政治とカネをめぐる問題に端を発し、企業・団体献金の是非についての議論が活発になっている。「BSフジLIVE プライムニュース」では自民・小泉進次郎氏と立憲・落合貴之氏を迎え、中北浩爾教授とともに議論した。

世論の多数派は「禁止ではなく透明性を高める」だが…

椿原慶子キャスター:
石破総理の施政方針演説に対し質問に立った立憲民主党・野田佳彦代表は「企業団体献金は廃止の方向で結論を出すときだ」と述べ、石破総理は「禁止より公開との考え方に基づき、透明性を確保」と改めて従来の考えを述べた。また「予算案審議の前に旧安倍派会計責任者の参考人招致を」と野田氏が迫り、石破総理は「国会が判断する事柄ではあるが、国民生活に関わる予算案は円滑な審議を」と答えた。

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反町理キャスター:
予算審議の前に参考人招致を求めた。俗な言葉では「人質にとった」とならないか。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
以前の国会ならそうなるが、状況が変わった。予算委員会は野党が多数で、自民党が応じない場合は多数決で決めることもできる。従来のように審議拒否をする状況ではない。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
予算委員長は安住淳さんで運営は立憲の責任。インフレを上回る賃上げのサイクルを回すことが一番求められる今、約2年間議論している政治とカネの問題で予算審議を人質に取ることは理解されないと思う。

椿原慶子キャスター:
今国会の大きな焦点の一つが企業・団体献金。直近のFNN世論調査では、企業・団体献金について全体の7割近くが「禁止すべき」でなく「維持してもいいが透明性を高める」ことを求めている。

中北浩爾 中央大学教授:
今回の政治とカネの問題の原因はパーティー券収入の不記載であり、決して企業・団体献金ではない。今それが議論されていることへの納得感がないのでは。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
「禁止ではなく透明性」が一定の理解を得ることができた。野党が求める禁止は全く違うと思う。誰が得をするのか。自民も立憲も国民も維新も皆税金丸抱えの政党になる。国会議員は秘書3人までの人件費を国民の税金で賄えるが、よほどお金がある方以外はそれ以上雇えなくなる。結果、秘書が動けず国民との接点も減る。

政治の活動量は間違いなく低下する。企業・団体献金をやめれば国民の皆さんの手取りが上がるのか。この禁止論は絶対おかしい。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
本当に民主主義を進めていくならみんなで国を良くする政治資金の仕組みを作っていくことが必要であり、そのために企業・団体献金をやめて個人献金を拡大していく。企業や業界団体が政治をゆがめてきて、90年代に政治改革が言われた。5年後に企業献金をやめようと約束した。だが結局今ももらっている。これはやましい気持ちを持った政治家たちの時間稼ぎの成功。

反町理キャスター:
世論調査では、立憲支持者でも「禁止」が41.9%に対して「透明性を高める」が54.1%。全体では22.9%対67.9%。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
企業・団体献金の弊害が大きな問題としてもう一度取り上げられればまた変わる。世論調査は聞き方によってもばらつきがある。いろいろな意見があると思う。

中北浩爾 中央大学教授:
1994年の政治改革以降、企業・団体献金は当時の7分の1になった。対して政党交付金への依存は立憲民主党本部では4分の3。もう国営政党に向かっている。本来、政党は市民社会から出てきて国家機構にいろんなインプットをするべき。政党の発展として今の状況は健全ではない。政党が国家依存になればポピュリスト政党が生まれる。ゆがめると言うが、ゆがめて何が悪いのか。民主主義とはゆがめ合っているものなのではないか。自民は企業や財界の支援を受け、立憲は労働組合の支援を堂々と受ければいい。そのバランスの中で民主主義が成り立つ。それを否定したら一党独裁になる。

十分な透明性の確保は現実的にどう行われるのか

椿原慶子キャスター:
1月27日に自民党の総務部会と政治改革本部の合同会議で了承された企業・団体献金公開強化法案では、総務大臣が政党ごとに受けた献金の総額、年1000万円を超える寄付をした企業・団体名と金額を公表するとした。透明性はどの程度確保されるか。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
今は政党ごとに企業・団体からどれぐらい寄付・献金をいただいているかまとめて発表されない。メディアの皆さん等が収支報告書を一つずつチェックして報じられている。それを公表することで透明性を高める。

