11月5日は国連が定めた「世界津波の日」。これにあわせて、高知・黒潮町で大地震の記憶を語り継ぐ地域の催しが約100年ぶりに復活した。大地震を体験した地域の人たちは今も鮮明に当時の状況を記憶していた。
安政の南海トラフ地震から170年
高知・黒潮町田野浦地区にある白皇(しらおう)神社の境内で、大地震の記憶を後世に語り継ごうという「大潮祭り」が行われた。
この記事の画像(9枚)県立高知城歴史博物館・水松啓太学芸員が「江戸時代以降に南海地震というのは3回起きています」と話すように、江戸時代以降に大地震は3つ発生した。
終戦の翌年1946年12月に発生したのが昭和南海地震。歴史上最大規模の巨大地震といわれる「宝永地震」は1707年。その約150年後、1854年の旧暦11月4日に発生したのが安政の東海地震。その翌日に安政の南海地震が発生した。
マグニチュード8.4と推定される安政の南海地震の被害は甚大で、大阪の街には津波が押し寄せ死者数千人と記録されている。
水松学芸員は「ペリー来航の翌年に起きた地震が、安政の南海トラフ地震になります。その地震から今年がちょうど170年目になります」と話す。
一度途絶えた祭り 今後は子どもにも
「大潮祭り」は、今から170年前の安政の地震の教訓を語り継ごうと、黒潮町田野浦地区で長く続いてきたが、昭和の初期に途絶えていた。
災害の歴史に関する企画展を計画している高知城歴史博物館の水松啓太学芸員が、国内で数カ所しか残っていないこの「大潮祭り」を知り、地区の人たちと協力して約100年ぶりに復活させた。
11月5日は地区の人など30人ほどが集まり、昭和の南海地震を知る人たちがその体験を語っていた。
昭和南海地震を体験した94歳の女性は「津波が来たのよ、津波が来てね。ちゃぷりちゃぷり来たけ、逃げれたけどね。パーッと、引くには、パーッと引いてしもうた」と津波の恐ろしさを語った。
90歳の男性は「揺ったがは、寝よって、あんまり知らんけんどね。みんなが家の前で、団子になって転びよったぜ。親戚が上(高台)にあるけんね、そこへ行けゆうて、妹を背負うていったことやった。暗がりで歩いて」と、昭和南海地震が発生したときのことを今でもはっきり覚えている様子だった。
100年ぶりに復活した「大潮祭り」。地域の人たちは大地震の被害と教訓を語り継いでいこうと、2025年以降の祭りの継続に意欲的だ。
昭和南海地震を体験した90歳の男性は「これを続けていってもらいたいね。知ってもろうちょいた方が被害も少のうてえいと思うがね。言うちゃらな、知らんけんね」と地震の教訓を次世代に伝える重要性を強調した。
今回は平日の開催だったが田野浦地区の山本勝也区長は、今後は土日に行い子どもたちにも参加してもらいたいとしています。
(高知さんさんテレビ)