兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦氏。パワハラ疑惑の告発問題をめぐり、25日、百条委員会で証人尋問が行われることが決まった。はたしてこの問題にどのように臨むのか。
また、SNSを活用したことで選挙の流れに大きな変化をもたらした今回の知事選挙。有権者はどのように見ていたのか取材した。

選挙戦の象徴キーワードは“SNS”や“分断”

18日午後、神戸市内の事務所で取材に応じた斎藤元彦氏。

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斎藤元彦氏:
(Q.何キロ痩せた?)3キロぐらい痩せましたかね。17日間は全ておにぎりで済ませていたので。今日(18日)のお昼は近くでそばを食べました、お店で久しぶりに。

パワハラなどの問題を告発され職員の約4割から「見聞きした」との回答が上がっていた前兵庫県知事の斎藤元彦氏。そんな県職員と再びどう向き合うのか。

再選から一夜明け、取材に対し斎藤氏は「感謝の気持ちと謙虚な思いをやはりもう一度抱いて、仕事は自分1人ではできるものではなくて職員の皆さんのサポートがあってできるものですし」と、“謙虚”という言葉を口にした。

その一方、「やっぱり今回民意を得て再び兵庫県知事選挙。民意を受けた立場でもありますから。一緒にやっていくということが公務員、地方公務員としての一応の責務でもある」と「民意を受けた立場」であることも繰り返し強調した。

SNSを通じて広がった支持も得て知事に返り咲くことになった斎藤氏。一方で、SNSの支持が広がるなかで、“パワハラ疑惑告発問題”に関する主張があった。

斎藤元彦氏:
本当にご自身一人一人がですね、XやYouTubeを見て調べておられる。何が真実で何が正しいことなのか。

記者の質問に、斎藤氏はこう述べた。

ーー終盤に入るにつれ文書問題について明確に否定される場面も多くなったような印象を受けた。発信の内容が変化した?

斎藤元彦氏:
特にそこは意識しなくて、演説はまさに自分ペーパーなしでやりますから。文書問題について少し触れさせていただくということも大事な一つのポイントだというふうに思った時に触れさせていただいたりしました。

さらに、県職員による告発文書問題そのものについてSNSで真偽不明の様々な主張が拡散し、選挙を通じ、支持派と反対派の間で大きな「分断」を生んだ。

これについて斎藤氏は、「分断」という言葉は適切ではないとしながら、次のように“持論”を展開した。

斎藤元彦氏:
それは候補者の主張や立場によって、意見や立場異なるということはもちろんなので、それは「分断」という言葉というよりもそれが「選挙」ですから、そこは選挙結果が示された後に、県を一つにしてやっていく責務が私にはある。

今後の焦点…県議会議員との向き合い方

また、一部のSNSで、テレビや新聞などの報道のあり方に不満が広がったことについては「メディアリテラシーというか、そういったことが問われた今回の兵庫県知事選挙だと思いますけども。私自身はメディアの皆さんとはこれまで通り、これからも一緒になってやっていきたいなと思っています。(Q.真実はSNSとメディアどちらにあると思うか?)私は別にどっちが真実があるないって言ってはないと思うので。一つのメディアがすべてではないはず」と語った。

返り咲きを果たす中、今後の焦点のひとつは、全会一致で不信任を突きつけられた、県議会議員との向き合い方だ。

日本維新の会 吉村洋文共同代表
日本維新の会 吉村洋文共同代表

大阪府知事で日本維新の会の吉村共同代表は、「この兵庫県知事選挙をめぐっては、いろいろ僕自身も思うところがあります。何事もなかったようにというのでは、筋は通らないと僕は思っています」と会見で話した。

兵庫県の百条委員会は斎藤氏が失職したことで“中断”していたが、まだパワハラなどがあったかどうかの結論は出ていない。

百条委員会は18日午後、25日の証人尋問で斎藤氏に出頭要請する事を決定
百条委員会は18日午後、25日の証人尋問で斎藤氏に出頭要請する事を決定

そんななか、百条委員会は18日午後、25日の証人尋問で斎藤氏に出頭要請する事を決定した。

“SNS時代の劇場型選挙”の勝者

知事失職からの出直し選挙で、斎藤元彦氏は、なぜここまで支持を広げることが出来たのか。

兵庫県の有権者は「自分が思ってたのと全然違う印象に途中でガラッと変わった」と心証の変化を語った
兵庫県の有権者は「自分が思ってたのと全然違う印象に途中でガラッと変わった」と心証の変化を語った

