江藤農水相が14日、備蓄米21万トン放出の詳細を発表した。
お米が主役の店では、この発表に対して厳しい意見や不安が聞かれた。
また、卸売業者とJAにそれぞれ取材し話を聞いた。
「仕入れ値は昨年の倍」と土鍋ご飯を提供する店長
土鍋で炊き上げられたツヤツヤのご飯。

炊き上がったご飯はおひつで提供され、おかわりは自由とあって大人気のご飯が主役の「土鍋ご飯いくしか」中目黒店。

しかし、米の値段は高止まり。
店長の加藤雄大さんは、「1日あたりお米を35kgぐらい使うんですけど、お米の仕入れ値でいうと、昨年と比べて倍の値段になってますね」と話す。
2024年10月に、一部のメニューで100円値上げしたが、なんとかそこで耐えて頑張っているという。
江藤農水相が備蓄米放出の詳細を発表
そんな米の値下がりの切り札になるのだろうか。
江藤農水相は14日、備蓄米の放出量などについて詳細を発表した。

江藤農水相:
販売数量は21万トンとします。これは流通が滞っている、スタックしているこの状況をなんとしても改善したいという強い決意の数字だというふうに受け止めていただきたいと思っております。
流通の円滑化を目的とした放出は初めてとなる。
しかし、「土鍋ご飯いくしか」中目黒店の加藤雄大店長からは厳しい意見が…。

「土鍋ご飯いくしか」中目黒店・加藤雄大店長:
直近で言うと、おそらく(米の)価格は下がるかなと思うのでうれしい反面、2月の時点で備蓄米を開放するとなると、次の新米が出るまでのストックがもうなくなるので、その先で値段が上がるんじゃないかということが心配されますね。

また、東京都内のおむすび専門店「おにぎり戸越屋」渋谷道玄坂店を訪ねると、カウンターに座っているお客さんは、皆さん外国人の方だった。

日本人の主食・お米を握ったおにぎりは、外国人観光客にも大人気だ。
フィンランドからの観光客:
好きです。こっちはスパイシー。

韓国からの観光客:
韓国から来ました。味本当においしいです。きのうコンビニで似ているものを食べたんですけど、それよりもっとおいしくて温かくて、すごく満足です。

具がたっぷり入ったフワフワのおにぎり。
味の決め手は、やっぱりお米だ。

おにぎり戸越屋・木本英二管理部長は、「2年前から比べると、約3割5分から4割上がっているという状況ではあります」と語った。
そんな中、詳細が発表された備蓄米の放出。
しかし、期待だけではないもよう。

おにぎり戸越屋・木本英二管理部長:
個人的な意見は、市場に出てくることによって、今うちが使っているブランド米も何らかの影響を受けてほしいなと。それは価格が下がってくれればとは思いますけど、そんなにすぐには反映しないだろうなというのも思いますので。
江藤農水相「ほかに手がない」繰り返す
本当に備蓄米の放出で、価格は下がるだろうか。

江藤農水相:
ほかに手がないし、ほかに手がない。そして、あまりにも高いですよ。このカードよりほかに手がないということなので、私が責任を取るという覚悟のもとにですね、カードを切ったということになります。

並々ならぬ決意だと強調した江藤農水相。
今回放出される備蓄米は、21万トン。
その根拠は…。

2024年の米の生産量は、前年より18万トン増えていたが、年末に集荷業者が集めた量は前の年より21万トンも減っていたのだ。
この消えた21万トンが、価格高騰の背景にあるとみられている。
消えた“21万トンの米”はどこに…卸売業者を直撃
そもそも消えた米は、どこにあるのか。
その行方を探し、取材班が向かったのは、兵庫県にある中小の卸売業者。
今回匿名を条件に、取材に応じた。

この卸売業者は、農家から直接米を買い、飲食店や個人などに販売しているという。
政府が把握する、主な集荷業者には該当していない。

倉庫に高く積まれた袋が。
約600トンの米だ。
兵庫県にある中小の卸売業者:
ほぼ全部(令和)6年産です。去年の秋にとれたやつ。その奥に5年産がちょっとあるぐらい。

ーー去年のこの時期と比べて、お米の量はどうですか?
兵庫県にある中小の卸売業者:
入荷した量は、今年のが1.5倍ぐらいは多いんですけど…。
今回は、例年よりも多くの米を買い集めたというが、その理由は…。

兵庫県にある中小の卸売業者:
自分らもお米ないと商売にならないからね。余ったら余ったで、それも別に米だから絶対売れるからね。だから買えるときに買わんと。
卸売業者が“売り渋り”をしていると指摘されていることについては…。

兵庫県にある中小の卸売業者:
ある程度ストックしている業者と農家があると。去年みたいになったらあかんから、ある程度多めに保管している。やっぱり一気に出すということはたぶんしないと思います。
取引先の都合もあり、高いときに売るということなく、備蓄米が放出されても、“消えた米”をすぐには売りに出さないという。
一方、米の卸売業者は、米の価格高騰の背景には、JAが中小の卸売業者に買い負けているのが原因と主張する。

