「四の五の言わずに押せ曳け廻せ!」。長崎くんちの麹屋町「川船」が、10年ぶりの奉納に向けて熱い準備を進めている。3トンもの重さを誇る船を22人の根曳が力強く曳き回す姿は、まさに激流を下るかのような迫力だ。

麹造りがさかんだった町

麹屋町は中島川沿いに位置し、江戸時代初期から味噌や醤油の原料となる麹造りがさかんだったことからその名が付いた。

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今でも町の中心を通る「中通り」には昔ながらのお店が残る。1964年から始まった川船の奉納は、この町の歴史と深く結びついている。長さ約6.5メートルの川船には、麹屋町ならではの特徴がある。

船の屋根には躍動感溢れる緋鯉と真鯉が
船の屋根には躍動感溢れる緋鯉と真鯉が

屋根の「飾」には、躍動する緋鯉と真鯉があしらわれ、水しぶきが上がる。見せ場の一つ「網打ち」では諏訪神社に献上する鯉を約3キロある投網で捕まえる。さらに、終盤には5回転半の大技「梅の風車」を披露する。

心強い小さな応援団からパワーをもらって

2024年の川船に新しく加わったのが、30歳の山口大樹さんだ。左舷3番目の位置で船を押す役割を担当している。

山口大樹さん
山口大樹さん

「1人では船は動かないので、いかに左舷の5人が船回しの時にエンジン=力になるか。この5人の力を1つに集めるのが大事」と山口さんは語る。

人一倍声を出して頑張る山口さんには心強い応援団がいる。勤務先の小学校の教え子たちだ。小学校教師として働く彼は、子どもたちから大人気だ。「やっぱりパワーもらいますね。子供たち目の前にしたら心が癒されるというか、違う気持ちで新鮮な気持ちで取り組んでいます」と笑顔を見せる。

危機を乗り越えて

本番を1カ月後に控えた8月下旬、麹屋町に一大事が起こった。

過酷な稽古が続いたためか、船の車輪の部品が割れてしまったのだ。ここで麹屋町の底力が発揮された。町内には大工や職人など多くの技術者がいて、彼らの手によって船は一日で修理された。

麹屋町の底力・本気を届ける

修理を終えた船で、いよいよ最後の追い込みだ。「麹屋町の底力・本気っていうのが諏訪の神様に届けっていうところが大事だと思う」と山口さんは意気込む。

長采 山本泰弘さん
長采 山本泰弘さん

長采の山本泰弘さんは「皆さんに麹屋町は200点満点って言われるような奉納ができるよう頑張りたいと思います」と決意を語った。

「四の五の言わずに押せ曳け廻せ!」を合言葉に、麹屋町の川船が諏訪の舞台で10年の時を経て躍動する。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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