瀬戸内の波を駆り、世界へと夢を広げる15歳のセーラーがいる。愛媛県勢として初の快挙となる全国中学選手権制覇を成し遂げた松岡忠尚選手。その瞳は、すでに世界の海原へと向けられている。
風と一体になり、海を読み解くヨットの才能
愛媛大学教育学部附属中学2年の松岡忠尚選手は、とらえた風を推進力にその速さを競う「セーリング」で一番小さいクラスのオプティミスト級で日本代表にも選ばれた。国内トップレベルの実力を誇る期待の中学生セーラーだ。

松岡忠尚選手:
世界で一番幸せなんじゃないか、空を飛んでるんじゃないかみたいな気分で乗っています。かけがえのない存在だと思います。

オプティミスト級は15歳までの選手が乗ることができるクラスで小さな子どもでも安全に乗れるように設計された、全長2.31m、全幅1.13mの小さなヨットでレースを戦う。

自然が相手のこの競技では、コンディションに合わせた船のセッティングが欠かせない。風や波、潮の流れなど刻一刻と変化する状況に対応できる観察力と高度なテクニックが求められる。

松岡選手は「スタート前に船の上に立ち、どこに風があるのか、奥にあるそのまた奥にある、どんどん奥の風を見ていって、どういう感じで船を進ませていくか考えています」と風を読む姿からは、若きセーラーの冷静な判断力が垣間見える。
父から受け継いだセーリングの道
松山市の堀江海岸を拠点に、毎週末ヨットに乗る松岡選手。その原点は、父・正幸さんの存在だった。
松岡忠尚選手:
お父さんが大学でヨットをやっていて、お父さんに「やってみないか」と言われて幼稚園の年長から始めました。

父の正幸さんは「初めからセンスがあったとかではないですけど、色々失敗を重ねてきてうまくなったんだと思います。今となってはこれはこういうパターンだというので、広い視野で海面を見られてる」と、息子の成長を温かく見守る。

親子で培った経験は、2024年、大きな実を結ぶこととなった。2月の選考レースで日本代表の座を勝ち取ると、7月に香川県で行われた全国中学選手権で優勝。中学日本一は愛媛県勢初の快挙となった。
強靭なメンタルが導く、世界への挑戦
松岡選手の強さの源は、その精神力にある。

松岡忠尚選手:
自分の武器はやっぱりメンタルだと思います。1回レースが悪くなったら気分が悪くなるというか落ちるというか、そういうこともあったんですが、どんどん切り替えていかないと次につながらないと思ったので、そういうところを意識してやってます。

今後の目標を聞くと、松岡選手は「パッと海を見ただけで小さい子にも簡単に教えられるような選手になりたい。パリ五輪のヨットで日本が銀メダルを獲ったんですけど、やっぱりその上をいける金メダルを獲ってみたい」と夢を語った。
瀬戸内から世界の海原へ。風を友とし、波に乗り、広がる可能性は無限大だ。愛媛が誇る若きセーラーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
(テレビ愛媛)