【動画には車が衝突する映像が含まれています】

2024年9月、高知県の東部自動車道を走っていた車が、反対車線を越えてきた車に正面衝突され1歳の男の子が亡くなりました。事故の原因は、高知市の男が運転中に靴を履き替えようとした「ながら運転」とみられます。

遺族は男への厳罰を求め、高知市で署名活動を展開。しかし、法律の壁が立ちはだかっています。

大阪市に住む、神農諭哉さんと妻の彩乃さん。1歳の息子・煌瑛ちゃんを事故で亡くしました。

神農諭哉さん(34):
「最愛の息子を亡くしてしまった。悲痛の思い極まりない」

妻・彩乃さん(38):
「ごめんね、こうちゃん大好きだよって毎日毎日言っている」

2024年9月、家族旅行で高知を訪れ、東部自動車道を走行し田野町の神社へ向かっていました。突然、反対車線の車が目の前に。センターラインを越えてわずか0.8秒後の衝突でした。

神農諭哉さん:
「一瞬の出来事。娘の泣き声、妻も痛いと言っていた。息子の泣き声だけが聞こえなかった」

後部座席にいた煌瑛ちゃんは、全身を強く打ち亡くなりました。助手席にいた彩乃さんは内臓を損傷。全身12カ所を骨折し意識を失いました。

妻・彩乃さん:
「ほぼ寝たきりの状態から、息子のお別れ会に出るため車いすに乗る練習をして、なんとか両手にだっこはした。あの重さは一生忘れない」

高知地検は2025年8月1日、反対車線にはみ出した高知市の61歳の男を過失運転致死傷の罪で在宅起訴しました。起訴状などによりますと、被告は事故当時シートベルトを外し、運転支援機能を使った状態で助手席の下のサンダルに履き替えようとしていました。取材に対し「事故のことは覚えていない」と話しています。

妻・彩乃さん:
「とにかく悔しくて。どうしてこれが危険運転致死傷罪にならないのか」

過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。一方、危険運転致死傷罪は20年以下の拘禁刑で、飲酒運転やあおり運転などが適用されます。しかし、今回の事故のような「ながら運転」は構成要件に入っていません。

遺族の弁護人は。

高橋正人弁護士:
「(今回は)悪質性が高い中でも一番高い。危険運転致死傷罪の類型に入れたり、過失運転致死傷罪の法定刑を伸ばす法改正につながると思う」

神農諭哉さん:
「8月2日が息子の2歳の誕生日。一緒に戦おうという気持ちで息子を連れてきた」

ながら運転の厳罰化を求め、神農さん夫婦は8月2日、高知市で署名活動を行いました。夫婦はオンラインでも署名を集めています。

妻・彩乃さん:
「ここで判例として重たい判決を勝ち取らないと、同じような事故が起きた時、同じように苦しむ人がいる。息子にやれることは全てやったよと言えるように」

夫婦は事故後、被告が乗っていた運転支援機能を備えた車を買いました。

神農諭哉さん:
「自分たちで、どういう風にしたらそうなったのかを解明しようという気持ち。自動運転機能ではなく運転支援なので」

妻・彩乃さん:
「一人で逝かせてしまったことをものすごく後悔していた。ごめんね、こうちゃん、大好きだよ、毎日毎日言っている。そうじゃなくて、ママもパパも頑張ったよと言える日がきたら」

事故後、夫婦がつくった家族の似顔絵には、煌瑛ちゃんへの「いつもいっしょ」のメッセージが添えられています。

「ながら運転」の厳罰化について、危険運転致死傷罪にするには慎重論が多いのが現実です。例えばスマホを操作する、エアコンの調整をする、といったように「ながら運転」の範囲はとても広いからです。厳罰化するためには最高7年の過失運転致死傷罪の法定刑をさらに引き上げるといった議論も求められます。

高知さんさんテレビ
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