兵庫県にある中小の卸売業者:
(JAが提示した)値段が安かったんです。それとJA離れというのもあるし。
そこで14日、JAを取材した。
備蓄米の放出について尋ねると…。

JA京都 営農部・田中義隆部長:
お米が全国的に不足しているという認識は私どもにはありません。備蓄米を買うことはないです。JAは買いません。
米は足りているため、備蓄米を買う予定はないと話した。
備蓄米21万トン放出で本当に安くなる?いつから店頭に?
青井実キャスター:
21万トンの備蓄米放出で、米の価格は安くなり、価格は安定するのかどうなのか。

まず今後のスケジュールは、3月の中旬ごろ卸売業者に行き、3月の下旬に店頭に並ぶということです。
遠藤玲子キャスター:
早ければ、私たちの手元に1カ月後くらいになるということですね。
青井実キャスター:
そういうことになります。初回に放出されるのが15万トンということなんですが、重要なのは消費者が買うときに今より安く買えるようになるのかどうかということですね。

木村拓也キャスター:
関係者の間でも、実はさまざまな見方が分かれていて、正直読めない状況だということです。
フジテレビ・智田裕一解説副委員長によると、大きく2つのパターンがあり、安くなるパターンというのはもちろん考えられる、卸売業者の間では、この21万トンという備蓄米放出の数字のインパクトが非常にあるということで、市場に出てくれば価格は下がるであろうという見方もあれば、もう1つ、やはり高値で仕入れた在庫があるので、すぐには元に戻らないであろう、つまり変わらないであろうというような見方も存在します。
中長期的に見ると、やはり需要と供給のバランス、市場の流れによるということなので、なかなか難しいと思われます。
青井キャスター:
量を調整するために出したというわけだから、やはり安くなってほしいですよね。
遠藤キャスター:
そうじゃないと今回何のために放出するんだということにもなります。
青井キャスター:
でも柳澤さん、難しいですね、このあたり。

スペシャルキャスター・柳澤秀夫さん:
農水省が今回放出するよというのは、今お米を抱えている人たちにとってみると、このあと市場に出てくれば値段が下がるということになりますから、今出した方がいいかもしれないというので、心理的なプレッシャーはかなりあると思うんですよ。実際になるかどうかは、向こう1週間くらい、お米の値段がどうなるか、われわれ消費者も注意深く見ていく必要があると思います。
遠藤キャスター:
あと気になるのが、実際にこの備蓄米が店頭に並んだときに「備蓄米」と分かるように表示されて売られるのかどうか。

木村キャスター:
例えば、備蓄米シールが貼られてたりとか、裏に備蓄米と書いていたりするのかというのが考えられますが、実際は、そうした表示はない、一般的に売られているお米と見た目は一切変わらないということです。
理由としては、品質自体に差がそれほどないということで、わざわざそのようにに名前をつけて販売することはないということです。なので、3月下旬ごろに市場に流通した時に年数を見てもらって、少し昔、一昨年とかだったら、備蓄米なのかもというのが分かるかもしれません。
青井キャスター:
備蓄米は5年保管と言いますけど、これどういうお米が並ぶんですか?

木村キャスター:
先ほど数字が出てきましたね。
15万トンをまず、1回目でボーンと出しますと。2024年の米が10万トン、2023年の米が5万トンという内訳になっているということで、比較的新しい米から放出されていくということになります。
青井キャスター:
この“作戦”で、価格が下がるのか売り渋るということがないのか、そのあたりがポイントですよね。

木村キャスター:
今回の放出では、チェック体制を設けて、売り渡し先に、隔週で数量とか金額とか販売状況を農水省に報告するということが義務づけられていて、しっかりと管理をするということです。
青井キャスター:
今回農水省は、やっぱりやらなきゃということでやったわけで、でもこれで下がらなかったらどうするのか?

木村キャスター:
農水省としては今後に関して、備蓄米をまず1回目15万トン放出して、そのあと21万トンまで放出したとして、それでも円滑な流通に効果がなかった場合は、それを超えても放出するということを言っています。価格が変化しなかったら、さらなることもあるということを言及していると思われます。
青井キャスター:
柳澤さん、備蓄米は3月下旬に店頭を並ぶという話ですけれども、米の流通に関して根本的な改革も必要になってくるわけですね。

スペシャルキャスター・柳澤秀夫さん:
今回起きたようなことが、一段落したとして、また起きないとは限らないじゃないですか。長期的にどういうふうにお米を管理していくのか、市場に出てくる値段をうまくコントロールできるのかどうか。これはあまり政府が介入すると、また逆行してしまうということになるし、今後、今回お米ですけど、お米以外のものにこんなことが起きてしまったらまずいわけですからね。ちょっと冷静に見ていく必要もありますよね。
(「イット!」2月14日放送より)