アメリカの投資ファンド、ダルトン・インベストメンツはフジテレビの親会社、フジ・メディア・ホールディングスに3度目の書簡を送り、日枝久取締役相談役の辞任を求めた。
日枝氏を“独裁者”と表現して厳しく批判し、さらに取締役会のメンバーの過半数を独立した社外取締役が占めるよう見直すことも要求した。
ダルトンの求めについて、3人の専門家の意見を交えて詳しく見ていく。
3度目の書簡…日枝取締役相談役の辞任を要求
フジテレビで、長きにわたり影響力を持つ日枝久取締役相談役(87)。
アメリカの投資ファンドから、取締役の辞任を求められたことが分かった。

「日枝久氏は、去らなければなりません」
こう述べられていたのは、フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングスの大株主である、アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、3日付けで「フジ・メディア・ホールディングス」に送ったことを明らかにした3度目の書簡だ。

その中で、「フジテレビの港社長や嘉納会長の辞任だけでは、スポンサーは戻ってこない」、信頼回復のためには、取締役相談役を務める日枝氏が辞任しなければならないと主張した。

アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の書簡:
日枝久氏は、フジ・メディア・ホールディングスおよびフジテレビの取締役会を絶対的に支配しており、影響力を保持しています。今回のスキャンダルで、フジ・メディア・ホールディングスおよびフジテレビのガバナンス(管理体制)が全く機能していないことが、公に明らかとなりました。

“時の総理”とも親交を深めるなど、政界とのパイプも持つ日枝氏。長年にわたり、フジテレビの経営に携わってきた。
ダルトンは、その日枝氏を“独裁者”と表現して厳しく批判した。

アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の書簡:
何故たった1人の独裁者が、この巨大な放送グループを40年近くも支配することが許されて来たのでしょうか。信じ難いことです!

さらに、社外取締役の責任については「日枝久氏および日枝久氏が指名してきた、その他の取締役の辞任を要求し、経営体制を刷新しない場合には、フジ・メディア・ホールディングスの株主価値の毀損について、社外取締役も責任を負うことになります」と述べた。

また、取締役会のメンバーの過半数を、独立した社外取締役が占めるよう見直すことも要求。
そして、書簡の最後には次のようなことが書かれていた。

アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の書簡:
経営陣が何もしないことは、経営陣が絶望的に閉鎖的なことを意味しています。果たしてフジ・メディア・ホールディングスは、フジテレビのベストオーナーなのか、とも考えざるを得なくなるかもしれません。
「ダルトンから書簡」に清水社長らは…?
ダルトンの書簡について4日朝、フジテレビの清水社長は「各投資家との対話の内容は、基本的に開示しておりません」「日枝氏も取締役の一員です」と話した。

清水社長は、日枝氏を含めた各役員の進退について、3月末の第三者委員会の調査結果を受けて検討する考えを改めて示した。

一方、フジ・メディア・ホールディングスが経営刷新に向け設置した委員会のメンバーを務める斎藤清人社外取締役は、「少なくとも今日の時点で、何か(ダルトン側と)歩調を合わせるとかは想定していない」と述べた。
ダルトンの書簡について、企業の危機管理に詳しい専門家に話を聞いた。

元東京地検特捜部検事 中村信雄弁護士:
会社のガバナンス(管理体制)の根本的な改善を求めている。分かりやすく言えば、「損害賠償請求をしますよ」と、スポンサー離れ等について、そういうこともにわせながら、かなり強い改革を望んでいる印象を受けました。
「ダルトンからの書簡」なぜこのタイミングで?
では、今回のダルトンからの書簡を詳しく見ていく。

まずダルトンは、第三者委員会の設置やフルオープンで行われた2度目の会見に感謝していることを伝えた。そして、社外取締役のみで構成された「経営刷新に向けた委員会」設置を心から歓迎するというように伝えた。

その上で、“3つの要請”というのをこの書簡の中で行っている。
(1)日枝久取締役相談役(87)の辞任。
(2)取締役会の過半数を独立社外取締役にすること。
(3)従業員、株主、スポンサー、視聴者の“4つの声”を聞くこと。
これらについて、企業の危機管理や経営に詳しい元東京地検特捜部検事の中村信雄弁護士、桜美林大学の西山守准教授、そして経営コンサルタントの小宮一慶氏の3人の専門家の方に伺った。

そもそも「なぜこのタイミングでの書簡になったか」というところを、経営コンサルタントの小宮氏に伺うと「第三者委員会の設置や社長らの辞任を評価するも、不十分だったということ。そして、第三者委員会の結論が出る出ないにかかわらず『早急に現状を打破してほしい』ということの表れである」と答えた。
“3つの要請”それぞれ専門家の見解
では、“3つの要請”内容について、それぞれ見ていく。

まず一つ目の「日枝久取締役相談役(87)の辞任要求」について、元東京地検特捜部検事の中村弁護士によると「会社のガバナンス(管理体制)の根本的改善を求めているのではないか」という指摘だった。
そして、危機管理に詳しい西山准教授は次のように話している。

桜美林大学 西山守準教授:
「独裁者」というような言い方をしている。これはちょっと驚きの内容でした。この文章自体が、信頼回復に向けたガバナンス改革実施のお願いというふうには書いてあるんですが、書かれていることは、日枝氏の退陣および日枝氏が築いてきた経営陣を刷新しなさいというメッセージなんですよ。

そして、経営コンサルタントの小宮氏は「ガバナンス(管理体制)の欠如の原因が、日枝氏だと判断したのではないか」と指摘した。
では、二つ目の「取締役会の過半数を独立社外取締役にすべき」というダルトン側からの要請に関して。現在、フジ・メディア・ホールディングスの取締役は、17人から2人辞めて15人となっていて、そのうち7人が社外取締役で過半数ではない。

このことについて、小宮さんによると「過半数であるということは、アメリカでは多いが、日本では一般的ではない。ただ、日本でも過半数にする動きも出つつある」ということだった。

そして、この二つ目の要請について3人の意見聞くと、まず中村弁護士は「なれ合いによる会社運営ではなく、経営のプロ、社外の人間が業務をすることによって、ガバナンスの効いた経営体質につながる」と述べた。
西山氏は「もはや、企業内部からの自発的な改革は困難ではないかという意識の表れではないか」と指摘した。
そして、小宮氏は「社外取締役が過半数になると、株主の常識的意見が通りやすくなる」と指摘した。
今回のダルトンの書簡を受けて、フジテレビ側はこの後どう対応すべきか、その点についても伺った。

まず中村弁護士は「場合によっては、個人では支払いきれないような損害賠償請求を起こすことを匂わせる“警告のような書簡”である」という。そして、「第三者委員会の報告を待つだけでなく、真剣に検討すべきだ」と指摘した。
そして、西山氏は「しっかり応えなければ、株主総会で解任動議が出されるだろう。そして、企業の所有者は経営者ではなく、株主である。いずれにしても、株主の要求には応える必要がある」と話した。
最後に経営コンサルタントの小宮氏は「真摯に受け止めて、要求を飲むべき。そうしないと、ダルトンも他の株主も納得はしないだろう」といった指摘をした。
(「イット!」2月4日放送より)