思い切って飛び込んだ落語の世界

沼津市で2024年11月16日に開かれた落語会。
額に汗を浮かべながら高座で熱演していたのは地元沼津市出身の立川笑えもんさんだ。

笑えもんさんは専門学校を卒業後、都内の病院で臨床工学技士として働いていたが、「一度きりの人生だからこそ好きなことをしたい」と26歳で6代目立川談笑さんの元に入門した。

しかし、入門直後に新型コロナウイルスが猛威を振るい、観客の前で修行が出来ない日々。

「未知の状況になったのは、今まで生きてきた中でもなかったので、本当に心がすさんだ」と当時を振り返る。
晴れの舞台となるはずだった初めての高座もインターネットでの生配信という状況だった。
困難を乗り越えて稽古に励む

ただ、思うような修行が出来ない中でも夢を追い続けることをあきらめなかった笑えもんさんは2024年1月に二ツ目に昇進。
この日は、地元での落語会に向け立川流の先輩で真打の立川志の春さんに稽古をつけてもらっていた。

稽古の演目は登場人物たちによる軽妙な掛け合いが魅力の「宿屋の仇討」。
笑えもんさんのセリフ回しを見ていた志の春さんは「演じる上で仕草を大きくやることでお客さんも共感できる」とアドバイスを送った。

演じ方には改善の余地が多々あるが、志の春さんは「堂々とやってもらいたい。それで地元の人たちに楽しんでもらえれば一番」と話し、明るさが持ち味の笑えもんさんに期待を寄せている。
地元での地道なPR活動

落語会の開催に向けて笑えもんさんはPRにも注力。
沼津市内の飲食店などを回りチラシを貼らせてもらえるよう交渉し、なじみの店では「こんな身近な子が落語家になるなんて…」と背中を押してもらった。

迎えた落語会当日

友人の協力を得ながら設営した会場には続々と人が訪れ、ほぼ満席に。

「お客さんに満足してもらえるように頑張りたい。きょうはいっぱい入ってくれてうれしい」と意気込み、笑えもんさんは高座に上がった。
演目は志の春さんに稽古をつけてもらった「宿屋の仇討」を含む3本。

笑えもんさんは稽古の成果を発揮するように緩急をつけた話し方で聴衆を引き込んでいき、熱演のうちに演目を終えると会場からは大きな拍手が沸き起こった。

観客からは「たまにボケがあっておもしろかった」「落語自体初めてだったが、頭の中で話の情景が想像できて非常に面白かった。オチもよくて」「地元をすごく大事にしてくれて、毎月(落語会を)開いてくれるのは本当に地元の宝。これからも応援していきたい。ファンになった」と反応は上々だ。
目指すは真打

「(落語会に)来て楽しかったとか、きょうはいい話を聞いたとか、それぞれ少しでも感情が揺れ動いて落語を聞いてよかったと思ってもらえるような落語家になりたい」と笑顔で語る笑えもんさん。

目指すは真打昇進、ただひとつだ。
(テレビ静岡)