羨ましいと思った人も多いのではないでしょうか。「初任給30万円超え」。 今、大幅に初任給を引き上げる企業がぞくぞくと出てきている。
「10万円アップ」を打ち出した会社を取材すると意外な事実も見えてきた。
■【動画で見る】「初任給10万アップ」「最大41万」初任給上げる企業続々
■「初任給」あなたは何に使いましたか?
社会に出て初めてもらう「初任給」。皆さん、どんな思い出があるのだろうか?

街の人:兄弟4人で、おじいちゃん、おばあちゃんと大家族で育ったので、何かものを送りました。
街の人:初めてお給料もらって高いデニムを買いました。
街の人:俺らの時なんて15万だよ、初任給。うちあんまり裕福じゃなかったから、お袋と親父にやったかな、全部、全額。俺のイメージは初任給は親にやらなくちゃいけないかなっていう、昔の人間だからね。
(Q.隣にいる方は何に使いましたか?)
街の人:(親にあげたのは)一緒です。昔の人間なので。
街の人:うそつけ。
街の人:…自分で飲みに行きましたね。
■「初任給」ここ30年は20万円前後で頭打ち
およそ50年前は給料袋で支給されていた時代。大卒の初任給は約9万円だった。
そこから右肩上がりになるが、ここ30年は20万円前後で頭打ち状態。 最新データをみると、新入社員の給料は23万7300円となっている(※厚生労働省調べ 大卒男女6月給与平均)。

しかし、いま「初任給」の引き上げを発表する企業が続出している。
・「明治安田生命」2025年入社の新卒、現在の24万円から「27万円」に。
・「三井住友銀行」2026年入社から「30万円」。
・「東京海上日動」2026年入社から、なんと最大で「41万円」と大台に。
■初任給10万円アップ「大和ハウス」ベテラン社員もみんな満足
さらに先日、大阪に本社を置く「大和ハウス工業」も初任給「10万円アップ」を打ち出した。2025年入社から、大卒初任給はこれまで25万円だったものが、35万円になるということだ。

秦令欧奈アナウンサー:大和ハウス工業に来ています。他業種の会社訪問は初めてですが、『どうして10万円もアップできるのか』探ってきます。
まず、ベテラン社員たちはどう思っているのか探ってみた。

2002年入社、就職氷河期世代の濱崎さんに聞くと…。
Q.初任給10万円アップをどう思いますか?
濱崎真由子さん:いいな、多いなと思うんですけど、モチベーションアップにつながったらうれしくなりまよね。
Q.今まで以上に厳しく指導しようとかは思いませんか?
濱崎真由子さん:厳しく指導っていうんじゃなくて、モチベーションアップできる環境で、一緒に業務していく。

また、2007年入社の速水さんからはこんな事実が…。
速水茂さん:正直、初任給だけ上がる場合はそう思うかもしれないですが、全体的に(給料が)上がるので、私もうれしいのでそうは思わない。
「全体的にアップ」というが、実は大和ハウス工業では、「初任給10万円アップ」発表の前に、在籍社員の給料も平均10パーセントほど引き上げていたのだ。

こんなにも給料をアップする狙いについて、“偉い人”に聞いてみることに。人事担当の役員、石崎順子さんに教えてもらった。
Q.初任給大幅アップの理由は?
大和ハウス工業 石崎順子常務執行役員:世の中の平均、あるいは業界・競合と比べた時に、新卒の月例給がインパクトあるものになればいいなと思っています。
Q.人材獲得の競争って厳しい?
大和ハウス工業 石崎順子常務執行役員:どんどん厳しくなっていると思います。昔だと入ったら『その会社に一生います』みたいな人ばっかりだったけど、そうでもなくなっている。自分の会社にどれだけ魅力を作って、より優秀な方に力を発揮してもらえるか。そんなことが大事。
■簡単に給料アップできない企業は“ユニークな福利厚生”で対抗
一方、簡単に給料アップとはいかないのが中小企業。ユニークな福利厚生で対抗する会社がある。

正午ごろ、社長よりも遅く出社してきた女性スタッフがいた。
二日酔い休暇を使った社員:『二日酔い休暇制度』を使って、12時に出勤しました。配信活動していて、テンション上がって飲みすぎちゃって。もともとは9時出勤です。
こちらの会社には、なんと「二日酔い休暇」という福利厚生がある。
大阪市内にある、社員およそ60人のIT会社「トラストリング」。他にも、推しに何かあったとき休みがとれる「推しロス休暇」など、ユニークな制度を取り入れている。

トラストリング 島田大学社長:(初任給は)22.2万円で、みなし残業20時間含まれた状態。一応最低賃金でさせてもらっています。(初任給アップは)うちではようできないんで。
自由にやっているようだが、ここ3年の離職率はゼロで、業績も好調だ。
トラストリング 島田大学社長:中小企業の場合は社長との距離感が近いというのもあって、価値観合わせる方が、離職率も少なくて、楽しく働けると考えています。
オフィスにビールサーバーが置かれているなど、変わり種の福利厚生は社員たちからも好評だ。
二日酔い休暇を使った社員:2、3時間寝て、ちょっとすっきりして来れるので、効率は逆に上がっているのかなと感じています。

入社1年目の社員:こういう会社を探していた。“さぼれる”っていうのがあるから、(仕事を)頑張れる。
大幅な初任給の引き上げも魅力的だが、自分にあった会社を見つけることが大切だ。
■世代間格差にも配慮しながら初任給アップ
初任給が上がっている企業が多いということで、その一部をまとめた。

・「カプコン」は6万5千円アップで、初任給が30万円。
・ 「アシックス」「りそな銀行」「サントリーホールディングス」もこの先アップする予定があったり、すでにアップしている。
初任給のアップだけではなく、すでに働いている社員の皆さんの給与も引き上げる予定があったり、約50万円のボーナスを支給予定だとか、検討する方針と前向きな状況になっている。世代間の格差に対する配慮もうかがえる。
■新卒争奪戦「労働環境と賃金、両方そろえていかないと採用できない」
ジャーナリスト 浜田敬子さん:いま少子化なので、新卒の人の奪い合いなんです。ものすごい争奪戦で『新卒 金の卵』と言われているぐらい。ですので初任給を上げるだけじゃなくて、例えばリモートワークできますとか、1年目から副業もオッケーみたいな。採用面接で学生さんで『リモートワークできますよね』とか聞く人も多いんですよ。労働環境と賃金、両方そろえていかないと採用できない。

ジャーナリスト 浜田敬子さん:日本の賃金、どうしても年功序列なので、これまでやっぱり40代以上に手厚かったんです。いま若い人たちが少ないってこともあるし、離職率が高いんです。大体20代で4割が転職経験があるんです。だから辞めさせないために、若い人たちにより多くする。それでさらに2年目、3年目も上げないと、今度逆転現象が起きて、新入社員の方が高いことになってしまうので、20代~30代前半に手厚くなることはあります。
ジャーナリスト 浜田敬子さん:ただ中小企業は原材料費が高騰していて、人件費も上げないといけないとなると相当厳しい。上げないと人が来ないので、『人手不足倒産』ということなんです。大企業と中小の格差が、非常に厳しくなっていると思います。
中小企業で働く方は労働者の中で7割いると言われている。ここに賃上げが浸透していくかどうかが、今後のポイントになりそうだ。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年1月31日放送)