市場は深夜・早朝から動き出し、私たちの食を支えている。ただ、早朝が中心の仕事ということもあり、なり手不足や高齢化の課題を抱えている。アプリを使ったデジタル化で深夜2時の出社を5時に変えることができた広島の市場を取材した。

電話、FAXの連絡をアプリに

冷凍の魚介類や加工品の流通のしくみはこうだ。

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まず「加工会社」や「商社」が扱う国内や海外の商品を市場で卸売りを行う「大卸」が仕入れる。それを「仲卸」が買って、小売りの「魚屋さん」や「スーパー」などに卸すことで我々の食卓に届く。これまで「仲卸」は「大卸」への注文作業を電話やFAXで行ってきた。大卸の若手社員は電話での注文や出庫作業に対応するため午前2時に出社していたという。

広島魚市場 冷塩食品部・濱本愛子さん(24・入社2年目):
以前は午前2時出社だったが、仲卸への出庫作業が2時では間に合わないときもあり、寝ている間や、出社の準備をしているときにも電話がかかってきていた。

電話やFAXに頼っていた卸売業者間の注文をアプリに変えることで、深夜、早朝の“アナログ”な作業から解放された。

仲卸からの電話を受けたり、保管している冷蔵庫への出庫の指示を出す電話も必要なくなり、出社時間を午前2時から5時に変えることができた。アプリの導入は仕事の効率化だけでなく、プライベート面に大きく貢献しているという。

広島魚市場 冷塩食品部・濱本愛子さん(24・入社2年目):
午前2時出社の時は、午後6時に寝る生活で、普通の時間に出社している友達とは退勤後に遊べなかったが、会えるようになった。

水産業界の高齢化、人手不足の解決の糸口に

このアプリを開発したのは広島のスタートアップ企業「ウーオ」。ほかの水産物取引アプリも開発、小売業者や飲食店が、全国100以上の漁港や市場から水産物を直接注文できるシステムを構築し、水産業のDX化を進めている。板倉社長は、情報のやりとりだけなら人を介する必要はないと指摘する。

ウーオ・板倉一智社長:
全国的な課題として人手不足、若手が育たないこと、高齢化がある。シンプルに情報のやりとりだけだったら、人を介さなくても機械がやればいい。これまでの慣れで、大変だけどやっていくしかないと考える人が多いが、そこにパイオニア的な人が出てきて、“明らかに人がやることじゃない”ということに気づけば、より早くアプリの導入は進んでいく。

出荷のスピードが速く

さて、仲卸にとってアプリはどんな効果を及ぼしているのだろうか。

大卸の広島魚市場と取引している仲卸の「広洋水産」の岡野利彦社長は、電話連絡が不要になった上、取引がスムーズになったと語る。また、電話だと起こりやすいミスもなくなったという。

広洋水産・岡野利彦社長:
2ケース注文したのに1ケースしか出ていないというような、聞き間違い、言い間違いがなくなった。また、荷物の出るスピードが早くなった。

広島市中央卸売市場は、2032年度までに全棟の建て替えを目指している。時代にあった仕事のデジタル化を進め、今後、若い人材を確保できるかどうかが注目されている。

(テレビ新広島)

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