衆院総選挙が公示日を迎えた。公示日の主要政党の動きは、特に各党代表・総裁はどこでどのような内容の第一声を発したのか。「BSフジLIVEプライムニュース」では識者を迎え、獲得議席数や注目選挙区の行方について分析した。
「第一声」から演説内容はどう変化していくか
竹俣紅キャスター:
10月27日の投開票に向けた12日間の選挙戦がスタート。各党の党首らは街頭に立ち有権者に支持を訴えた。各党党首の第一声をどう見たか。

久江雅彦 共同通信特別編集委員:
世論調査では景気、物価、経済が一番大きなテーマだが、立憲民主党の野田代表の第一声に象徴されるように、自民党の政治とカネの問題が一つの大きな軸。選挙では自民党政治の是非はどうしても大きな柱になる。各紙世論調査でも、6〜8割近くの人が投票時にこの問題を考慮すると言っている。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
各党、政治とカネへの言及が目立つ。当然クリアにしていかなければいけないことは大前提だが、国難が山積し世界でも分断が進んでリスクが高まる中、国民の命をどう守るのかという具体策はどうしても聞きたい。

反町理キャスター:
メディアとして、第一声の切り取り方はものすごく微妙。各党は政治とカネの話ばかりではないし、石破総理もお詫びだけしていたわけではない。例えば参政党の神谷代表は「『政治とカネ』じゃない」と言うが、そこは放送されない。実際に均等な時間を切り取るとそうなってしまう。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
国民からもメディアのあり方については指摘がある。私達もより多くの材料を提供できる新しい方法を編み出していかなければ。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
ネットが発達し誰でもすぐ各政党の公約を見られる。今回なら各党首の第一声を最初から最後まで大方見られると思う。そういう方法で情報を入手し、各人が判断していくしかないと思う。
反町理キャスター:
具体的な政策の部分が有権者に伝わらないまま12日間が終わってしまう危険性はないか。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
まずは国民が怒っていることに対して反省のメッセージが必要。ただそれは怒りに対する回答であり期待に対する回答ではない。政治家は有権者に接している。それは国民とのあうんの呼吸、舞台と観客の掛け合い。国民が許してくれなければ、毎回冒頭に時間を使ってわびなければいけない。もうわかった、となれば次に進む。そこはケースバイケース。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
自民党にとって今回は明らかに守りの、どれだけ議席減を減らすかという選挙。これを超えるだけの光る部分を見せられるか。例えば防災省を作るかどうかは別としても、能登半島の復旧・復興などを含めた防災関連の話には一定の説得力があるのでは。

反町理キャスター:
野田さんの第一声は、自民党から非公認となった萩生田光一さんが立候補している東京24区の八王子。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
今回は公認がなく絶体絶命のところに正面からパンチを受けた。だがこの選挙区では野党側も一本化できておらず、勝機ありとして引き締まる面もあると思う。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
想定範囲内のことで、僕が萩生田陣営なら屁でもない。マスコミに注目される中、他の野党を連れて4〜5人で八王子に来るような想定外のことをされれば戦々恐々とするが、野田さんだけで何か変わる気はしない。
自民の単独過半数は可能か、自公で過半数か
反町理キャスター:
今回は内閣発足から戦後最短となる8日後の解散で、26日後の投開票。自民党としては負けが一番少なくなる選択肢か。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
その通り。石破さんが言ったように予算委員会で論戦すれば野党の見せ場をどんどん作ることになる。

岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
もう一つの理由として、2025年は参議院選挙のある特殊な年で国会の会期を延長できないため、召集日が非常に早い。2024年末に予算編成などの議論の時間を取るためにはこの日程しかない。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
非・反自民票が一本化されれば自民党は多くの選挙区で大苦戦する。一本化させないうちに選挙をやってしまうことには、それなりの効果はあったと思う。

竹俣紅キャスター:
衆議院の定数は465、過半数は233。解散時の自民の議席数は258だったが、10月15日の公示日時点での自民が確保できる議席数の予測は。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
これから毎日変わると思うが、公示日の段階で30減の228と見る。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
230と見る。自民の単独過半数が無理かどうかはまだわからないが、トレンドはこの数字より下がり気味になると思う。