反町理キャスター:
「入り」の透明性を高めようという話。立憲も入りを止めるということ。だが「出」の透明性の担保は。

中北浩爾 中央大学教授:
両方必要。ただこの話でわからないのが、先の国会で政治資金規正法改正がされデータベースで検索できるようになったならば、今回の法案にどれだけの意味があるのか。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
データベースで検索が容易になるが、政党ごと・団体ごとに一つの塊としてどのように寄付をしているかが出てこない。そこをまとめて公開するということ。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
もっと範囲を広げればデータベースで公開できる。企業・団体献金を受け取れる政党の支部は入っていない。本部のみ。我々も法案を出したが自民の反対で否決された。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
ならば今野党が多数を持っているので、公開強化法案を野党側も出して一緒に考えればよかった。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
出します。支出の透明性も含めて。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
だが禁止案も公開強化の法案も出すのではおかしい。政党として考えをまとめ、前回の国会で禁止法案を出したんですよね。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
企業・団体献金は禁止。収支全体に関してはより公開。両方必要だということ。前の春の国会で国民民主と一緒に出したが、幅広く声をかけてもう一度作り直す。

企業・団体献金は本当に「政治を歪める」か

椿原慶子キャスター:
立憲民主党などが国会に提出している企業・団体献金を禁止する法案の内容は「政治団体を除く企業や団体による政党などへの献金、政治資金パーティー券の購入は禁止」「政治活動に関する個人の寄付の税額控除を拡充」など。

中北浩爾 中央大学教授:
今、政党支部で立憲の一部の議員は企業・団体献金を受け取っている。報道では野田代表がニトリホールディングスなどから356万円。これは「ゆがめられている」のか。もう一つ、今は労働組合を含めパーティー券を購入している。禁止するなら法案を出した段階ですぐにやめるのか。先日批判されて大変なことになったが。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
通るまでに先行してやることはしない。共同提出する他党からも意見が来ており、施行日に皆でやろうと。また、うちの党の代表も企業・団体献金は政策をゆがめていると言っている。

反町理キャスター:
自民党議員が企業・団体献金をもらうと政策が歪むが立憲の場合はゆがまない、と聞こえる。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
いや、与党と野党で責任とか権限が違うので。(立憲民主党が)与党になることがあるから、みんなでやめましょうということ。我々の政策がゆがんでいないかはわからない。そこまで発言していないから。ただ少なくとも、リクルート事件とか風力発電の件など立法事実がある。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
与党になることがあるではなく、今は予算が通るかどうかは野党の対応次第。基本は野党だというベースからの発想を前提に議論すべきではない。

反町理キャスター:
なぜ「政治団体を除く」のか。番組でうかがったとき、長妻昭さんは「白い政治団体と黒い政治団体がある」という理解できないご説明だった。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
政党内の政治団体間で移動ができなくなる。また無所属で出る人は政治団体を立ち上げるが他団体に資金を動かせなくなる。政党要件を満たさない新党はどうするのか。政治活動が制限されれば憲法が保障する政治活動の自由の侵害になる。抜け道の部分もあるかもしれないが、「政治団体を除く」を外すと本当に必要な道も埋めてしまうことになる。

中北浩爾 中央大学教授:
自発的に政治団体を作って活動し、その団体が献金するのは個人献金の束みたいなもの。立憲案はよいと思う。だがそもそも企業・団体献金を廃止する必要があるのかという話に戻る。

椿原慶子キャスター:
自民党が提出しようとしている企業・団体献金公開強化法案では「政治団体への加入に関する個人自由意志」への留意、「団体の寄付行為に関する加入者の意思」の尊重が規定される。

小泉進次郎 元環境相 自民党政治改革本部事務局長:
例えば労働組合関係政治団体が実際にパーティーをやり、パーティー券を購入しているのが労働組合本体であるとき、組合員の皆さんは毎月の会費がパーティー券の購入に使われているとは思わない。自発的な意思であることが尊重されるべきということ。

落合貴之 立憲民主党政治改革推進本部事務局長:
まだ本文を見ていないが、元々今の法律でも迂回献金は禁止されている。また我々の法案でも、自分の個人の意思でしか政治団体に加入するべきでないと明記している。妥当な着地をするのなら有り得る法案だと思う。
(「BSフジLIVEプライムニュース」1月27日放送)