中国の旧正月「春節」。中国などではこの時期に休暇を取って海外旅行を楽しむ人も多い。上海、香港、台湾との国際線定期路線のある鹿児島県内でも空港やホテルで「春節」にあわせた来日客の姿が目立つ。観光はもとよりショッピングの傾向にも変化が見られるようだ。
鹿児島でも高まるインバウンド需要
2025年の春節は1月29日。前日の28日午後、鹿児島空港に着陸した中国・上海からの定期便は、春節の連休を利用した観光客でほぼ満席だった。鹿児島空港の国際線ターミナルは正月を祝う赤い装飾で彩られ、本場大島紬クイーンらが中国語で「歓迎(ホワンイン!=いらっしゃいませ)」と声をかけ、観光客を出迎えた。

「桜島に行く予定。もちろん食べ物も(楽しみ)」と話す人たち。中には「いろんな所に行きたいが天気予報がよろしくないのでスケジュールを心配しています」とも話す人もいて、情報収集にも抜かりはないようだ。

コロナの収束や円安などによるインバウンド需要の高まりを受け、鹿児島でも外国人観光客が増加している。県内での外国人宿泊者数は新型コロナ流行前の2019年が84万人と最も多かった。コロナ禍で大きく落ち込んだが、2023年には36万人まで回復した。2024年は鹿児島と海外を結ぶ国際定期航空路線が次々に復活し、前年をさらに上回ると見込まれる。

インバウンド需要の変化は消費傾向にも表れている。鹿児島市の老舗百貨店・山形屋によると、これまでインバウンドの売り上げが最高だったのはコロナ前の2018年度だったが、2024年度はすでに10カ月間で過去最高を更新しているという。背景には、インバウンドに人気の商品がコスメなどからブランドバッグなど、よりハイコストな商品に変わり、客単価が約3万円から約8万円に伸びたこともあるとみられる。
日本の正月を体験できるイベントも
鹿児島市を代表するホテルのひとつ、城山ホテル鹿児島でもスーツケースを持った海外からの観光客が目につく。1月28日は予定時間より少し早くチェックインの受け付けが始まっていた。ちなみに旧正月に合わせて連休をとるのは中国だけではない。韓国でも「ソルラル」と呼ばれ、海外旅行に出かける人が多くいる。

ホテルによると、旧正月の連休期間の外国人観光客は、2024年には宿泊客全体の2割から3割だったのが、2025年には4割から6割に増えているという。上海からの観光客は「温泉を楽しみに来た。指宿の砂むし温泉に5回入った」と話す。

ホテルでは旧正月に滞在する宿泊客をもてなそうと、日本のお正月を体験できるイベントを企画。宿泊客らはカラーのペンや折り紙で飾り付けたオリジナルの羽子板を作る体験や、浴衣の着付け体験などを楽しんでいた。

韓国から訪れ、花柄の浴衣を着た観光客は「思ったよりきれいで満足している。後ろ姿が一番気に入っている。」と笑顔。「芋焼酎の買い物を楽しみにしている」とさらに目を輝かせた。

城山ホテル鹿児島・井手智美宿泊営業部長は「日本のお正月を外国の皆さんにぜひ体験してもらうために企画した。鹿児島をたくさんの国の方に知ってもらいたいとの思いや、いろんな食べ物、文化、景色などを広めてもらう役に立てれば」と、その狙いを話す。

2025年の春節は鹿児島でも多くの外国人観光客でにぎわいそうだ。ちょっと天気が変わりやすく、寒波にも見舞われそうだが、そんな時だからこそ温泉につかり、黒豚しゃぶしゃぶや焼酎のお湯割りを楽しんで、体もおなかもあったか~くなってほしいものだ。
(鹿児島テレビ)