多くの人は「脂肪肝」と聞いても、それが死につながるような病気だとイメージしにくい。
しかし、「生体肝移植」を専門とする肝臓外科医の尾形哲さんは、「脂肪肝を軽く見てはいけない」と指摘する。
代謝や免疫、解毒など何百もの仕事をこなす超重要臓器の肝臓。そして、日本人の3人に1人は肝臓に脂肪がたまった「脂肪肝」になっているようで、中高年だけでなく若い世代や瘦せた人にも増えているという。
そして、脂肪肝は生活習慣病の入り口となる疾患で、肝臓にたまった脂肪が炎症を起こすとその病が進行してしまったり、その状態を放置してしまうと「死」につながることもある怖い病気だとする。
脂肪肝のなにがそんなにいけないのか。『甘い飲み物が肝臓を殺す』(幻冬舎新書)から一部抜粋・再編集して紹介する。
“死亡肝”と言い直しても…
「脂肪肝を軽く見てはいけません。脂肪肝は“死亡肝”と言い直してもいいくらい恐ろしい病気なんですよ」
講演に呼ばれたときなどにこう話し始めると、聴衆のほとんどの方々は、最初、「まさか」「信じられない」「そんな、大げさな…」という半信半疑の表情を浮かべます。
ところが、私が説明を続けるうちに、その方々のお顔がだんだん固くなり、やがて眉間にしわを寄せた真剣なものへと変わり、講演が終わる頃になると、その表情に不安や焦りの色が加わってきます。

こうした様子からもお分かりいただけるように、脂肪肝は「多くの人に誤って受け止められている病気」なのです。
みなさんはいかがでしょう。脂肪肝のことを「たいしたことがない病気」「誰にでも普通にある、まったく怖くない病気」と思ってはいないでしょうか。
健康診断や人間ドックなどで脂肪肝を指摘されても、「なーんだ、脂肪肝か…これくらいで済んだのならよかった」と胸をなでおろしてはいないでしょうか。