長崎県が“コロナ差別・誹謗中傷”専門の相談窓口を開設
新型コロナウイルスの感染者やその家族、そして感染者の周囲の人に対する、差別や誹謗中傷が全国各地で報告されている。
こうした中、長崎県は8月26日、新型コロナウイルスに関連した差別や誹謗中傷などの人権侵害に関する“専門の相談窓口”を開設した。
相談には原則、相談員(長崎県職員のOB2人)が電話で対応。月〜金曜日の午前9時〜午後5時45分まで、水曜日のみ午後8時まで受け付ける。
状況を聞き取って、解決に向けたアドバイスをし、内容に応じては関係機関に対応を依頼してくれる。
たとえば、「保育園の登園を断られた」といった相談が寄せられた場合は、長崎県の担当部局や各関係機関に連絡し、対応を依頼するなど、解決に向けた実効的な対応を実施するのだという。

30万円を限度に法的措置を支援
さらに法的措置などを希望する場合には、弁護士による相談も受けられる。
こちらは、1案件につき相談料が5万円まで無料。弁護士による相談の単価は30分で5000円なので、5時間まで無料という計算になる。
また、SNSなどに投稿された誹謗中傷の削除や、投稿者情報の開示請求などに必要な調査を弁護士に依頼した場合、その経費の2分の1について、30万円を限度に、長崎県が負担してくれる。

“ネットパトロールも実施予定”
また、相談員は相談に応じるだけでなく、SNSなどインターネット上での誹謗中傷の投稿を監視する“ネットパトロール”も実施する予定だ。
担当するのは、相談員の2人。
悪質な投稿を見つけた場合、その投稿を画像で保存。誹謗中傷の被害者が、投稿の削除を要請したり、訴訟を起こしたりする際に、その画像を提供するのだという。
コロナ差別や誹謗中傷が問題となる中、開設された“専門の相談窓口”。
開設から数日しか経っていないが、すでに相談はきているのか? また、それはどのような内容なのか? 長崎県の人権・同和対策課の担当者に話を聞いた。
感染者や医療従事者、その家族などへの誹謗中傷などの事案が発生
――このような相談窓口を開設した理由は?
長崎県内では新型コロナウイルスの感染者は200人を超えています。
そうした中、長崎県内でも、感染者のみならず、 そのご家族や周辺の方々、医療従事者やそのご家族などへの誹謗中傷、偏見や差別といった事案が発生しています。
このことは、感染者が誹謗中傷や差別を恐れて、行動歴などを隠すことを助長し、さらなる感染拡大にもつながりかねません。
また、医療従事者に対する誹謗中傷や不当な扱いは、退職を誘引し、医療体制の崩壊にもつながりかねないことです。
このため、「新型コロナウイルス関連誹謗中傷等相談窓口」を開設することにしました。
この相談窓口は、誹謗中傷や差別を受けた方々の相談を受け付け、解決に向けたアドバイスや関係機関との調整、弁護士による支援体制などを整備するものです。
「相談は数件きています」
――開設から数日しか経っていないが、すでに相談はきている?
相談は、8月27日現在で数件きています。
――それはどんな相談?
自分もしくは自分の周囲も感染していないけれど、感染したら、どのような誹謗中傷を受けるのか気になって、相談してくる方もいらっしゃいます。
ただ、相談者のプライバシーに関わるため、これ以上、詳しくはお話しできません。
開設翌日の段階で既に相談が寄せられている現状に、関心の高さや不安の大きさを感じる。コロナ差別や誹謗中傷が問題となる中、長崎県が開設した“専門の相談窓口”。同様の新型コロナ誹謗中傷等被害相談窓口は、長野県も26日に設置している。
感染拡大、そして医療崩壊などを防ぐためにも、さらに他の自治体でも開設されることを期待したい。
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