負担額の引き上げが予定されている高額療養費制度。負担額が増える中、患者などからは治療を続けられないなど悲痛な声が上がっている。がん経験者は経済的な不安を抱えて過ごした日々について吐露した。

“高額療養費制度”負担額引き上げへ

石破首相:
高額療養費制度については、高齢化や高額薬剤の急速な普及などによりまして、高額療養制度の総額が年々増加する中で、セーフティーネットとしての役割を維持しつつ、低所得者の方々の経済負担にも十分配慮しながら、保険料負担の抑制にもつなげるため、見直しを行うこととしている。

石破首相
石破首相
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通常国会で注目されている高額療養費制度の負担額の引き上げ。

高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が高額になった場合に上限額の超過分が払い戻されるという制度で、70歳以上の人では約3人に1人が利用している。

仮に年収650万円で70歳未満の場合、医療費が100万円かかったとすると、保険の負担と高額療養費の払い戻しなどを引くと、自己負担額は8万7000円ほど。

この自己負担額が、2025年8月から段階的に引き上げられることになっている。

年収が650万円の人では、1カ月の負担額の上限が現状は8万100円程度だが、年収の区分が細分化される2027年8月以降は、13万8000円程度となり、自己負担は5万8000円ほど増えることになる。

厚労省は2025年8月から段階的に引き上げ、2027年には年収約650万円~770万円の層で5万8000円ほど増える見込みだ。

幼い子ども抱え闘病生活…「経済的な不安大きかった」

自己負担の増加について、悲痛な声が上がっているのは、がん患者やがんを経験した人だ。

がんを経験した南雲良子さん
がんを経験した南雲良子さん

新潟市西区でカイロプラクティックの店を営む南雲良子さんは2013年に乳がんが見つかり、手術などを行うも、その翌年に再発。

2024年8月に経過観察が終わったが、その過程で高額療養費制度を活用したという。

「やっぱり戻ってくると良かったなと思った。自分の治療で心も体も弱っているときに、さらに経済的負担というのは、大きかったのではないかと思う。なので、そこを負担していただけるのは大変ありがたいと思う」

乳がんが見つかった当時、南雲さんの息子は6歳と2歳だった。

手術の直前に「最後になるかもしれないね」と言いながら行った旅行の写真を見せながら、当時の思いについて語る南雲さん。

手術直前に家族で旅行へ
手術直前に家族で旅行へ

幼い子ども抱えながらの闘病生活は、経済的な不安が大きかったという。

「自分が生きようと思ったのは、子どもたちのためだった。その子どもたちは、これからお金がどうしてもかかってきてしまう。そんなときに自分の治療費のために子どもが何か断念しなくてはいけないとか、そこが出てくるのがすごく怖くて…」

「治療断念する人増えるのでは…」患者からも悲痛な声

こうした思いを経験したからこそ、負担額の引き上げは患者に難しい判断を迫る引き金になりかねないと南雲さんは危惧している。

「治療を続けたいが、断念しなければいけないときがくる人が増えるのではないかなと思う」

がん患者などでつくる全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は「がんやその他の病気になったり、長期にわたって療養が必要になった場合のセーフティーネットが失われてしまうという意味で、現役世代にとっては厳しい政策になってしまうのではないかと危惧している」と話す。

全国がん患者団体連合会 天野慎介 理事長
全国がん患者団体連合会 天野慎介 理事長

さらに緊急で行ったアンケートには、患者からの悲痛な声が上がっているという。

「『もう治療は継続できない』『治療をやめるしかない』あるいは『離婚を考えざるを得ない』とか『生活保護にならなければいけないかもしれない』というコメントもあった」

現役世代の保険料の負担を減らすことが狙いとする政府だが、患者団体などから撤回を求める声が上がっていることを受け、長期の治療が必要ながん患者などの対応については検討する方針を示している。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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