反町理キャスター:
現有議席32の公明は。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
3減の29と見る。北海道や大阪など厳しいところがある。ただ小選挙区と比例の重複立候補をしないことは潔く、そこへの評価はあると思う。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
公明党は、比例が21で小選挙区は7、28議席ぐらいと思う。大阪と兵庫で維新との戦いがあり、そして北海道、東京、広島。力の分散が起きる。支持母体の創価学会が高齢化しており基本的に退潮傾向にある。
反町理キャスター:
自公の予測値を足すと260弱ほど。過半数は軽くクリア、全委員会で多数となる安定多数も取り、だが全委員会で委員長と過半数を取る絶対安定多数の261には足りない。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
与党にはとりあえず安堵が広がる数字で、政局的には安心材料になる。ただ、この後想定外の不祥事が起きて支持率が低下し2025年の都議選を落としたりすれば、参院選が迫る中で選挙を戦えない顔だということにはなり得る。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
自民で単独過半数を割り公明を足して過半数なら、俗に言う石破おろしの声は出るだろう。だが、具体的に「石破さん辞めろ」とまでは行かないのでは。

竹俣紅キャスター:
一方、立憲の議席予測は。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
19増の117。枝野さんや泉さんなら無理だろうが、野田さんは安定感がある。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
自民と立憲の合計が大体360前後というのがパターンなので、130ぐらい。ただ、このうち私のイメージでは比例が45前後。政党の力が出る小選挙区で3桁に達しないことがポイント。
反町理キャスター:
維新と共産の予測は。
三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
維新は2増で46、共産は増減なしで10。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
維新は45、共産は10。
反町理キャスター:
立憲の伸びをどう受け止めるか、また立憲と共産党との関係は。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
小沢一郎さんは野党連携を期待して野田さんを推したが、安保法制の違憲部分の廃止について明確に野田さんが否定し、共産党はかなり頑なになった。政権交代時は一本化に成功していたが難しい。また期待していた野党連携ができず、立憲の中で今後リベラル派と野田さんの亀裂が深くなるのでは。
東京24区、和歌山2区…注目選挙区の行方
竹俣紅キャスター:
自民党はいわゆる裏金問題に関係した議員のうち12人を非公認としたが、うち9人が立候補。非公認の場合は配布できるビラや掲示できるポスターの枚数が少なく、また政見放送がない点、さらに政党から議員の応援や活動資金などを受けられない不利益がある。

三浦博史 選挙プランナー アスク(株)社長:
普通、非公認となって一番つらいのは政見放送。ご年配の方はよく見ており知名度と認知度に影響する。ただ、東京24区の萩生田さんはすでに認知度が高い。簡単には揺るがないと思う。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
個人票も後援会もしっかりしている。あとは公明党の支持母体である創価学会票がどれだけ乗るか。八王子には学会票が多い。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
2024年1月の八王子市長選では自公推薦の候補が勝ったが、都議補選では負けていた。この傾向が続くとやや苦しい。また時折衝突することもあった公明党との関係がどこまで和解しているか。そして水面下で小池百合子都知事がどこまで協力するか。

竹俣紅キャスター:
今回の衆院選で選挙区の区割りが見直されたうちの一つが、県内の小選挙区が3から2に減った和歌山。注目は2区で、自民党から二階元幹事長の三男である二階伸康氏、自民党を離党した無所属の世耕弘成氏が出馬しており、保守分裂の状況。
岩田明子 ジャーナリスト 元NHK解説主幹:
情勢調査では世耕さんが強く、自信を持って鞍替えしたと思う。ただ政治とカネの問題のとき、当時の森山総務会長は、参議院である間は刺客を立てないと発言した。衆議院に鞍替えした場合は別だということ。今回勝ち上がっても、森山さんが幹事長でいる間は復党の可能性は低いのでは。

反町理キャスター:
二階さんが今回落選してもすぐ支部長交代とはならず、2回や3回は小選挙区の候補者として戦う権利を持つか。
久江雅彦 共同通信特別編集委員:
おそらくそう。だが自民党の覇権構造がどうなるか次第。世耕さんが今回、自民党を離れていても総裁選にコミットしていたことは周知の事実。とりあえず議席を取ってあとは全体の流れを見ながら自民党に戻っていこうということでは。
「BSフジLIVEプライムニュース」10月2日放送