9月21日に発生した奥能登豪雨では、仮設住宅222戸が床上まで水に浸かった。
元旦の地震で被災し、避難所での生活を経て、家財道具を揃え日常を取り戻そうとしているさなかの豪雨。住民たちは発生から1ヵ月が経った今も、先が見えない暮らしを続けている。

仮設住宅が床上浸水の被害に

輪島市門前町の浦上地区に住む吉村セツ子さん。住んでいた仮設住宅は先月の豪雨で床上浸水した。吉村さんが豪雨発生当時の様子を、記者に話してくれた。

吉村セツ子さん:
一瞬、「あっ」て言っている間に堤防を越えて(水が)こっちに来たから、怖いと思う暇がなかったもんね、一瞬やから…
水は床上までギリギリ入った。敷いてあったカーペットはダメになったし、下は泥がいっぱいたまったし…ここ(仮設住宅)に住んで落ち着いたなと思っていたらね。

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地震の前にはおよそ430人が暮らしていた輪島市門前町の浦上地区。
元日の地震で門前町は最大震度7を記録し、地区の住民は避難所での生活を余儀なくされた。
吉村さんも住んでいた家が全壊し、2ヵ月以上避難所に身を寄せた後、仮設住宅に入居。ようやく落ち着いた生活を始めた中での豪雨災害だった。

ボランティアの助けを借りて住める状態まで掃除したものの、それで解決とはならなかった。見る限り、住むには問題はなさそうだが、床下に流れ込んだ汚泥が問題となったのだ。
市が仮設住宅の復旧工事を行うことになり、住民は一時、部屋を出なければならなくなった。

吉村さん:
住むのには大丈夫なんだけども、下にたまっている泥が臭ったり、虫が出たりするから。今、床をめくって消毒するっていう話なんだけど…
荷物を置くところもないし避難する場所も決まっていないし。夜眠れんし、心配で。

再びの避難生活に戸惑いの声も…

10月16日。
浦上公民館では、仮設住宅に住む人たちへの説明会が開かれた。
参加した住民はおよそ50人。説明会では市の職員から住民に、床板をはがして泥を出すため2週間ほど、近くの小学校に避難してもらうことなどが伝えられた。

住民:
少ししか床下に泥がないけど、避難しなきゃダメなんだと。床の中にシートが張ってあってそれを変えなきゃダメ。部屋の片方ずつで工事してくれりゃいいけど、そんなわけにはいかないっていうし。みんな荷物を出さないと行けないでしょ。大変やわ…

住民の中にあったのは、再び住む場所を追われることへの、複雑な感情だった。

吉村さんの息子、昌巳さんも…。

吉村昌巳さん:
また避難所での生活を強いられることに、納得はしていない。今でも住むのに支障ない。菌が出てからじゃ遅いんだろうけど、今のところ体調を崩した人もいないから…

昌巳さんが仮設住宅へ戻り、母のセツ子さんへ避難の計画を説明をする。
「11月12日に出るから避難は12日から28日」
「夜、弁当。朝はパン、昼は炊き出し」
再び始まる避難所生活では、温かい食事をとることも難しくなってしまう。

更に、部屋を出るときには、家具や家電を全て運び出さなければならない。
「片づけにボランティアはいる?」
「頼めばいいんじゃない、ぼちぼちちょっとずつ片づけて…」
高齢化の進んだ住人にとって、荷物を運び出すのは誰かの手を借りる必要があった。

吉村セツ子さん:
説明聞いて安心したしこれですっきり。すっきりしたって言ったら変だけど、決まって良かった。モヤモヤってした気持ちでいるのが一番疲れるからね。

吉村さんが望んでいるのは、ただ、住み慣れたこの場所で安心して暮らすことだ。

吉村さん:
1番大事なのは人間関係。(ほかの場所に移ったら)それに疲れると思う。だからここにいれば、みんな知った人ばっかりだからそれだけ気楽。たまに畑も覗いたりできるし…

翌日、仮設住宅では復旧工事が始まった。工事が終わるのは12月中旬。
ただ、住み慣れたこの土地で暮らしたい、それだけなのに自然災害は尾を引いて、被災地に暮らす人々を翻弄する。
工事が終わるまで、住民たちの生活が落ち着くことはない。

(石川テレビ)

石川テレビ
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