にもかかわらず、ファンの非難の声に、「このままではイカン」と手を打った結果、退任してもらう方向で話を進めたのでは、この先、誰が監督をやっても同じような結果になるのは目に見えている。

江本さんが考える中日の打開策

だからこそ私は考える。

仮にフロントが、「今のチームは低迷している。この状況を打開する方法として、勝つためのプロセスを築き上げられる人を新監督に据えよう」と考えているのであれば、2~3年は低迷したって辛抱できるはずだ。

なぜなら監督に据えた意味が明快だし、そうした考えで選んだのであれば、「こうしてチームをよくしていこう」という信念が感じられる。ちょっとやそっとファンから非難されたって、動じる必要はない。

それさえできなかったということは、「立浪」というネームバリューにあやかって、「ファンがドームに大勢足を運んでくれるようになるだろう」という一方的な期待を膨らませただけだったからだ。

そして、「現役時代は素晴らしい選手だった。監督としてもきっと試合展開を読んだ采配をしてくれるだろうし、選手も育成してくれるだろう」と、あくまで願望にすぎないことを押しつけた結果ともいえる。

この先、ドラゴンズを強くしたいというのであれば、決して監督任せにしてはいけない。でなければ、同様の事態が再発する。

信念をもって、「こういうチームにしていくべきだ」という未来図を描く。そうすれば低迷していようとも、ファンの声にいちいち反応することは減ってくるんじゃないか。

『ミスタードラゴンズの失敗』(扶桑社新書)

江本孟紀
現在はプロ野球解説者として活動。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える

江本孟紀
江本孟紀

1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。