スノーモンスターとも呼ばれる樹氷(じゅひょう)。ただ雪が積もっただけではなく、樹木が氷や雪をまとい、冬を通して徐々に大きく成長する現象で、宮城県と山形県にまたがる蔵王山や青森県の八甲田山など、世界でも限られた地域でしか見られない。インバウンドにも人気で、樹氷ツアーには2025年も多くの外国人が参加している。ここ数年、立ち枯れや暖冬によりその数を減らしていたが、寒さが厳しい今シーズンは一転、たくさんのスノーモンスター(学術名:アイスモンスター)が育っているという。

観光資源となっている蔵王の樹氷(2021年撮影)
観光資源となっている蔵王の樹氷(2021年撮影)
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雪上車で行ける樹氷原

宮城県の樹氷ツアーの出発点となるのは、蔵王町にあるスキー場「マウンテンフィールドみやぎ蔵王すみかわ」だ。雪上車に乗って蔵王山の山頂付近にある樹氷原を目指す。

雪上車はレストハウスで申し込む
雪上車はレストハウスで申し込む

雪上車に揺られること50分。標高1600メートル付近に到着するとこの時期にしては大きく育ったスノーモンスターが出迎えてくれた。例年は2月中旬から下旬がピークとなるが、今年は1月中旬ですでに例年のピークと同じか、それ以上の大きさになっていた。

2025年1月13日 この時期にしては大きい樹氷
2025年1月13日 この時期にしては大きい樹氷

山の天気は変わりやすく、吹雪になることも多い。悪天候ではおどろおどろしく見えるスノーモンスターは、晴天に恵まれると神秘的ともいえる絶景を見せてくれる。

さまざまな形のモンスターが見える(2021年撮影)
さまざまな形のモンスターが見える(2021年撮影)

樹氷ができる仕組み

樹氷ができるには自然と気象の条件が必要となる。樹氷の土台となる樹木は、蔵王連峰の1300mから1700mに群生するマツ科の針葉樹オオシラビソ(別名:アオモリトドマツ)だ。冬の間、蔵王連峰には日本海側から強い風が吹きつける。風で運ばれてきた過冷却水滴という、氷点下より低い気温でも凍らずにいた水分が、くし状の葉にぶつかることで凍結し着氷する。さらに着雪も重なることで氷や雪が入り混じって一体化し、強い風が吹きつけるたびに徐々に大きく成長していく。

風向きによって成長する形は変わる
風向きによって成長する形は変わる

樹氷は木に雪が積もっただけではできない。場所、時期、気象条件がそろって初めて見ることができる。実際に樹氷を前にすると「自然がつくる芸術」という表現も大げさではないと感じるだろう。

危機に直面している樹氷

樹氷は日本を訪れる外国人観光客にも好評で、連日、多くの人が蔵王の樹氷原へと足を運んでいるが、実はその足元はおぼつかない。2013年ごろから、蔵王のアオモリトドマツに虫食い被害が発生。東北森林管理局によると、被害が深刻な場所では8割から9割の木が枯れてしまったという。

立ち枯れしたアオモリトドマツ
立ち枯れしたアオモリトドマツ

さらに暖冬となった2024年は吹きつける雪が少なく、樹氷というには寂しい景色が広がっていた。上述の虫食い被害も含めて温暖化の影響と指摘されている。

2024年は2月中旬に樹氷が姿を消した
2024年は2月中旬に樹氷が姿を消した

いつまで見られる?貴重な樹氷

大雪の被害も出ている今シーズンだが、樹氷にとっては好都合。冬型の気圧配置により強い西風が吹くたびに成長を続け、大きくなっている。今シーズンは順調にいけば、3月上旬まで大きな樹氷が楽しめるという。年々、貴重さを増している樹氷。今季がその姿を楽しむ絶好の機会なのは間違いない。

仙台放送
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