人口が減少している地域では外国人労働者が欠かせない存在になっている。半数以上を外国人労働者が占める建設現場も。住宅の提供などが必要なため、日本の新卒者を雇うより費用がかかるケースもあるという。
人口減少で「在留外国人」急増
15歳から64歳までの「生産年齢人口」は、日本では30年後には約2100万人まで減少すると見込まれている。
この記事の画像(18枚)このうち佐賀県では人口が80万人を下回り、生産年齢人口の減少も加速している。佐賀で暮らす在留外国人は9700人あまり(2023年末時点)。人口減少を背景に全国3番目の勢いで急増しているのだ。
在留外国人は佐賀県内20市町すべてで増加している。多くを占めているのは、日本で技術を習得し母国に持ち帰る「技能実習」と、人手不足が深刻化する業種で活躍してもらうため5年前に導入された「特定技能」で日本に来た外国人だ。
技能実習の目的はあくまで「国際貢献の実習」。このため転職や在留期間の延長はできない。
一方、特定技能は「就労」が目的であるため、技能を磨けば様々な制限から解放される。
また業種ごとに決められた条件をクリアすると、技能実習から特定技能へ移行することも可能になる。
半数が外国人労働者の現場も
佐賀労働局職業対策課の高尾正昭課長は「県内は人手不足感が強いので、とにかく外国の方を雇わざるを得ない状況になってきた」と現状を説明する。
フィリピン、マレーシア、インドネシアなどからの外国人が半数を占めるマンション建設現場も多い。
「外国人労働者の方が高くつく」
佐賀・小城市の大久保鉄筋工業も従業員の半数近くが外国人だ。9年前に技能実習生1号として迎え入れたベトナム人の2人は、県内の建設業ではじめて特定技能2号を取得した。
大久保洋次社長は「残業や日曜出勤で従業員に負担がかかっていて、どうにかならないかと思い外国人を雇い入れることを決めた」と話す。
しかし、外国人労働者を雇うことが人件費の削減につながるわけではない。
大久保社長は「住居などを最初に用意しなければならない。外国人の方が日本の新卒者を雇うより高くつく」と人手不足の厳しい現状を語った。
この会社では現在、インドネシア、ベトナム、ミャンマーから受け入れた計18人の外国人が働いている。
日本で働く外国人労働者の事情や気持ちはどうなのだろうか。
外国人労働者の事情と思いは…
2023年、日本の鉄筋技能の検定で一級に合格し特定技能2号を取得したベトナム出身のヴォ・ヴァン・ハイさん(31)。特定技能2号になり事実上の永住権を獲得。家族と帯同が認められ、2カ月前にベトナムから妻と2歳の子どもを連れてきた。
Q.なぜ日本に来た?
ヴォ・ヴァン・ハイさん:
海外で働いてみたいと思い日本と縁があって日本を選んだ。親孝行が少しでもできたらうれしい。ここで稼ぎたい
日本に来て1年目は言葉の壁もあり、仕事も生活もきつかったという。
素早い手つきで鉄筋を固定している男性。こちらもベトナム出身のヴォ・ヴァン・チェンさん(31)。同じく特定技能2号を取得した。
Q.なぜ日本に来た?
ヴォ・ヴァン・チェンさん:
日本は発展した国ですね。技術も高い。いい国と思った。きれいな国。家族のために日本で働きたい
日本社会に溶け込む外国人労働者
半数以上が外国人労働者のマンション建設現場で働く日本の大工は「(外国人は)一生懸命やりますよ」と話す。
休憩時間には日本語で談笑する姿が見られ、この会社では日本人と外国人のコミュニケーションはうまくいっているようだ。
午後6時に仕事を終え寮に帰る。ベトナムから来た男性は「仕事が終わってみんなでご飯食べるのが楽しい」と笑顔で話す。
この日は2カ月前に来日したヴォ・ヴァン・ハイさんの妻ハインさんが腕をふるったベトナム料理でパーティー。仕事の疲れを癒しながら賑やかで楽しいひと時を過ごした。
日本の気候や文化への戸惑いはあるが、仕事の不満を口にする外国人はほとんどなく、「働くことがたのしい」「日本に来てよかった」と口をそろえる。
人手不足を背景に、外国人労働者は日本の社会に溶け込みつつある。
(サガテレビ)