大山先生はもちろん将棋もめちゃくちゃ強かったですが、このような盤外戦術も長たけていたと言われています。

そして現代でも「二度負かされる」棋士がいます。それが藤井聡太竜王名人です。藤井先生が盤外戦術で精神的優位に立っているわけではありません。もっと恐ろしい負かされ方です。それは読みの量です。

対局中悩んだ一手がすべて相手の思考の範囲内で、相手から代替案で挙げられた一手が自分の思考外の良い手だったらどう思いますか?

「こいつには勝てない」

そう思いますよね。それをやってしまうのが藤井先生です。実際に負けた棋士のインタビューで、感想戦で改めて強さを実感したと答える棋士がいました。

もちろん藤井先生は相手を貶めるためにやっているわけではありません。純粋に自分が思ったことを伝えているんだと思います。ただ、僕が対局者だったら、「悪い人でもないし将棋も強いし、なんだよこいつ……付け入る隙ないじゃん!」って思っちゃいます。

そんな対局中では語られなかった棋士の思考が垣間見える感想戦も、ぜひ観戦してみてください。

『知るほど観たくなる将棋 ドラマティック将棋論』(扶桑社新書)

寺内ゆうき
お笑いコンビ「ランパンプス」。2013年、楽屋で先輩に誘われた将棋でボロ負けしたことをきっかけに将棋の勉強を始める。年間のプロの将棋観戦は1000局以上。YouTubeチャンネル「よしもと将棋芸人と金チャンネル」を開設し、将棋を知らない人にもわかりやすく将棋の魅力を伝えるための動画の企画・出演・編集を担っている。

寺内ゆうき
寺内ゆうき

1987年生まれ、千葉県出身。吉本興業所属の芸人。
小中高の教員免許(中高は理科専攻)を大学時代に取得し、その後、独学で保育士資格も取得。芸人界初の0歳から18歳まで教育できる芸人になる。
2013年、楽屋で先輩に誘われた将棋でボロ負けしたことをきっかけに将棋の勉強を始める。年間のプロの将棋観戦は1000局以上。タイトル戦の前夜祭や大盤解説などのイベント、各地の将棋道場や将棋バー・将棋カフェにも足を運び、その知識はプロ棋士でも取得が難しいとされる将棋文化検定2級を取得するまでに。
現在は、子供向けに将棋を楽しむワークショップを催したり、将棋イベントを主催するほか、吉本興業に将棋部を立ち上げ、関東将棋ブ!の部長を務める。また、YouTubeチャンネル「よしもと将棋芸人と金チャンネル」を開設し、将棋を知らない人にもわかりやすく将棋の魅力を伝えるための動画の企画・出演・編集を担っている。