まれに見る大接戦が繰り広げられているアメリカ大統領選挙は、日本時間の午後8時に投票が開始される。初の女性大統領の誕生か、あるいは返り咲きか…2人の大統領候補は勝利の鍵を握る激戦州ペンシルベニアで深夜まで“最後のお願い”を繰り広げた。
民主党のハリス氏と共和党のトランプ氏。「エネルギー」「経済政策」「紛争」についての双方の主張から見えてくる、“日本への影響”を風間晋・フジテレビ解説委員が解説する。

民主党・ハリス副大統領(60)「勢いに乗っている」

「投票まであと1日だ。勢いに乗っている、勢いは私たちの味方だ」

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アメリカ史上初の女性大統領を目指す、民主党のハリス副大統領(60)。選挙戦最終日は、勝敗を左右するといわれる最大の激戦州・ペンシルベニアの4カ所で演説を行った。

日本時間の5日午前11時過ぎから行われたハリス氏の演説では、「投票する準備はできていますか?(歓声)勝つ準備はできていますか?(歓声)」「私は意見の異なる人の話に耳を傾けます。意見の異なる人を敵だとは思いません。それどころか、意見の違う人には話をする場所を与えます。これが本当のリーダーのすることです。強いリーダーのすることです」とトランプ前大統領との“違い”を強くアピールした上で、「国が政党や自分自身より上である、そしてアメリカの全ての人のための大統領になると誓います」と続けた。

日本時間の午後1時頃から始まった最後の演説の直前には、世界的な人気歌手・レディ・ガガさんが登場。

「アメリカに祝福あれ 我が愛する国よ」
アメリカの愛国歌「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌うと、「私は全てのアメリカ人のための大統領となる人に投票する。明日、全ての声を確実に届けましょう。さあ行こう!」と大きな声を上げた。

ハリス陣営は、最終演説に3万人が集まったと発表した。

共和党・トランプ前大統領(78)「金はいらない。ただ1票を投じて」

一方、“ヤングマン”のメロディーに乗せてダンスを披露したのは、130年ぶりの“返り咲き”を目指す、共和党のトランプ前大統領(78)。

「皆4年間待っていた。この日だけは投票に行ってくれ。金はいらない。ただ1票を投じて欲しい」

7つの激戦州のうち、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ミシガンの3つの州をまわり、トランプ氏が訴えたのは、「カマラ(ハリス氏)!おまえはクビだ!ここから出て行け!おまえはクビだ!」というハリス氏への批判だった。

「カマラ・ハリスは物価の高騰や、経済的な苦痛、海外の戦争や混乱、これまでに見たこともないようなアメリカ南部の国境への侵入を招いた。彼女は大惨事だ!カマラの4年間はアメリカの労働者、自動車産業を始め、全ての労働者に経済的な地獄しかもたらさなかった」

バイデン政権での経済対策や移民対策などを猛烈に批判した上で、「カマラが壊したものを、自分が直す!」と発言すると会場からは“USAコール”があがった。

「エネルギー」「経済政策」「紛争」…日本への影響は?

アメリカ大統領選、投票開始まで数時間だが、トランプ氏か、ハリス氏か…どちらが選ばれるか次第で日本にいる私たちの暮らしにも影響も出てくる可能性がある。それは、どういった影響なのか?フジテレビ解説委員で、元ワシントン支局長の風間晋が解説する。

日本時間5日正午時点の世論調査では、「青」が…ハリス氏優勢の州 「赤」が…トランプ氏優勢の州で、選挙人538人の過半数270人を獲得した候補が勝利ということになるが、ペンシルベニア州、ジョージア州など「グレーで黄色の斜線」で示した7つの激戦州(計93人)が結果を左右すると言われている。211対219で、トランプ氏がリードという調査もある。

どちらが大統領に選ばれたら、日本に良い影響があるのかーー。

民主党のハリス氏と、共和党のトランプ氏。日本に影響してきそうなのは「エネルギー」と「経済政策」「紛争」の3点。
これらについての双方の主張から見えてくる日本への影響を見ていく。

【エネルギー】
ハリス氏
▼EV促進を継続
▼再生可能エネルギー投資継続
トランプ氏
▼EV推進の撤回
▼化石燃料の生産拡大

【経済政策】
ハリス氏
▼大企業・富裕層への増税
トランプ氏
▼法人税引き下げ
▼円高・ドル安 目指す

【紛争】
ハリス氏
▼ウクライナ支援継続
トランプ氏
▼ロシアのウクライナ侵攻「戦争を終わらせる」

青井実キャスター:
「エネルギー」EV・電気自動車を巡っては対立している?

宮司愛海キャスター:
ハリス氏は、バイデン政権から引き続き、電気自動車(EV)にしていこう!という姿勢。
一方トランプ氏は、バイデン政権の目玉だった「ガソリン車を完全にEVに置き換える政策」を撤回して、化石燃料、石油・天然ガスの開発を促進、価格を引き下げるとしていて、2人の意見は真逆になっている。

青井実キャスター:
風間さん、このエネルギーの政策の違い、日本の経済にも影響しそうでしょうか?

風間晋・フジテレビ解説委員:
トランプ氏は環境よりもビジネス重視の立場。バイデン大統領の時に再加盟したパリ協定を再び脱退する可能性もある。トランプ氏は化石燃料を掘りまくると発言していて、それが日本にも安く輸出されれば、日本のガソリン価格が下がる可能性もあり、影響が出てくるかもしれない。

青井実キャスター:
続いては「経済政策」です。

宮司愛海キャスター:
ハリス氏「大企業・富裕層への増税」していくとする一方で、トランプ氏は「法人税」を引き下げて“円高・ドル安”を目指すとしている。

風間晋・フジテレビ解説委員:
トランプ氏は貿易赤字が大嫌い!第一期がそうだった。
アメリカ企業が輸出で稼ぐにはドル安・円高が必要で、それは日本の自動車産業にとってマイナスになってくるので心配。

青井実キャスター:
続いては「紛争」です。

宮司愛海キャスター:
ハリス氏は、ロシアが侵攻を続ける「ウクライナ支援継続」。軍事支援継続を訴え、地対地ミサイルなどを供与してきたバイデン政権の政策を踏襲する構えです。
一方のトランプ氏は、自分が大統領になったら「戦争を終わらせる」と自身のSNSに投稿しています。

風間晋・フジテレビ解説委員:
ハリス氏も戦争は終わらせたい。今はバイデン政権の副大統領という立場があるので、バイデン氏の政策を否定するようなことは言えない。
一方でトランプ氏は「打ち方止め!」と言うことはできる。その後に正義はあるのか、あるいは人権に対する配慮はあるのか、生活は回復するのか、というところが全く見えない。新しい問題がすぐそこにある、という状況にしかならない気がします。

最後に笑うのはトランプ氏か、それともハリス氏か…まれにみる大接戦となっているアメリカ大統領選挙。投票は日本時間の5日午後8時に始まる。
(「イット!」 11月5日放送より)