繁華街などでよく見かける落書き。犯罪行為であるばかりでなく景観を損なうなど社会問題ともなっているが、福岡でも街のさまざまな場所に落書きが点在している。
アルファベット「LivLA」とは
「汚れてるし、汚いなと思います。不快です」「外国の人とかにイメージがよくないと思いますので、無い方がいい」等々、街の人々も迷惑、不快に感じている落書きだが、なかでも或る特徴的な落書きが福岡では目に付く。
この記事の画像(10枚)アルファベット5文字の「LivLA(リブラ)」と書かれた落書きだ。福岡市内の至る所で見かける。
いったい誰が、何のために書いているのか? 都市問題が専門の東京都市大学の小林茂雄教授は「ニックネームではないか」と話す。さらに「この落書き、福岡で発祥しているといわれていて、福岡近隣と、あと神奈川県。かなり多くの所に書かれていると聞いています」と続けた。全国各地で目撃されるLivLAは、福岡で書かれ始めたのではないかと小林教授は推測しているのだ。
また小林教授は「LivLAは、落書きの書く場所がほかのグラフィティ(落書き)と少し違っていて、細かな文字を標識の裏とか自動販売機の横とかに書く。そして発見した人たちが真似て書き始めることによって、どんどん広まっていったんじゃないか」と話す。
落書きが書かれた場所を調べると…
専門家もその特殊性を指摘する謎の落書きLivLA。この落書きが書かれたビルに入居する店の人は「よく見たら、みんなが窓から、もしくは無理やり書いている」と話す。落書きが書かれた場所は、窓から身を乗り出さないと書けない場所なのだ。
そして「綺麗じゃないですね。ヴァンダリズム(破壊行為)かな。客が店に入りにくいかも」と困惑した表情を見せた。
落書きが書かれた界隈は、いったいどんな界隈なのか? 書かれやすいとされる場所を調べると未明の人通りはかなり少ない。繁華街にも関わらず1時間に数人しか通行人はおらず、監視の目がほとんどない場所のようだ。
1つ消すだけでも10分の時間が…
LivLAに頭を悩ませているのは飲食店関係者だけではない。落書きが多い福岡市・天神の通称「親不孝通り」で16年間、落書きを消している飛永真言さんは「5年ぐらい前に落書きグループが解散して、解散してからは、汚す落書きになってる」と実情を話す。
落書きを消すのは大変な作業なのだ。スプレーなどで書かれる落書きは犯行時間も短く、その分、数も多いため一筋縄には行かない。
「色を塗っている壁もあるけど、ギザギザしてるから簡単に消せない」と落書きを消し始めた飛永さん。壁面の材質によっては、剥離剤をかけると傷んでしまうものもあるため、注意しながらの作業になる。1つ消すだけでも10分近くかかる。
取材を担当した記者も落書き消しに参加したが「腕がつりそう。結構、跡が残る」とかなり骨の折れる作業だったと話していた。「町が汚くなると来られる方もあまり気持ちがよくない。お店の繁盛とかも考えるとやっぱり町は綺麗でないとね」と飛永さんは作業を続ける。
難しい「芸術」と「犯罪」の線引き
落書きを建造物などに書く行為は、器物損壊罪や建造物損壊罪などに問われる可能性があるれっきとした犯罪行為だ。しかしその一方で落書きに分類されるバンクシー(素性不詳のアーティスト。社会的批評の強い作風が特徴)のアートが高値で取引されたり、落書き出身の日本人アーティストが世界で活躍したりしている例もある。そうした状況も踏まえ落書きが多い親不孝通りでは、2023年に世界で活躍するアーティストの作品を合法的に描くことで落書きを防ぐとともに後発のアーティストの育成に努める取り組みも行われた。
「芸術」と「犯罪」の線引き。かなり難しい問題だが、芸術性如何に関わらず、落書き行為が違法行為であることに変わりはない。全国に数多くある落書き。各地で波紋を呼んでいるようだ。
(テレビ西日本)