ロシアで、「日本」をうたった製品が急増している。ウクライナ侵攻による制裁で日本からの輸入が減る中、現地企業が日本の高品質イメージを利用し、日本からの輸入品に模した商品を展開している。将来、制裁が解除されれば、日本企業の参入を阻む可能性も懸念される。
ロシアで日本語の商品…翻訳シール貼り輸入品を模す
EBOSHI、純度、洋子サン、Tシャツには「届きますよ。最終的に」と書かれている。ロシアで今、「日本」を謳った製品が急増している。

経済制裁で日本からの輸入が減る中、日本語の製品が増える背景は何なのか、販売するロシア企業を直撃した。
ロシアの首都モスクワのスーパーマーケットでは、日本語が書かれた商品が次々と目に飛び込んできた。

記者:
棚にはずらりと外国のビールが並んでいますが、その中にありました、EBOSHIビールです。「最初のレシピ、輸入品」と書かれています。
棚に並んでいたのは、日本風のビールだ。ビンと缶の2種類があり、ラベルには富士山とみられる山や、鎧を着た武士のようなイラストが描かれている。
ロシアでは3年前、ウクライナ侵攻による制裁で多くの日本企業が撤退した。その頃を境に、街中では日本語が書かれた製品が増え続けている。中には、日本からの輸入品に模した商品もある。

記者:
食器用洗剤の洗剤コーナーです。ここには『純度』と書かれた商品があります。後ろの説明書きも日本語です。
食器用洗剤の「純度」のボトルの裏側には成分や使い方が日本語で表記され、わざわざ輸入品につけられるロシア語の翻訳シールが貼られている。
ラベルに書かれているのは、「厚くて香りの良い泡の雲が効果的に皿をきれいにし、すぐに水で洗い流され、痕跡が残らない」という、かなり違和感のある日本語だ。日本語が使われた商品は、どの程度ロシアの消費者に浸透しているのだろうか。
街の人:
デザインが素敵だわ。全て外国語で書かれているのもいいわね。
日本語が書かれているだけで、信頼性が高まるという意見もあった。
日本とは全く関係ない…日本商品のイメージを活用したい狙い
こうした商品は、日本とつながりがあるのか、販売しているロシア企業に話を聞くため、日本から輸入しているとも取れる食器用洗剤の「純度」の業者に問い合わせた。

業者:
はい。
記者:
なぜ純度という言葉にした?
業者:
日本語で清潔さを表しますよね。

社長が電話で一言だけ応じたが、詳しくはメールで問い合わせるよう求められ、取材班は「日本と関係があるのか」などの質問を送ったが、回答はなかった。
一方、赤ちゃん用オムツなどの「洋子サン」に話を聞くために、商品に書かれていた企業の住所に向かった。
記者:
こちらのブランドの事務所があるとされる住所に来ましたが、どうやら倉庫のようですね。奥には洋子サンのトラックが止まっているのが確認できます。
事務所はなく、複数の企業が使う倉庫のみがあった。こうした商品のほとんどは、日本とは全く関係がなく、日本ブランドに見せかけた偽物とみられている。

JETROモスクワ事務所・梅津哲也所長:
日本のものはいいものであるというイメージを、ロシア企業が活用しながらビジネスにつなげている。そういった事が今起こっていると思います。
ウクライナ侵攻から、まもなく3年が経つ。経済制裁の影響で日本からの輸入品が減少したロシアだが、今後仮に制裁が解除されることになれば、日本企業にとっては市場参入の障害になる恐れもありそうだ。
(「イット!」1月9日放送より)