非アルコール性タイプの脂肪肝が増えている原因は「糖質の摂り過ぎ」であり、糖質の過剰摂取のなかでも、私はとりわけ(本書のメインのテーマである)「甘い飲み物の摂り過ぎ」を問題視しています。
そのため本書では、この非アルコール性タイプ、すなわち「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」のほうをメインにとりあげ、とくにことわりを入れない限り、こちらをなじみ深い病名である「脂肪肝」と呼ぶことにします。
脂肪肝炎は進行性の疾患
また、脂肪肝のうち1~2割の人は、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」と呼ばれる炎症疾患へと移行します。こちらのほうが、とくにことわりを入れない限り「脂肪肝炎」と呼ぶことにしましょう。
脂肪肝炎は進行性の疾患であり、放っていると肝硬変や肝臓がんを引き起こすことが知られています。脂肪肝炎から肝硬変や肝臓がんになる人は、日本だけでなく世界中で急増中です。
これまで、肝硬変や肝臓がんの原因は、肝炎ウイルスとアルコールが9割以上を占めていたのですが、今後10年以内にこの脂肪肝炎が、肝臓病における死亡原因の1位になるだろうと予想されています。
とにかく、ここでは肝臓疾患で重視すべきウェイトが大きく変わってきていることを押さえておいてください。
ひと昔前までは肝臓病でいうと、「肝炎ウイルス」や「アルコール」の問題ばかりが取り上げられていました。しかし、いま、C型肝炎やB型肝炎は内服薬により短期間で完治できるようになって新規感染者が激減していますし、アルコール性の肝疾患のほうはいまだに多くの患者がいて決して安心できるような状況ではないものの、これまでと比べてそう目立った増え方はしていません。
ところが、肝炎ウイルスやアルコールの問題がすっかりかすんでしまうくらいの勢いで、非アルコール性の脂肪肝や脂肪肝炎が急激に増え、さかんにクローズアップされるようになってきているわけです。

尾形哲
長野県・佐久市立国保浅間総合病院 外科部長(肝胆膵)・救急医療部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。最新刊『甘い飲み物が肝臓を殺す』のほか『肝臓こそすべて』『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』など著書多数。SNSでも肝臓から脂肪を落とす術を積極的に発信し、大きな反響を呼んでいる。