にもかかわらず、ファンの非難の声に、「このままではイカン」と手を打った結果、退任してもらう方向で話を進めたのでは、この先、誰が監督をやっても同じような結果になるのは目に見えている。
江本さんが考える中日の打開策
だからこそ私は考える。
仮にフロントが、「今のチームは低迷している。この状況を打開する方法として、勝つためのプロセスを築き上げられる人を新監督に据えよう」と考えているのであれば、2~3年は低迷したって辛抱できるはずだ。
なぜなら監督に据えた意味が明快だし、そうした考えで選んだのであれば、「こうしてチームをよくしていこう」という信念が感じられる。ちょっとやそっとファンから非難されたって、動じる必要はない。
それさえできなかったということは、「立浪」というネームバリューにあやかって、「ファンがドームに大勢足を運んでくれるようになるだろう」という一方的な期待を膨らませただけだったからだ。
そして、「現役時代は素晴らしい選手だった。監督としてもきっと試合展開を読んだ采配をしてくれるだろうし、選手も育成してくれるだろう」と、あくまで願望にすぎないことを押しつけた結果ともいえる。
この先、ドラゴンズを強くしたいというのであれば、決して監督任せにしてはいけない。でなければ、同様の事態が再発する。
信念をもって、「こういうチームにしていくべきだ」という未来図を描く。そうすれば低迷していようとも、ファンの声にいちいち反応することは減ってくるんじゃないか。

江本孟紀
現在はプロ野球解説者として活動。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える