石破茂内閣が発足し、石破首相は総選挙を10月27日に行うことを決断した。「BSフジLIVEプライムニュース」では伊吹文明元衆院議長と輿石東元参院副議長をスタジオに迎え、山田惠資氏とともに「納得と共感内閣」と銘打つ石破政権の針路について議論した。

“論功行賞”内閣で「納得と共感」得られるのか

竹俣紅キャスター:
10月2日に発足した石破内閣の顔ぶれは、20人中13人が初入閣、総裁選で石破氏を推薦した人が6人入閣。総理の意図は。

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山田惠資 時事通信社解説委員:
自分の当選に貢献をしてくれた人を多く入れている意味で「論功行賞内閣」。それ自体は特別不思議ではない。もう一つ意図を強く感じるのは、防衛大臣経験者が多く、安保通を非常に多く散りばめていること。これがうまく機能するか。ただ石破さん自身の政権基盤が弱い。

伊吹文明 元衆院議長:
派閥が形式的に一度崩壊し、派閥とカネの問題がある旧安倍派の人たちを登用できない政治的な条件があった。だがこれほど自分に協力をした人を重用した例は私の経験にはない。すぐ選挙となるが、党として互いに補いながら1人でも多く当選させなければいけない時にどうなのかという感じはある。

輿石東 元参院副議長:
あまりに論功行賞、身内で固めている。国民からの納得と共感はそう得られないだろう。

竹俣紅キャスター:
役員人事では菅元総理を副総裁に、森山裕氏を幹事長に起用。総裁選で戦った小泉進次郎氏は選対委員長、さらに麻生元総理は最高顧問。自民党内のパワーバランスの変化は。

山田惠資 時事通信社解説委員:
岸田前総理が相当助言をしたと聞く。今回の政権ができる上で岸田さんの役割が大きく、副総裁として菅さんを取り込む形。一方、森山さんが強く推したと思うが、麻生さんを最高顧問にしたことに岸田さんは非常に強い不満があるらしい。敵を作ることは政権運営に打撃を与えるので、石破さんはバランスをとったつもりかもしれない。だが不安定になる材料を抱えている。

輿石東 元参院副議長:
微妙なバランスをとった感じ。論功行賞でほとんど固めたが、例えば総務会長に置いた鈴木前財務相は最高顧問の麻生さんとも深い関係がある。

伊吹文明 元衆院議長:
森山さんを幹事長にしたのは良かった。石破さんが最も不得意なことが得意な人。立憲民主党の野田代表も、結果的に執行部は野田支持で固めている。もう少しうまくこなしながら人事構成をした方がよかったかどうか、これは選挙結果次第。

石破内閣の支持率“50.7%”は高いのか低いのか

反町理キャスター:
石破総理が10月27日に総選挙を行うと決断した。共同通信の世論調査速報によれば、石破内閣の支持率は50.7%で不支持が28.9%。発足時支持率は菅義偉内閣の66.4%や岸田文雄内閣の55.7%に比べて低いが、政治とカネの問題による逆風の中でよく頑張っていると見るか、今がピークだと厳しめに見るか。

伊吹文明 元衆院議長:
派閥とカネの問題、処理のやり方は本来石破内閣とは関係ないが、それも踏まえて数字が出ている。石破内閣だけへの評価として論評するのはちょっと気の毒。

反町理キャスター:
今度の総選挙で自民党の現有議席258が30も減れば単独過半数割れとなる。一方で2009年の政権交代直前の政党支持率を見ると、当時の自民党が15.1%、民主党はそれを上回る18.6%だった。今回は自民の21.1%に対し立憲は4.0%という体たらく。

伊吹文明 元衆院議長:
それに安心せずしっかりやっていけるか。連立を組んでおり、自公で過半数を取るというのが表向きのコメント。自民党だけで過半数が取れればよくやったということでは。

反町理キャスター:
共同通信の世論調査では、裏金関係議員を今度の総選挙で公認することを「理解できない」が75.6%、「理解できる」は20%のみ。この内閣支持率は、今も逆風はあると見えるが。

輿石東 元参院副議長:
50.7%という数字は意外とよく出た。政治とカネの問題に対する不信感があるのにまだ野党の方へシフトしてもらえない。立憲も謙虚に見ていかなければ。

反町理キャスター:
4人に3人の「理解できない」は、50人いる裏金関係議員と言われる人たちが小選挙区で公認された場合、潜在的な反自民票を投じる可能性がある人たち。非公認としても公認しても自民党は厳しい。

伊吹文明 元衆院議長:
私が書いた綱領の文章を石破さんは使ってくれているが、総裁として「勇気を持って自由闊達に発言する」。だから公認の基準を説明したり、あるいは公認した人に対し「今後同じことがあれば即離党、司法判断が出れば公職返上」と一筆を取るなどを重ねながら公認候補を作っていかなければ。

