「街頭ビジョンのプロジェクトは、東口地区の活性化を目的とするためのクロス新宿ビルからのオーダーでした。6案出しました。岩に打ちつける雨などのアート系に加えて、手描きの猫も滑り込ませたんです」と、山本さん。

いわば「おまけ案」だった、その猫案が「面白い」と採用された。

SNSで見つけた“理想の猫”

さまざまな猫での作画が何ヶ月も繰り返される。だが、どの猫も山本さんにはピンとこない。そこに住んでいるという存在感をもっと強く打ち出したかった。

だが、「こんな猫」というニュアンスは言葉ではCGデザイナーには伝わりにくく、「では、理想の猫はこれだと、提示してください」と返された。

猫好きの山本さんは、以前からいろいろな猫の写真をSNSで見まくっていたのだが、街頭ビジョンの猫制作にあたり、来る日も来る日もSNSの猫写真を見まくる日々が数ヶ月続く。

そんなある日流れてきたのが、一枚の三毛猫の写真。目が釘付けになった。

灯りの下、パソコン脇にドサッと体を投げ出し、人を食った表情の三毛猫がこっちを見ていた。キャプションには、「ほくそ笑む猫」とある。

ほくそ笑む、夜のナツコ
ほくそ笑む、夜のナツコ

その猫は、常日頃山本さんが一番の猫の魅力だと感じている「根拠のない自信に満ちた強気」をまさしく体現していた。