なでしこジャパンは、ボールを持ったら仲間がいないところへ迷わず蹴る、という常識破りのパス回しを生み出して相手を翻弄しました。

仲間のいないところにボールを蹴るというのは恐怖を伴うことでしょう。仮に相手にボールを取られたら、一気にピンチに陥るかもしれません。普通であれば、無難に仲間がいるところにボールを蹴りたいと思います。

しかし、誰もいないところに蹴れば、最初に駆けつけた人がボールをキープできます。

女子バレーも合言葉に

それが味方の選手であれば、チャンスは拡大します。そして、人のいないところに蹴るというのはチームの仲間だけしか知らないので、チームメートを信頼して無人のスペースにボールを蹴り出せば、日本の選手が真っ先に駆けつけることができる可能性が高いのです。

佐々木監督が考え出した世界一のパス回しと称賛されましたが、あれはまさに「そうだね」で生まれた信頼関係がベースにあります。

まさにチーム一丸になって潜在能力を発揮した結果が優勝をもたらしたのだと思います。

女子バレーボール日本代表の中田久美監督に「先生、どうやったらチームが強くなりますか?」と聞かれたときも、「『そうだね』という言葉を合言葉にしなさい」とアドバイスしました。それ以来、日本女子バレーチームはチームが一つになって強くなりました。

『運を強くする潜在能力の鍛え方』(致知出版社)

林成之
日本大学名誉教授。脳科学をスポーツに応用し、北京オリンピック競泳日本代表の北島康介選手らの金メダル獲得に貢献。脳低温療法を開発し国際学会の会長も務めるなど、脳蘇生治療の第一人者としても知られる。著書に『<勝負脳>の鍛え方』(講談社現代新書)、『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎)などがある。

林成之
林成之

昭和14年富山県生まれ。日本大学医学部、同大学大学院博士課程修了。マイアミ大学医学部、同大学救命救急センターに留学。平成3年日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長に就任。27年より同大名誉教授。脳科学をスポーツに応用し、北京オリンピック競泳日本代表の北島康介選手らの金メダル獲得に貢献した。脳低温療法を開発し国際学会の会長も務めるなど、脳蘇生治療の第一人者としても知られる。
著書に『<勝負脳>の鍛え方』(講談社現代新書)、『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎)などがある。