2023年、新潟県上越市で自営業の男性を殺害し、現金を持ち去った強盗殺人などの罪に問われている男の初公判が1月20日に新潟地裁で開かれた。男は、殺害などは認めたものの「金を奪う目的ではなかった」と起訴内容を一部否認した。法廷では強盗殺人事件当時の防犯カメラ映像も流され、当時の凄惨な犯行が証拠として示された。
強盗殺人など3つの罪で起訴の男の初公判
強盗殺人・住居侵入・窃盗の罪で起訴されているのは、長野県上田市の無職・小倉一夫被告(72)だ。

起訴状などによると、小倉被告は2023年6月1日、上越市の自営業・中村礼治さんをハンマーで複数回殴って殺害し、現金約120万円の入ったバッグを持ち去ったほか、2023年4月5日にも中村さんの自宅に侵入し、現金約26万円を盗んだ罪に問われている。
1月20日に開かれた初公判で小倉被告は窃盗と住居侵入、中村さんの殺害については認めた一方で…
小倉被告:
ハンマーで殴ったが、金をとる目的ではなかった。
強盗殺人については否認。
今回の裁判では、暴行を加えた際に金品を奪う意思があったのか、つまり強盗殺人の罪が成立するかどうか、そして“量刑”が争点となっている。
身勝手な動機が明らかに
検察側は冒頭陳述で小倉被告が、2023年4月の窃盗事件で盗んだ現金を元妻への返済や滞納していた家賃の返済に充てるも足りず、金銭的に困窮していたと指摘。

その上で…
検察:
被告人は被害者を殺害して金品を強奪するため、持参したハンマーで複数回殴打した。
小倉被告は金銭を奪う狙いがあって、ハンマーを持って中村さんの自宅に向かい、暴行に及んだと主張した。
また、犯行までの状況については、計画性があったともみられる行動が確認されたという。
検察:
被告人は住んでいる長野県内から自動車を運転し、上越市に向かった。そして、中村さんの自宅から約900m離れたスーパーの駐車場に駐車。出発時には白の靴だったのが、中村さんの自宅に向かう際には黒の靴に履き替え、午後7時ごろに到着し、待ち伏せしていた。
そして午後7時42分ごろ、自動車で帰宅した中村さんが自宅カーポートに駐車後、降車して玄関へと向かう際に小倉被告は犯行に及んだ。
検察:
小倉被告は被害者を殺害して金品を強奪するため、中村さんの自宅玄関および、カーポート内において、殺意を持ってハンマーで中村さんの頭部などを複数回殴打し、中村さんは倒れ込んだ。
そして、約50秒後に中村さんの車の後部座席から現金約120万円入りの財布が入った黒のショルダーバッグを取り出した小倉被告。
その後、まだ意識のあった中村さんに対し、追い打ちをかけるように暴行を続けた。
検察:
バッグを取り出した2秒後、小倉被告は倒れている中村さんをさらにハンマーで1回殴り、再びカーポートから離れたものの、再びカーポートに戻って、複数回中村さんをハンマーで殴打して現場から逃走した。
これに対し弁護側は、日用品や偽のブランド品・アダルトDVDを販売し、何とか生活していた小倉被告は中村さんの仕事が順調なことに嫉妬していたと説明。
中村さんから車を購入したり、リースしたりしていた小倉被告はその代金が支払えず、商品を昔から購入してくれていた中村さんが商品の代金と車の代金等を相殺して商品を持っていってしまうことに不満も覚えていたという。
強盗殺人事件の際には、中村さんに商品を売ろうと思い、長野県の自宅を出発し、自宅で帰宅を待っていたものの、これまでの不満や嫉妬が次第に募っていったと話す。
弁護人:
将来の不安や中村さんとの境遇の違いなどで自暴自棄になり、その際、中村さんが帰宅したことから中村さんの自宅にあったハンマーで殴った。金の入っている車の存在には殴った後に気付いた。
弁護側は、自宅に向かう際には中村さんを殺害する気持ちはなく、ハンマーは中村さんの自宅にあったものを使用したと検察の主張に対しても反論。
殺害しようと考えたのは、中村さんの自宅に着いてからで、金を盗もうと思ったのは殺害後だったとして、無期懲役もしくは死刑の可能性もある強盗殺人罪ではなく、殺人・窃盗罪が適用されるべきだと主張した。
証拠には生々しい残虐な犯行当時の映像も
冒頭陳述の後に行われた証拠調べで検察側は、中村さんの頭部に陥没骨折があったことや手に防御創があったことなどから小倉被告が中村さんを最低でも11回は殴打したと説明。

犯行時に使用していた長袖シャツは道ばたに、手袋は空き地に捨て、ハンマーは周辺の民家敷地内の排水溝に捨てていたとそれぞれ写真を示した。
そして、犯行当時の様子を捉えていた防犯カメラ映像も証拠品として廷内で再生される。
防犯カメラ映像では字幕がつけられ、中村さんが車を降りて数分後に殴られた様子ははっきりとは映っていなかったものの、中村さんが「いてえ、いてえ、助けて」などと言っている様子が映されていた。
さらに映像の後半には倒れ込んだ中村さんが言葉にならないうめき声をあげているところに、小倉被告がハンマーを複数回振り下ろす様子も見られた。
その後の検察側の証人尋問では、当時中村さんの会社で働いていた元従業員が証言台に立ち、弁護側の主張とは違い、中村さんが自宅にハンマーを持って帰っていなかったことや中村さんが大金を普段から持ち歩いていたことなどを証言した。
検察:
中村さんが大金を持ち歩いていたことは知っていた?
元従業員:
はい。常に厚みのある財布を2~3個持っていて、食事を一緒にする時には財布の中身をこちらに見せてくることもあった。
検察:
その財布はどこに保管していたか分かる?
元従業員:
バッグに入れていた。そのバッグも車の後部座席かその足元に保管していた。
検察:
なぜ分かる?
元従業員:
いつも一緒に行動していたから分かる。
検察:
犯行に使われたハンマーは職場にはあった?
元従業員:
板金の仕事で使うので3~4本はあった。
検察:
中村さんがそのハンマーを自宅に持ち帰って作業したり、持ち帰ったりした様子を見たことはある?
元従業員:
自宅で作業しているようなことは知っている限り、今までに一度もなかった。また、ハンマーを持ち出したのも見たことはない。
金品を強奪しようとハンマーを持参して殺害したと主張する検察と自宅にあったハンマーを使用して突発的に殺害に及んだと主張する弁護側。
強盗殺人は成立するのか…判決は1月29日に言い渡される予定だ。
(NST新潟総合テレビ)