鹿児島・指宿市の南部、山川地区にある砂むし温泉施設が2024年末、自然災害による休館から3年ぶりに営業を再開した。民間による運営から市の直営と新たな体制になり、スタッフは研修を重ね、再開の日を迎えていた。

復旧工事を終え3年ぶりの営業再開

温泉で熱せられた砂の上に浴衣で寝そべり、顔だけ残して上から砂をかけてもらうと、砂の重さと熱気で汗がじわっと噴き出す。指宿名物の「砂むし温泉」は、砂の外に出たときの爽快感が独特で、国内外の観光客から人気だ。

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薩摩半島の南端で指宿市が運営する「山川砂むし温泉 砂湯里」は、ホテルなどが多い市街地から離れているが、遠くに「薩摩富士」こと開聞岳を望む自然豊かな場所に位置している。2024年12月5日、「砂湯里」に観光関係者らが集まり、3年ぶりの営業再開を祝った。

「砂湯里」は、2021年11月に大雨の影響などで後ろの斜面が崩れて浴場などが被害に遭い、営業できなくなってしまった。復旧工事を終え、2024年10月に営業再開予定だったが、直前の9月、台風による高潮で浴場が流され再び延期されていた。

営業再開に向け新人スタッフの養成

指宿市観光施設管理課の谷口義郎さんが、スタッフに「いよいよ本番が近づいてきました。本番だと思って取り組みたいと思います。よろしくお願いします」と声をかけ、営業再開に合わせて新しいスタッフの研修が行われた。

災害前の「砂湯里」は指宿市が民間企業に業務を委託していたが、再開後は指宿市の直営となり、砂をかけるスタッフの養成が必要になった。スタッフのほとんどが砂かけの初心者のため、民間企業から残った2人が指導する。

砂かけで気をつけるのは入浴客のやけど。この辺りの温泉はとにかく温度が高いため、ベテランの有村睦夫さんは「同じ所を掘っていたらどんどん熱くなる。だから、足で冷たいのと混ぜながらかけた方がいい」と砂かけのコツを分かりやすく説明する。
新人の間藤智美さんは「体の使い方で中腰になる。コツもいるのでなかなか難しい。コツを覚えればうまくなるかも」と初めての砂かけについて感想を語った。

指宿市観光管理施設課の園田浩一郎課長は「『やっとここまできた』という思い。新しいスタッフも入り、前からいるスタッフと色々コミュニケーションを図りながら、お客さまを温かい心で迎え入れられるように準備を進めている」と語った。

無事に営業再開 入浴客も満足

そして迎えた12月5日、浴場に湯煙も上がり、客を迎え入れる準備が整った。ベテランの石塚明則さんは「源泉が83度、砂場が67度まで上がっている。天気も穏やかでいい砂場ができると思う」と無事に再開できるめどが立ち、安堵(あんど)の表情を見せた。

3年ぶりに営業が再開され、この日を待っていた入浴客を元気よくスタッフが客を迎え入れた。「(砂の)熱さはどうですか?大丈夫ですか?良い感じですか?」と研修を終えたスタッフらが丁寧に砂をかけ、入浴客の状態に気を配る。

リラクゼーション効果があるとされる砂むし温泉に、入浴客は砂の温かさを感じ、波の音を聞きながら、ここでしか味わえない時間を過ごした。
入浴客に話を聞くと「海の音が気持ちよくて寝ちゃいそう」「(スタッフの)皆さんベテランのようにうまい砂かけで非常に安心した。リフレッシュできそう」と、研修で学んだスタッフたちの温かいおもてなしにリラックスできた様子だ。

新人の砂かけスタッフの浦郷悟さんは、「コミュニケーションも今から少しずつ練習し、機会を増やして慣れていきたい。丁寧にできたと思う。ホッとしました」と、今後もさらに技術と接客の質を高めようと意気込む。

谷口さんは「指定管理者という民間から引き継ぎ、本当にノウハウのないまま来たが、地域にしかない観光資源を大事に地域の活性化へつなげたい」と話す。
自然災害を乗り越え、新たにスタートした「砂湯里」は、温かいおもてなしで客を迎えた。

(鹿児島テレビ)

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