輿石東 元参院副議長:
政治とカネの問題に限ればそういう数字が出るだろうが、石破内閣が望まれるのは景気を良くするとか少子化を止めるということ。政治とカネの問題だけを批判しているだけでは勝てない。私たちは自民党にはできないこういう社会を目指す、というものがなければ本当の支持は来ない。

石破総理の衆院解散、過去発言との整合性は

竹俣紅キャスター:
与党は10月7日と8日に各党代表質問を、9日に党首討論を行うことを提案したが、野党は予算委員会の開催を主張し平行線。石破総理は9日に衆議院を解散し、15日公示、27日投開票の日程で総選挙を実施すると表明した。この決断をどう見るか。

伊吹文明 元衆院議長:
どんどん支持率が下がる可能性があり、早いに越したことはないという党利党略的判断もある。ただ、党利党略のための「7条解散」は卑怯でやってはいけないという点、私は石破さんと同意見。憲法69条は、内閣が衆議院で不信任を受けた場合総辞職するか、衆議院を解散しなければならないと定めている。一方7条には、天皇が内閣の助言と承認により国民のために行う国事行為として衆議院の解散が定められている。これが69条の手続きを定めたものか、それとも独立して内閣が一方的に行えるものなのかについては長い論争がある。高度に政治的な事象として最高裁も結論を出していない中、7条解散が内閣の判断で行われる事実がどんどん積み重ねられてきた。

伊吹文明 元衆院議長:
主権は国民にあり、間接民主主義で議院内閣制であるなら、よほど国民に直接聞かなければならないこと以外は国会に法案を出すべき。だが今回は憲法の趣旨に反していないと私は思う。石破さんは自民党内で総裁になり、岸田さんが総裁だったときの議員構成で総理に指名されただけ。できるだけ早く主権者の判断を聞いて国政運営にあたるべき。今回は「国民に直接うかがわなければならない重大事」。私が総理ならそう言う。

輿石東 元参院副議長:
石破さんもそういう言い方をし始めている。しかしもう一つ、国民の信を問うとき予算委員会で論戦をして判断材料にとも言っており、そこは欠けている。また世界情勢がどうなるかわからないときに解散を急ぐべきでないとも言った。中東を見ればそこはぶれている。

山田惠資 時事通信社解説委員:
一番勝てるときに解散するという本音を見透かされないような説明をしきれるか。試される場面。

反町理キャスター:
過去の発言との整合性が必要。自身の人気を上げた発言を否定して政権を維持しないといけない。苦しいのでは。

伊吹文明 元衆院議長:
それをうまく説明すること、それがその人の能力。

野党のような与党と、与党のような野党

竹俣紅キャスター:
総裁選後の9月28〜29日に行われた毎日新聞の世論調査では、石破総裁に「期待する」が52%、「期待しない」が30%。立憲の野田代表は「期待する」が49%、「期待しない」が33%。野田代表への期待と課題は。

輿石東 元参院副議長:
野田代表の経験、自らの考えを通していく点は評価できる。だが自分の考えを貫いていくために、党内の基盤にもう少し配慮すべき。ノーサイドと言ったが、党内人事を見るとワンサイドの印象を持たれていると思う。

山田惠資 時事通信社解説委員:
石破さんは野党のような与党、野田さんは与党のような野党。論戦の中で選挙民は対立より共通点の大きさを見ていく可能性がある。政治改革だけは割れるが。そこで野田さんが対立を強調するか、無党派の保守に訴えるのか。政権を目指す上ではっきりしなければならない時は必ず来ると思う。

反町理キャスター:
自公が一挙に過半数割れまで行く可能性より、立憲として今回は一定のところまで議席を増やし、2025年の参院選で勝負して、まずはねじれ国会にもっていくイメージは。

輿石東 元参院副議長:
当然考えなきゃいけない。過去に我々は体験した。2007年の参院選に勝ち、2009年に政権交代。しかし当時と違うのは、政権交代に向けて立憲がんばれという有権者の熱意がそこまで達していないこと。

竹俣紅キャスター:
9日に党首討論が実現すれば石破総理と野田代表による初の直接対決。論戦に積極的ともいわれる二人が与野党のトップになったことへの期待は。

伊吹文明 元衆院議長:
石破さんが党内で批判的にものを言える立場ではなくなったから、歯切れは悪くても国民にうけないことも積極的に言ってくれた方がいい。施策には必ず財源がいる。それを国民に話さない限り政策にならない。また野田さんは現実的な判断をされる立派な方だと思っている。かみ合った議論を。

輿石東 元参院副議長:
野田政権では、税と社会保障の一体改革が下野の出発点だった。それがある程度わかっていても、国の将来のために大事なところだとぶれずに決断した。ここは高く評価していい。だが政権を失ったら何もない。その政局観をもう少し備えてほしい。
(「BSフジLIVEプライムニュース」10月2日放送)