地震の被害で多くの動物が県内外に避難した石川県七尾市にあるのとじま水族館。地震前のにぎわいを取り戻そうと奮闘する飼育員に会いに行った。
地元出身の飼育員
地震から3か月が経った頃、能登島上空を飛ぶヘリから石川テレビの稲垣真一アナウンサーは「イルカショーが行われる場所です。そこには今、水がありません。子どもたちの歓声がここに戻ってくるのはいつになるのでしょうか。その日を県民全員が待ち望んでいます」とリポートした。

地震から半年あまり経った7月20日にのとじま水族館は営業を再開した。この日は多くの家族連れが訪れた。子どもたちの楽しむ声が館内に響き、ようやく能登島の観光スポットに賑やかさが戻ってきた。

それから4か月経ったのとじま水族館を訪れた。話を伺ったのは柳和也さん。水族館ではイルカやアシカなどを担当している。ショーでの演技を行うため、動物たちの体調管理や調教に余念がない。

(稲垣)柳さんは飼育員になられて何年目ですか
(柳さん)25年になります
(稲垣)どうしてのとじま水族館で働こうと思われたんですか
(柳さん)きっかけはアルバイトしないかと言われて、知り合いの方に。地元は能登島です
(稲垣)地元能登島でのとじま水族館に働かれているんですか
(柳さん)そうなんです。たまたまです
地震で被害を受けた水族館
柳さんに館内を案内してもらった。
(稲垣)この水槽は?
(柳さん)ジンベエザメ館の青の世界です
(稲垣)戻ってきたジンベエザメがいるかな。いましたね。雄大な姿ですね。いろんなことあったと思いますけど、改めてこの11か月って
(柳さん)長かったと思いますね。中々進まないじゃないですか工事が。すごく時間が長く感じましたね。まだかまだかという感じで

のとじま水族館でも地震による被害があった。地震で地盤が下がったことで、建物との間には隙間や割れ目ができてしまった。

(稲垣)一番最初に被害の様子を見にこれたのはいつですか
(柳さん)震災が午後4時ぐらいにあったじゃないですか、大きな地震があって。そのあともまずみんな避難が先だったんで。とりあえず一旦お客様も上のほうに避難して、そこから館内に入れたのは夜遅かったと思うんですけどね。どこもかしこもやられているような状況だったので、これはもう全部壊れたかなっていうくらいの感じでしたね、最初の印象は
奇跡のヒラマサ
本館にある人気の「のと海遊回廊」では、天井が落ちるなどの被害があった。

(稲垣)その天井というのは
(柳さん)ここの上のほうです。これが上から水が漏れてきて一部落ちちゃって
(稲垣)のと海遊回廊っていえばのとじま水族館の目玉のひとつなんですけど
(柳さん)本当きれいだったんですけどね。その時はもう無残な姿になってましたね
(稲垣)今、気持ちよさそうに泳いでますけどね。当時は魚も厳しい状況だったですか
(柳さん)どうすることもできなくて、もう本当に。死んで浮くのをただ見ているだけしかないという感じでしたね
(稲垣)いわゆる仲間たちとの別れがあった中で、今こういう泳いでいる姿を見ると
(柳さん)ここまで復活できたなっていうのが。あの現状を見ているので、ここまできているとすごいなと感じますね
(柳さん)これだ(笑)
(稲垣)なんですか?
(柳さん)この水槽で唯一生き残ったヒラマサです。震災から1匹だけ生き残ったんです
(稲垣)え~
(柳さん)そうなんです、これだけ生き残ったんです
(稲垣)すごいですよね
(柳さん)1匹だけ

一際大きいのが奇跡のヒラマサの特徴だ。
待ち望まれるイルカショーの再開
大型の動物などはその命を守るため全国の水族館や動物園に避難させた。その動物たちも徐々にのとじま水族館へ戻ってきている。11月19日には福井県の越前松島水族館に避難していたカマイルカ2頭が帰ってきた。柳さんたちが担当しているイルカだ。そのイルカたちが活躍するプールは…。

(稲垣)まだ水張れてない
(柳さん)まだ張れていないですね。もう少しなんですけど、塗装が乾くのをちょっと待っている
(稲垣)これからに向けて準備は少しずつ整っている?
(柳さん)後は乾いて水張るだけです
(稲垣)今帰ってきたイルカはどちらに
(柳さん)トレーニングセンターに。プールで体調整えるために
(稲垣)元気でいる?
(柳さん)今元気でエサも食べている
(稲垣)餌やってるときどうでした
(柳さん)やっぱりこれこれって感じで。エサやりをやりたかったのはありますね
(稲垣)イルカのショー待ち遠しいでしょう
(柳さん)そうですね。いつになるかちょっと…全部のイルカが戻ってこないと何とも言えないので。個人的には待ち遠しいですね
(稲垣)だってお客さんがたくさんいて
(柳さん)そうですね。もう一回ここね、満員にしたいですね
(稲垣)ふるさとののとじま水族館でイルカとともに暮らしてきた20年。その飼育員としての魅力って
(柳さん)僕も頑張るんですけど、イルカもすごく頑張ってくれるんで、それをお客さんが喜んでくれるのが一番うれしいですね。一緒になって作り上げたものが形になったときってのは、それでお客さんが喜ぶとなおさら嬉しい。失敗するときもたくさんあるんですけど、うまくいってお客さんも歓声あげるとよかったと思いますね
(稲垣)その日々が戻ってきますよ
(柳さん)楽しみです

(稲垣)のとじま水族館、これからだんだん賑わいも取り戻していくと思うんですね。今後この水族館をどんな形にしていきたいか教えてください
(柳さん)今は歓声が聞こえないんで、なんとか歓声が聞こえるようにしたいなと思います
(稲垣)そしてのとじま水族館があるふるさと能登島についてはどんな思いがありますか
(柳さん)少しずついろんなところで復興し始めているので、まず水族館が復興して、それに続いていただければなと思いますけども
(稲垣)そんな形になっていくことを僕も一歩一歩また見ていきますので、今後ともよろしくお願いします
(柳さん)お願いします。どうもありがとうございました
カマイルカ全頭が水族館に帰還
神奈川県横浜市に避難していたイルカが12月5日夕方、到着した。横浜の八景島シーパラダイスに避難していたメスのカマイルカ5頭だ。のとじま水族館のカマイルカは地震の後、和歌山県にも避難していたが、これで11頭全てのイルカがのとじま水族館に戻った。
(石川テレビ)