2024年の日経平均株価は、バブル期の最高値を超えて初の4万円台をつけ、4万2000円台まで上昇したが、過去最大の下落も記録するなど、歴史的な乱高下を見せた。

年末の終値は35年ぶりに最高値を更新したが、節目の4万円以上の水準は維持できなかった。
円相場も値動きが大きかった。年初は1ドル=140円台だったが、7月には一時161円90銭台と、37年半ぶりの円安水準にまで下落。その後、アメリカ景気の先行き懸念などを受け円買いが優勢となったが、アメリカ大統領選でトランプ氏が返り咲くなかドル買いが加速し、年末には158円台の水準まで円安が進んだ。
記録ずくめの2024年だったが、2025年はどのような年になるだろうか。
春闘での賃上げとトランプ新政権の経済政策
大きな焦点は、日銀がどの時点で追加利上げに踏み切るかだ。

日銀は、異次元の金融緩和からの脱却を進め、2024年3月にマイナス金利を解除して、7月には政策金利を0.25%に引き上げたが、12月の金融政策決定会合では、追加の利上げを見送った。
日銀が利上げ判断に向け重視するとしているのが、春闘に向けた賃上げのモメンタム(機運)と、アメリカのトランプ新大統領の経済政策の行方だ。

植田総裁は、12月の会合後の会見で、賃上げの勢いを見極め、賃金上昇の持続性を判断したいとする考えを示すとともに、トランプ新政権の政策の見通しについては定量化の前提になるものが出ていないとして、「次の利上げの判断に至るにはもうワンノッチ(一段階)ほしい」と述べた。
日銀の金融政策決定会合の次回日程は1月23日と24日、その次は3月18日と19日になる。
1月会合は1月20日のトランプ政権発足直後のタイミングとなり、春闘での賃上げ動向の大勢が判明してくるのは3月中旬だ。
植田氏は、1月会合について「ある程度の情報が出ていると思うが、総合判断にならざるを得ない」としつつ、賃上げ機運での「大きな姿がわかるのは3月や4月といったタイミングになる」との認識を示した。
市場関係者の間では「1月会合での利上げ」を見込む声がある一方で、「3月会合以降に利上げ判断を持ち越すのでは」との観測も広がっている。
金利スワップ市場でどの程度の利上げの可能性が織り込まれているかについて、東短リサーチなどが2024年12月30日時点で分析したところ、1月会合が41%、3月会合は35%という結果になった。
「金利のある世界」広がりの影響は
日銀による追加利上げが行われれば、「金利のある世界」は一層広がることになる。

2024年は日銀の利上げを受けて、住宅ローン金利変動型でも上昇の動きが出てきた。
預金金利も引き上げられる傾向が強まっているが、この先の利上げは家計にどういう影響を及ぼすだろうか。
追加利上げが行われ、長短金利水準が上昇した想定での年間家計への影響の試算を、みずほリサーチ&テクノロジーズが行った。

政策金利が0.25%引き上げられるケースでみると、全世帯平均では、家計にプラスとなる預金金利の増加分が約2万7000円となり、マイナスとなる住宅ローンの利払い負担増の約1万6000円を上回る。
ただ、住宅ローンを抱える世帯の平均でみると、30代では、預金金利の増加分が約8000円なのに対し、住宅ローン金利の増加分が約9万8000円、40代では、それぞれ約1万2000円、約7万円となって、預金金利増加のメリットで住宅ローンの負担増を補えなくなる傾向が見てとれる。
その先、政策金利がさらに0.25%上がって、追加の引き上げ幅があわせて0.5%になるケースだと、全世帯平均では、預金金利の増加分が約3万8000円、住宅ローンの負担増は約2万4000円となる。住宅ローンを抱える世帯の平均では、30代で、預金金利の増加分が1万4000円、住宅ローン金利の増加分が約15万2000円、40代では、それぞれ約1万9000円、約10万9000円になるという。
「金利のある世界」の広がりは、将来の資金計画や運用の選択肢をめぐる家計での見直しが一段と進む契機になる可能性がある。
実質賃金はプラス定着できるか
物価高が長引くなか、賃上げペースは物価上昇に追いついておらず、消費に力強さが欠けるのが現状だ。

2024年11月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比の伸び率は2.7%と、39カ月連続で上昇し、「令和の米騒動」の余波が続くコメ類は63.6%と過去最大の上げ幅となった。
帝国データバンクの調べでは、2025年の食品値上げは1~4月の4か月間だけで6121品目にのぼり、平均の値上げ率は18%と、2024年を上回る見通しだ。
連合が集計した2024年春闘の賃上げ率は平均で5.10%と、33年ぶりの高い水準となったものの、2024年6月と7月にいったんプラス転換した実質賃金は、再びマイナス圏に沈んで推移している。
賃上げ加速を通じ、実質賃金のプラス定着を確実なものにできるかが、消費の先行きを占う重要なカギとなる。
戦後の「巳年」は4勝2敗
2025年は「巳年」だが、「辰巳天井」の相場格言があり、前年の辰年とあわせて天井をつけやすいとされている。
前回巳年だった2013年の日経平均株価は、第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」や日銀による大規模緩和のなか、1年で56%を超えて上昇したが、戦後6回の「巳年」の年間騰落率をみると、上昇した年と下落した年の勝敗は、4勝2敗となっている。
景気の下押し要因になり得るのが、トランプ新大統領が打ち出す関税強化だ。
大和総研は、中国への10%の追加関税と、カナダ・メキシコへの25%の関税が実現した場合、3か国による報復関税も想定すると、日本の実質GDPが最大で1.4%程度押し下げられると試算している。
金利のある世界のもとで、物価と賃金双方が安定的に上昇し、消費が勢いづく好循環の流れを実現して、内需が主導する上向き軌道を描いていけるのか。

2025年「巳年」は、日本経済が自律的な成長力を試される1年になりそうだ。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)