世界54ヵ国が体罰禁止を法制化
北欧ミステリーが大好きでよく読むのだが、 スウエーデンの刑事小説を読んでいたら、 刑事である主人公が、言うことを聞かない自分の高校生の息子を、 叩いてしまうシーンが出てきた。
我に返った主人公は息子に謝った後、「警察に電話してくれ」と言う。 もしかしたらスウエーデンでは体罰は犯罪なのかと思って調べてみたらそうだった。
今から40年も前に世界で初めて体罰の禁止を法制化し、 今では他の欧州諸国などが追随して世界で54か国が体罰禁止を法制化している。
民法の「懲戒権」はいらない!
日本でも親による子供への虐待事件が相次ぎ、 ようやく体罰の禁止をうたった児童虐待防止法の改正案が国会に提出された。 これにより親が体罰で子供にけがをさせた場合、傷害罪に問われる可能性がある。
ただこの改正案には不十分なところもある。
まず、法律の中に体罰そのものへの罰則規定がない。
また若手議員勉強会が提言した「児童虐待罪」の創設も見送った。
そもそも民法の懲戒権というのがおかしい。 親は子を教育に必要な範囲内で懲戒できる、というのだ。 これは親の暴力の口実になるではないか。
児相の職員は弁護士に相談可能
今回の法改正で評価できるのは、 児童相談所の職員が常時、弁護士に相談できるようにしたことである。
最近の事件では父親の脅しに屈した児童相談所の職員が批判されていたが、 ああいうモンスターに日々接しなければいけない児相の職員の責任にするのはかわいそうだ。 専門家の介入は必要なのだ。
例えば、生活保護の悪質な不正受給の場合、 最近は警察官OBがケースワーカーによる家庭訪問に同行することがある。 ケースワーカーが暴言、暴力を受けることがあるからだ。 これに対しては批判もあるが、 私は現場が望むならこういうことはどんどんやった方がいいと思う。
親が一線を越えたら、社会が子供を守れ
私にも小さい子供がいる。
子への教育としつけは親の義務であり権利でもある、と思う。
ただ親がその一線を越えたら、 社会が子供を守らなければいけない。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
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