全長11メートル、重さ3.7トンの絢爛豪華な船を囃子(はやし)に合わせて豪快に回す西濵町「龍船」。17年ぶりに舵手として龍船を操る男性がいる。「自分の中では前を取り戻す」その思いを胸に、100%の船回しを目指す。

長崎くんち唯一の趣向で魅せる

長崎くんちの踊町「西濵町」が誇る龍船は、全長11メートル、重さ3.7トンの巨大な船だ。安南国(現在のベトナム)から王族の娘が嫁入りした際のアニオー行列を表現したものといわれている。

長崎くんちで唯一無二の仕掛け 屋形を開くと舞台が!
長崎くんちで唯一無二の仕掛け 屋形を開くと舞台が!
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最大の特徴は、屋形を開くと舞台ができること。くんちの曳き物で唯一の趣向だ。今回は中国・上海出身のシッシーチーさんが二胡を演奏する。船上の舞台を使った演出は西濵町でしか見ることができない特別な奉納だ。

ハンドル操作が鍵を握る

西濵町は飲食店や商店が立ち並び、至る所に「龍」が見られる。町のシンボルとも言える「龍船」は今年大きく変化した。

後輪は木製から金属製に
後輪は木製から金属製に

これまで木製だった後輪が金属製に変わったのだ。

西濱町自治会 坪田源一郎会長
西濱町自治会 坪田源一郎会長

西濵町自治会の坪田源一郎会長は「車輪の滑りがよくなっている。(重さは)1.5倍くらいになっている」と説明する。
しかし、新しい車輪には新たな課題もある。「ハンドル操作を間違えると切りすぎたり、切れなかったりする。不安です。ハンドルに任せるしかない」と坪田会長は語る。

自動車レース経験を活かす舵手

龍船は、船の先頭に座る2人の「舵手」がハンドルとブレーキを使って操作する。
今年、ハンドルを担当するのは諫早市の森武義治さん(51)だ。

舵手 森武義治さん
舵手 森武義治さん

森武さんが選ばれたのは、ある特技が関係している。

森武さんは自動車レースの「ジムカーナ競技」の九州地区大会で優勝するほどの実力者だ。「自分との戦い。どれだけシビアに(コーナーを)詰めて走れるか。ブレーキをどこまで遅らせられるか。どこまでアクセル踏めるかとか」と、その経験を語る。

森武さんがくんちに参加したのは2000年と2007年。
2014年にも「舵手」に抜擢されたものの仕事の都合で出演を断念せざるを得なくなった。
「何も考えられず、その年のくんちも全く見なかった」と当時を振り返る。

そして今年、17年ぶりの挑戦。「どんどん本番に近付く。都度当時を思い出して、やっと戻ってきたという実感がある」と森武さんは語る。

息の合った100%の船回しを

稽古では、根曳との息を合わせることが課題となった。9月3日の稽古では、船回しの際に石畳が擦れる異音が響き、森武さんも「自分としては場所の真ん中で回したいが左舷側で回っていた」と納得できない様子だった。

しかし、9月13日の稽古では明らかな進歩が見られた。

「本番は100%の船回しを」と意気込みを語る森武さん
「本番は100%の船回しを」と意気込みを語る森武さん

「80%ぐらい。本番は100%に持っていきたいですね」と森武さんは自信を見せる。
「若い人、ベテランの根曳もいる。みんなの気持ちをのせた龍船の奉納ができるようハンドルも頑張りたい」。

10年ぶりに諏訪の杜に姿を見せる西濵町の龍船。船を改良し時代に合わせた演出を取り入れ、今年ならではの奉納を目指す。

(テレビ長崎)

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