4月に大阪市で開幕する「大阪・関西万博」に、秋田・横手市が北海道・東北の自治体として唯一出展する。展示するのは、冬の風物詩として知られる伝統の小正月行事の主役「かまくら」。万博参加決定までの歩みや本番への意気込みを関係者に聞いた。

横手市のかまくら 国内外から人気

20年ぶりに日本で開催される国際博覧会「大阪・関西万博」。

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大阪市の夢洲に数多くの国や地域、企業が集結し、約半年間にわたって最先端の技術や文化を発信する。

この万博に北海道・東北の自治体で唯一参加するのが横手市だ。全国の市町村がタッグを組み、地域の魅力を世界に届ける「ローカルジャパン展」に出展する。

横手市が万博への参加を目指すと表明したのは2022年。
高橋大市長は「横手自身、秋田県自身で盛り上げられるような類いのエネルギーではなく、(万博には)万倍、百倍、億倍のパワーがあるので、そこにあやかりたいという思いがあった」と話す。(※高橋大市長の「高」は「はしご高」)

以来毎年、大阪城や伊丹空港などで「かまくら」を展示したり、物産展を開いたりと積極的にPRしてきた。特にかまくらは、毎回5万人前後の観客を動員し、秋田から遠く離れた関西でも誘客力のあるコンテンツだと証明した。

高橋市長は、国の内外からイベントや市内を訪れる観光客の姿を目にし、雪の魅力を再認識したという。

横手市・高橋大市長:
昨シーズン台湾人観光客が横手市を訪れた。本当に雪がない状態で、除雪をして道路の両サイドに雪が残っている程度。その汚い雪の塊をスマホで撮影していた。それでいいんだと思った。住む世界が違えば、違った魅力として映ると感じた。

イベントなどでの実績が認められ、2024年4月に参加が正式に決定。横手市はローカルジャパン展で“水に感じる神性さ”をテーマに、「播磨の日本酒」で知られる兵庫・姫路市と共同でブースを出展することになった。

かまくら展示の鬼ハードミッション

1月中に具体的な展示内容を詳しく盛り込んだ計画書を提出しなければならないとあって、いま、市の担当者が話し合いを進めている。

横手市は、屋内に設けられた縦6メートル、横9メートルのブースに、高さ3メートルのかまくらを展示する予定だが、横手市観光おもてなし課の佐藤秀人さんは、この展示は“鬼ハードミッション”だという。

ローカルジャパン展での出展を成功させるには、国の内外で出前かまくらを展示してきた横手市の担当者に“鬼ハード”と言わしめるほど難しい条件を乗り越える必要があるのだ。

一つ目の鬼ハードミッションは「会場内で雪が作れない」

万博会場となる夢洲では、脱炭素を実現するため、人工の雪を作る機械を動かす発電機を使うことができない。そのため、かまくら作りに必要な約20トンの雪を、会場の外で作らなければならないのだ。横手市は会場から車で20分ほどの場所を確保し、そこで作った雪を保冷できる車で運ぶことにした。

二つ目の鬼ハードミッションは「排水をどうするか」

かまくらが解けて出た水を会場内に漏らさずに外に流す必要があるが、これまで大阪で展示してきた実績を生かす。その際、かまくらの底に空洞を作り、水をためて運用してきた。この方法を応用する。

そして、最大の鬼ハードミッションは「いかに解かさないようにするか」

ローカルジャパン展が開催されるのは7月下旬。暑さの厳しい大阪の夏に、いかにしてかまくらを解かさずに期間中維持するかが最大の難関だ。

横手市観光おもてなし課の佐藤秀人さんは「ドライアイスがいいと言うけれど、ドライアイスが解けてしまえば空洞になってしまう。4日間持たせるのはきついんじゃないかな」と首をかしげる。

名案出ず…しかし“オール横手”で対策を

結局この日の話し合いで名案は出なかったが、市の担当者は「行政だけではなく、民間企業などいろいろなところから意見をもらい、対策を練っていきたい」と話し、“オール横手”で対策を考え、本番に備える。

世界中から多くの人がやってくる万博は、横手市にとってまたとないチャンス。「横手のかまくらが、日本のかまくら、世界のかまくらとして認知してもらえるような取り組みにしていきたい」と佐藤さんは意気込む。

高橋市長も「万博を契機に横手のファンをつくって、ワールドワイドなチャンネルを広げていきたい」と万博出展の効果に大きな期待を寄せている。

横手市が出展する「ローカルジャパン展」は7月28~31日まで。秋田が誇る雪まつりの素晴らしさが、どれだけ世界に伝わるか注目だ。

(秋田テレビ)

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