兵庫県の有権者は「SNSもずっとXとか見てて、なんか自分が思ってたのと全然違う印象に途中でガラッと変わったので。なんかすごい不思議な感じの知事選だったなってイメージ」と振り返る。

斎藤氏の再選に、大きな役割を果たしたとみられるのが“SNSでの情報拡散”だった。斎藤氏に投票した有権者に“心が動いた瞬間”について聞くと、「(Q.投票は?)行きました。特に演説見たりはしてないんですけど、Xに回ってきた、高校生とかが『斎藤さんのおかげで学校が綺麗になりました』、みたいなやつ。こういう人だからもう一回当選して兵庫県のためにやってくれるんじゃないか、みたいなの(動画)を見た」とスマホで動画の画面を見せて答えてくれた。

多くの人が見たという、学校施設の充実を斎藤氏へお礼する女子高校生の姿を捉えたSNSの動画
多くの人が見たという、学校施設の充実を斎藤氏へお礼する女子高校生の姿を捉えたSNSの動画

多くの人が見たというSNSの動画が、斎藤氏の街頭演説に現れ「学校の設備が良くなった」と涙ながらにお礼をしたという女子高校生の姿だった。

斎藤氏に投票した決定打について尋ねると、「ネットですね、ネットです。自分の生活の一部やし、ネットが。それを鵜呑みにしてるわけじゃないんですけど、一つの参考として取り入れてます」と答える人もいた。

さらに、「YouTubeで『斎藤元彦』って打つとメチャメチャ出てきて」といい、斎藤氏の街頭演説に多くの人が集まっているのを見て、「YouTubeを検索した」という人もいて、映像を見て心境の変化があったか兵庫県の有権者に尋ねると、「全く180度変わりました。パワハラとかおねだりとかよくないところばかり入ってきてたので。県民としては税金を正しいことに使って欲しいので、そっち(の公約)を信じようと思うようになりました」という意見も聞かれた。

今回の県知事選について専門家はこう指摘する。

法政大学大学院 現代政治分析 白鳥浩教授:
斎藤さんの(知事としての)資質を問う選挙から、最終的には、多く流れていく情報を信じるか。何を信じたいかという選挙に変わってきた。そうなってくると、より多くSNSを使って発信している方にとって有利になっていく。“SNS時代の劇場型選挙”というものを、斎藤さんが勝ち抜いたと言ってもいいだろう。

選挙戦はSNSにより様変わり

SNSにあがっている斎藤氏の動画について、斎藤氏に投票したという兵庫県の有権者(10代)は、

「最初から最後までまとめてくれるから、知らん身からしたらめっちゃ分かりやすい」と話した。

SNSにより関心度が高まった一方で、懸念も聞かれた。

ーーなぜ投票した?

兵庫県の有権者:

政策とか97%くらい達成しててすごいなと思って。

実際、斎藤氏が知事での実績を主張していたのは、自身の公約の98.8%を着手・達成したことだった。SNSで拡散された情報の“真偽の判断”について有権者からは、「SNSで広がったじゃないですか、それが信用できるかどうかっていうのはちょっと疑問だなと思います」という声も上がった。

7月の東京都知事選では石丸伸二氏がSNSを駆使した選挙戦で “石丸旋風”を起こし躍進するなど、選挙での重要性を増すSNS。都知事選に出馬した蓮舫氏は18日午前、自身のSNSに兵庫県知事選を念頭にしたとみられる投稿で、このように指摘した。

蓮舫氏のSNS:
ネットde(で)真実が広がり、それがあたかも事実となって拡散されたかのよう。なぜ再選挙になったのかが覆い隠された選挙だったのではないでしょうか。

投票率は55.65%と前回を大きく上回った兵庫県知事選。幅広い世代に注目を集めた選挙戦はSNSにより様変わりしようとしている。
(「イット!」11月18日放送より)

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