閉店した老舗洋食店の味を受け継ぎ、秋田市で店を始めた料理人がいる。持ち前の探求心で料理だけでなくサービス面の進化にも情熱を注ぎ、地域密着型のアットホームな店を目指す男性の思いを紹介する。

12年修行し古巣の秋田へ帰郷

秋田市外旭川にある「食堂ぽめ。」。旬の食材を生かした創作料理が楽しめるレストランだ。

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この店を経営しているのは、石井文弥さん(38)。幼い頃から料理好きだった石井さんは、東京や仙台市の洋食店で約12年修行し、2018年に古里の秋田に戻ってきた。

帰郷後、秋田市大町にあった老舗レストラン「銀河館」で料理を作っていたが、コロナ禍の2021年に銀河館が閉店したため、これまでの経験を生かして自分の店を開くことを決意した。

石井さんは「秋田に戻って来て、自分でタイミングをみて店を始めたいなと思っていた。そのときちょうどコロナ禍だった。繁華街ではなく離れた場所で店をやれれば、地域密着型みたいな感じで集客も見込めるし、地域の人に気軽に来てもらえるような、そんな店にできればいいなと思ってやっている」と話す。

地域に密着したアットホームなレストランを目指して始めた「食堂ぽめ。」。気になる店名の由来を聞くと、石井さんは「私の昔のあだ名です」と教えてくれた。中学生の頃のニックネームで、親しみやすく呼びやすい店にしたいと「ぽめ」と名付けた。

食べ応え抜群!「秋田県産豚スペアリブ」

そんな「食堂ぽめ。」の自慢のメニューが「秋田県産豚スペアリブ」だ。

元々このスペアリブは、石井さんが料理人を務めていた銀河館の名物メニューだった。石井さんは銀河館の常連客が「もうスペアリブが食べられなくなる」と惜しむ姿を見て、独立後にその味を受け継いだ。

「ファンの客がいっぱいいたので『ここに来れば、あのときのスペアリブが食べられる』ということと、自分としてもこの店で新しく看板メニューにできると思った。若干ソースや火入れなど改良している部分はあるが、引き継いで看板メニューとして出している」と石井さんは話す。

老舗の味を受け継ぎつつ、石井さんが進化させたスペアリブ。肉は肉厚な県産の豚を使い、まずはじっくりとオーブンに入れ、こんがりと焼き上げる。そして、ショウガやしょうゆ、砂糖をベースにしたソースで甘く味付け。最後にバターで風味とコクを加えて完成だ。かめばかむほど肉のうまみが広がり、食べ応え抜群の一品となっている。

料理を出したときに、ビジュアル(見た目)で驚かれるという看板メニュー。ボリュームがあり、酒にも合うので、結構満足してもらっているという。

「食堂ぽめ。」では、エビ尽くしのパエリアも人気だ。殻ごと食べられるソフトシェルシュリンプと貝などを使った濃厚なスープでコメを炊き込んだ料理は、食べるたびに魚介のうまみが口いっぱいに広がり、スプーンが止まらない。

「本当に感謝の念しかない」

店を始めて3年。試行錯誤を重ねる石井さんの支えとなったのは、師と慕う銀河館の元オーナーの励ましだ。

石井さんは元オーナーについて「私のことを理解してくれて、後押ししてくれる人。いまでも仲良くさせてもらっているが、本当に感謝の念しかない」と語る。

季節ごとの新作メニューにも挑戦するなど、料理への探求心が尽きない石井さん。「目標は、このまま変わらず地域の人に愛される店を目指しつつも、変わるところといえば料理や酒、サービスなど進化できるところは進化させていきたい」と今後の展望を語る。

石井さんの技が光る料理の数々が楽しめる「食堂ぽめ。」。9種類以上の総菜が楽しめるオードブルの予約も公式SNSなどで受け付けている。

石井さんはこれからも、真心を込めたおいしい料理で地域の人々を笑顔にしていく。

(秋田テレビ)

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