災害関連死」とは、避難生活で持病を悪化させるなどして亡くなってしまい、災害との因果関係が認められたもの。
これに対して、地震や津波などの災害で命を落としたケースは、「直接死」と呼ばれている。

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この災害関連死が大きく注目されたのが、2011年の東日本大震災と原発事故。
福島県内では、直接死が1,605人だったが、災害関連死は、2020年8月までに2,312人と、直接死の約1.5倍に上っている。
避難の長期化が要因と考えられていて、避難環境の改善などが課題になっていた。

しかし、2019年の台風19号でも災害関連死を防ぐことはできず、これまでに福島県は、いわき市などで6人が認定された。

遺族は、災害関連死をどのように受け止めているのか?
母を亡くした男性を取材した。

「母がまだ部屋にいるような気が…」

山崎学さん:
ここに座ってドアを開けると、今でも「お帰り」なんて言うような。「ただいま」って家に入ってくるんですが、まだこの部屋にいるような気がする時がありますね

福島・いわき市の山崎学さん(58)。
2019年11月、母の惇子さんを亡くした。82歳だった。

部屋に残る、使い古された五線譜。
幼いころから70年以上弾き続けてきたピアノには、今も惇子さんの面影が。

山崎学さん:
ピアノは、今は聞きたくないっていうのがまだまだ。何となく、しんみりしちゃうので

台風19号から1カ月後…元気だった母に異変

山崎学さん:
この辺の線だと思うんですけどね。もう消しちゃいましたけど。ここを(水が)ずっと来て、これも水かぶって、この中に水が入っていった

2019年10月の台風19号で、母の惇子さんと2人で住んでいた自宅は、浸水被害を受けた。

近くを流れる夏井川の支流が氾濫したためで、特に被害を受けたのが物置だった。

山崎学さん:
中身の様子は全部変わっちゃいましたけど。これがクラシックのレコード群です

惇子さんが大切にしてきたレコードやコンサートのパンフレットは、捨てることに。

山崎学さん:
側溝の(泥を)スコップでとっては土のう袋に詰めて、ゴミ捨て場までの往復を何回もしていました

断水で風呂やトイレが使えないため、親戚の家に避難。
持病もなく、健康に問題がなかった惇子さん。
学さんと2人で、側溝にたまった泥のかき出し作業など復旧を急いでいた。

山崎学さん:
非常におおらかで、明るくて冗談言ったりするし、体力にも自信があって、非常に活発な、活動的な母だった。周りの環境をきれいにして早く日常を取り戻したいという気持ちは、口には出さなかったですけど、行動としては感じていましたし

自宅に戻れたのは、約3週間後。
そして台風から1カ月後、ほとんどを疲れを見せなかった惇子さんに異変が起きた。

山崎学さん:
「きょうは疲れたから早く寝るかな」なんて。「じゃあ、もう早くお風呂に入って寝たら」

それが最後の会話に…
その後、浴室で倒れ、意識が戻ることはなかった。

台風との因果関係が認められ…

元気だったはずの母がなぜ…
台風がなければ、母は亡くならなかったのではないか…

答えを見つけるために、学さんは災害関連死の認定を申請。
台風との因果関係が正式に認められた。

山崎学さん:
なんで突然死んじゃったのっていう気持ちが、やっぱりあの(台風の)せいだと。何かのせいにできたといいますか。理由が明確になったというのは、ある意味、心のもやもやが少しは消えたような気がします

偶然にも、亡くなった日に、惇子さんは失いかけた日常生活を1つ取り戻していた。
被災した地域の人たちに配慮して弾くことがなかったピアノ。
近所の人が、久しぶりに音色を聞いていた。

演奏曲は、お気に入りだったショパンのノクターン。
学さんは、その楽譜を片付けられずにいる。

山崎学さん:
ちゃんとついている、まだ長いろうそくが突然、風でふっと消されてしまったみたいな感じですよね。災害がなかったら、まだ元気にピアノを弾いていたんだろうなっていうところはありますよね

もう一度ピアノの音色を。
学さんは、心の中で語りかけている。

(福島テレビ)

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