韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣言から9日目の12月12日、ソウル市内では、尹大統領の辞任を求める抗議デモが行われ、多くの国民が参加しました。

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一方、尹大統領は国民に向けて「非常戒厳」についての談話を発表。

尹錫悦大統領:
今回の戒厳で驚きと不安を感じさせたことを、国民の皆様に改めておわび申し上げます。
巨大野党は国民が選んだ大統領を認めず、退陣や弾劾の扇動を止めませんでした。
巨大野党の議会独裁に対抗し、大韓民国の自由民主主義と憲政秩序を守ろうとしたのです。私を弾劾しようが、捜査しようが、これに堂々と立ち向かいます。

「非常戒厳」を出したのは、国家の機能を正常化させるためだったと正当性を主張し、自身を退陣させようとする勢力とは、“戦う”と宣言しました。

しかし、この談話の直後一部の与党の議員たちが自身のSNSなどで、尹大統領の弾劾訴追案に賛成する意向を表明。

さらに、与党「国民の力」韓東勲(ハンドンフン)代表が会見を行い、「ユン氏が大統領職を遂行できないことがより明確になった」「大統領の早期退陣の意思がないことが確認された以上、即時職務停止が必要です」と述べました。

その後、野党も2度目となる弾劾訴追案を国会に提出。野党だけでは、可決に必要な200人には達しないものの、賛成を表明した一部の与党議員が加われば、可決される可能性もあります。

大統領夫人の“疑惑”題材にした映画も…

採決が14日に迫り、“尹大統領 包囲網” が徐々に狭まる中、時を同じくして注目を浴びているのが、12日に公開された尹大統領の妻 金建希( キム・ゴンヒ)夫人を描いたドキュメンタリー映画「ファーストレディ」です。

ポスターには、「私が政権を握れば…そこは絶対に無事ではいられない」と意味深な言葉が…。

前売り券が発売直後に完売するほど話題を呼んでいるというこの映画は、「高級ブランドバック収賄疑惑」や「高速道路の計画変更疑惑」など、キム夫人の様々な疑惑について、関係者のインタビューなどで掘り下げるという内容。

これらのキム夫人をめぐる様々な疑惑を受けて、12日、野党は政府から独立した特別検察官が疑惑を捜査させるための特別法案、「金建希女史特検法」を提出し、可決されました。

同法案が可決されるのは4度目ですが、過去3回はいずれも尹大統領が拒否権を行使し再採決が行われて否決され、廃案となっています。

韓国の政治は“世論”

韓国政治に詳しい、慶応大学法学部政治学科の西野純也氏は、現在の大統領を巡る状況について、こう話します。

慶応大学法学部政治学科 西野純也氏:
ユン大統領は、今、韓国の中で大統領の過ちに対して、「内乱罪」という非常に厳しい罪を適応しようとしているのに対して、自分がやった行為は国を守るための行為でありなぜそれが内乱罪の対象になるのかということで、「非常に納得がいっていない」というのがまず1点。
それから与党も大統領は早く退いてもらうということで、どちらかというと、大統領を守りたいということだったのですけども、もはや守り切れなさそうな状況になってきていると。さらに、野党が再び弾劾訴追案を上程しようとしている中で、自分は悪くないのだから弾劾をして、きちんと憲法裁判所で裁判を受けたいという立場にも見えました。

――与党の一部が造反を表明し、ハン代表も「党として弾劾に賛成する」方針を発表しましたが…。
慶応大学法学部政治学科 西野純也氏:

さすがにもう大統領を守り切れないし、このまま大統領を守り続けるとさらに与党が大きなダメージを受けるという判断。しかし、与党の中でもかなり意見が割れていて、14日に予定されている採決に果たしてどれくらいの与党議員が賛成をするのか、まだまだ見守らなければならない状況だと思います。

――キム・ゴンヒ夫人への捜査についても特別法案が可決されましたが今後は?
慶応大学法学部政治学科 西野純也氏:

尹政権において、大統領夫人の影響力が極めて大きいことは、大統領就任前から言われていたことなので、その夫人が様々な疑惑を抱えているので、捜査は絶対にすべきだという声が、野党のみでなく国民の中でも多いのは事実です。

フジテレビ解説委員 風間晋氏:
韓国の政治って、つまるところ世論次第というところがあって、やはり世論がとても大きいんです。憲法裁判所も世論に配慮しないわけではない。だから、尹大統領としては、世論に向けて「私の利益のためには一切やっていない」というアピールをやるのだろうなと思う一方で、夫人の疑惑に関する追及というのは、やはり事実かどうかはなかなか難しいわけですが、世論を湧き上がらせる効果はすごくあるので、そういう世論同士のぶつかり合いみたいなものがこれからずいぶんあるんだろうなと。
(「めざまし8」12月13日放送より)