日常生活のなかにあふれる、さまざまな法律。

その法律は決して万能ではなく、抱いた疑問を見ていくと納得する点や「やっぱりおかしい!」と思う法律もある。

そうした日常に潜む「ふしぎな法律」をゆるいイラストと合わせて、わかりやすく解説する、中村さんの著書『世にもふしぎな法律図鑑』(日本経済新聞出版)。

今回は「大ケガの『賠償金』。さすがに税務署も見逃して?」から一部抜粋・再編集して紹介する。

「課税されない」というルールはある

【所得税法】
(非課税所得)
第9条1項 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
(中略)
十八 (略)損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

あなたが帰宅途中、後ろから走ってきた車に跳ね飛ばされる交通事故に遭ったとしましょう。

しばらく会社を休み、1か月間通院したのちに、無事ケガも治ったので加害者と示談をしたとします。

交通事故に遭ってもらった賠償金は…(画像:イメージ)
交通事故に遭ってもらった賠償金は…(画像:イメージ)
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このときあなたに支払われる示談金には治療費や休業損害、慰謝料などのほか、事故で壊れたスマートフォンの賠償金なども含まれ、加害者から総額で50万円が支払われたとします。

このあなたが受け取った示談金は課税されるのでしょうか。

事故で散々な目に遭った上、加害者から支払われたなけなしの賠償金にも税金が課せられるなどまさに弱り目に祟り目ですが、税務署ならそれくらいのことは平気でしてきそうなイメージもあるのでやっかいです。

3種類ある非課税所得

結論から言うと、この場合には課税はされません。

我が国の所得税法は、ざっくり言うと「人が収入の形で新たに得た経済的利得を全て所得と考える」という非常に広く柔軟な考え方を採用しているので、事故で得た示談金も「所得」として課税されそうなものです。