唯一残る統制価格が銭湯の料金
銭湯の料金は、実は物価統制令という名の勅令によって上限が定められています。
我が国は昭和20年、太平洋戦争敗戦の憂き目に遭い、終戦後の混乱期には、物価の高騰に見舞われることとなりました。家財や衣服を食料と交換するシーンは多くの映画や小説で見られるとおりです。
そうした国民の窮乏を避け、不当な取引を取り締まるため、昭和21年に施行されたのがモノ・サービスの対価の額を取り締まる物価統制令だったというわけです。

当初は、生活必需品の多くに価格統制が行われていましたが、日本の経済復興による国民生活の改善に合わせるように統制は緩められ、現在ではこの価格統制は公衆浴場に関するものを残すのみとなったのです。
既に戦後79年を経過したにもかかわらず、公衆浴場の利用料金についてだけ価格統制令の統制が生き残っているというのは、モノに溢れた現代のぬるま湯に浸かりきった令和民には何かしら奇妙な気持ちがしてしまいます。
この公衆浴場の利用料金は地方行政機関の長が定めるものとされており、都道府県によって統制価格は異なっています。
事業主からすると厳しい面も
私が死ぬまで住む予定の兵庫県では、現在の統制価格は大人490円、中人180円、小人80円です。統制価格はあくまで上限額ですから、それぞれの公衆浴場の事業者が自主的な判断でさらにディスカウントすることは問題ありません。
私の行きつけの銭湯のように学生や高齢者が多い町の銭湯には、統制価格よりもさらに安く金額設定しているところも少なくないようです。
もちろん、事業として見た場合、対価の上限額が法令で固定されている点は事業主にとってはなかなかに厳しい面があります。
銭湯では利用客のキャパシティも限られますから、単価が抑えられているからといって、利用者を3倍、4倍と増やして売上高を上げるという方法もとれません。