に

北川さんはこのカフェのスタッフとして応募した理由について「今年から製造業に就職するんですけど、この注文に時間がかかるカフェで自信をつけて色んなことにも挑戦できるようにやろうかなって」と話す。
スタッフが着るエプロンにはシールが貼られていた。お客さんとのコミュニケーションのために
自分のして欲しいことや言って欲しいことを書いたものだ。

北川さん:
最後まで話を聞いてくれたら嬉しいなという感じで。
同じ悩みを抱える客と
いよいよ開店の時間を迎えた。
北川さん:
こんにちは。受付表にチェックをお願いします。注文に時間がかかるカフェのスタッフは全員吃音者です。
北川さんが受付をしている間に、別のスタッフが飲み物を配る。

来店した男性に話しかけた北川さん。
北川さん:
きょうはどちらからいらっしゃったんですか?
客の男性:
小松市から。
北川さん:
なんで来られたんですか。
客の男性:
僕も10代後半ぐらいから急にでるようになって。
この男性も同じ悩みを抱えていた。
北川さん:
いや本当にありがとうございます。
客の男性:
いやこちらこそ、話ができてうれしいです。
北川さん:
僕も嬉しいですよ、こういう話初めてしたから。
北川さんが次に話しかけたのは中学1年生。

北川さん:
吃音の人と会ったことがあるんですか。
客の女性:
吃音だよって言われたわけじゃないけど、そうなのかなって思ってる子が同級生に一人いて。
北川さん:
からかわれるんじゃないかなと思って、あまり吃音のことを周りに話していなかったんだけど、友達から『君、吃音?』て言われて『そうだよ』みたいな感じになって。吃音?て聞かれた方が俺的には嬉しくて、ちょっと楽になったんよ。ちょっとと言うかめっちゃ楽になって。そこからもう友達と話すようになってきて。
北川さんと話した中学1年生の客は「知ってるつもりだったこととか、考えてたことも答え合わせができた感じがして、もっと当事者の人たちと関われる機会が増えたらいいなと思いました」と話してくれた。

注文に時間がかかるカフェ。それは、スタッフが最後まで言い終わるのを待ってあげるため。
接客をしてみた北川さんは「今回は初対面の人と話すので、あらためて人と話すのが好きなんだなと思いましたね。本当に楽しかったです」と話した。
最後にこの経験がどんなものになったか尋ねると…
北川さん:
自分にとってどんなもの?宝物です。
(石川テレビ)