静岡市にかつて存在したという「全国で一番長い地名」を調査する。漢字で16文字あり、50年前に消えた地名だが、現地で聞き込みをしても覚えている人がほとんどいなかったのだ。
地元の人たちは意外に知らない
以前、静岡県内で一番長い地名として「久兵衛市右衛門請新田」という漢字10文字の地名を紹介した。
ところが、これを越える日本一長い地名が、かつて静岡市に存在したという情報を得た。それは現在の「流通センター」の周辺にあった地名だという。

まずは1946年創業、間もなく80年となる流通センターで一番歴史が長い食品の卸売店「小倉屋」で聞き込み調査を開始した。
(Q.全国で一番長い地名があったことを知っているか)
小倉屋・大石雅也さん:
ここがですか? この会社に入って38年になりますが、聞いたことがありません
小倉屋のベテラン社員も、かつての地名を知らなかった。

小倉屋は1946年創業。1974年に流通センターに移転した。
ここの現在の地名は「流通センター」。流通センターが整備されて小倉屋が一番最初に建ったが、その時から地名は「流通センター」だったそうだ。
日本一長かったのに、全く知られていないのが不思議だ。小倉屋には長年、流通センターへ通っている常連客が多いということで、客にも聞き込み調査をすることに。
常連客:
この辺が埋め立て地の頃から知っているけれど、地名はちょっとわかりません
別の常連客:
流通センターができたときに、カタカナの住所は珍しいと取り上げられたことはあります

流通センターができる前を知っている人もいたが、不思議と長い地名に関する情報は得られない。すると、先ほど話を聞いた男性が、別の年配の方に話を聞いて戻って来てくれた。
手に持っていたメモに書かれていたのは・・・
あげつちしんでん 下足洗しんでん

そんな名前だった、とのこと。全国で一番長い地名に関する重大な手がかりをゲットした。
まるで早口言葉 「日本一長い地名」判明
この情報を携えて、以前もお世話になった静岡市歴史博物館の宮崎泰宏さんに話を聞いた。

(Q.一番長い名前は「あげつちしんでん 下足洗しんでん」か)
静岡市歴史博物館・宮崎泰宏さん:
実はもっと長い名前です。上土新田下足洗新田川合新田請新田(あげつちしんでん しもあしあらいしんでん かわいしんでん うけしんでん)です
小倉屋で聞いた言葉の後ろに、まだ続きがあったのだ。漢字で数えると16文字。そのうち「新田」が4回も出てくる。
まるで早口言葉のような地名だ!
略して「三請新田」
では、なぜ住民達は名前を覚えていなかったのだろうか。静岡市の図書館に資料があるということで向かった。宮崎さんにすすめられた書籍は「静岡市町名の由来」。そこにはこう書かれていた。
静岡市はもとより恐らく日本で一番長い町字名はこの三請新田で、正式な地名は『上土新田、下足洗新田、川合新田、請け新田』という16文字の字名である
名前が長すぎて不便なので「三請新田(さんうけしんでん)」と略して呼ばれていたのだ。

名前の由来は、「上土新田」「下足洗新田」「川合新田」という3つの地域の人たちが請け負って開拓した土地という意味だった。
さらに静岡市の生活市民課が発行した「町字の変遷」という資料の中にも登場する。「町字の変遷」は地名の変化をまとめた資料だ。
目次に書かれていた地名は「上土新田川合新田下足洗新田請新田」。
お気づきだろうか? 下足洗新田と川合新田の順番が逆ではないか。長すぎて編さんした人もうっかりしてしまったのだろうか。

変遷を見てみると、1934年に千代田村の一部が合併によって改名して上土新田川合新田下足洗新田請新田になっていた。
名前がなくなったのは1974年10月1日。流通センターの開業にあわせて、三請新田の地名は消滅した。
もしかしたら地元の人も「三請新田」と言えばピンときたのかもしれない。
(テレビ静岡)