いつも見ているものも、別角度から見てみると新しい発見があったりする。
普段よく見るある生き物を意外な角度から撮影した本が、8月21日に大和書房から発売された。
それがこちら。
魚を真正面から撮影した「世界初の魚の顔図鑑 うおづら」(税抜き1600円)だ。
約150匹以上の魚の正面からの顔“うおづら”を集めた写真集で、癒し系を始め、イケメン・美しすぎる・変顔などさまざまな種類の魚が、この図鑑のために撮影されたという。
水族館や図鑑などでは横から全体を見ることが多い魚たち。見れば見るほど、可愛らしい表情だったりと、興味をそそる。
でも、なかなかじっくり見ることのない魚の正面を、どのようにして撮影したのか? そして、そもそもなぜ魚の正面顔に注目したのか?
幼少期から魚が好きで、20歳の頃、東京タワー水族館(2018年閉館)に勤務していたという、著者の水生生物写真家・森岡篤さんに話を聞いた。
「魚にこんなに表情があることにびっくり」
ーー「世界初の魚の顔図鑑『うおづら』」誕生の経緯は?
初めは3年前から「うおづらカレンダー」として魚の正面顔を撮影していました。カレンダーを出すたびに人気が出てきて、徐々に有名な雑貨店さんでも扱ってもらえるようになりました。
大和書房さんから本の話が来たのですが、魚の顔だけで本を作ることは冗談みたいで正直怖かったです。
ーー魚の正面を撮ろうとしたのはなぜ?
何度も魚の写真を撮っていますが、たまたまカメラ目線の魚が撮れます。そのカットをよく見るとどこかで見たことのある誰かの顔にそっくりでした。
正面から魚の顔を撮影することは新しい表現ではありませんが、魚にこんなに表情があることにびっくりしました。それから表情豊かな魚たちを探して撮影することにしました。
ーー魚の正面の顔“うおづら”をどのように思う?
実は魚の正面を普通に撮影しても魚の顔なんです。
魚には喜びや怒りの感情が無いとか言われそうですが、口を開けたり、ヒレを動かすとアイドルのポートレートのように表情が出てきます。それをモニターで見てクスッと笑います。
誰かに見せて笑ってもらえると本当に嬉しいです。魚に励まされるような写真を撮れたことに感動します。
撮影は1回5分…魚との真剣勝負
ーーどのようにして“うおづら”を撮るの?
魚は一度自宅の水槽で慣らしてから撮影することが多いです。
たくさんの照明機材を使って、
ーー撮影で苦労した点は?
魚たちは自らレンズを見てくれることはなかなかありません、お尻を向けて嫌がっているのがよく分かります。
締め切りが迫っている中で静かに待つのは大変でした。(金魚ちゃんこっち向いてって話しかけていました。)
なお、満足のいく写真が撮れなかった場合は撮り直しをするとのこと。他の魚と撮影する順番を入れ替えたりし、調子が戻ったら再挑戦するという。
お気に入りの1枚は?
ーー図鑑では150匹以上の魚を撮影したとのことだが、どうやって選んだ?
僕がお世話になっている観賞魚の問屋さんで魚を探します。そこでは世界の魚を何百種類も見ることが出来ます。熱帯魚や金魚を中心に水槽をのぞき込んで、いい顔の魚を探します。
特に金魚はユニークな柄や形のものが多くて、探していても本当に楽しいです。
ーー本になった事への感想を教えて
たくさんの本に写真を出してきましたが、僕自身の本は初めての事です。しかも魚の顔だけで写真集を出すのは本当に怖いですが、撮影の技術が凝縮されています。写真を見てクスッとなってもらえたら嬉しいです。
森岡さんの最高の“うおづら”を撮るこだわりはすごい。水槽に魚をたくさん入れすぎたり、種類などによっても一緒に入れたりするとストレスになる魚もいるため、自宅では幅60センチと幅45センチの水槽各3つを使い分けて、まずは魚に森岡さんの家の環境に慣れてもらうのだそう。
そして、毎日世話をしながら撮影に向けて魚のコンディションを整える準備をし、奇跡の瞬間を切り取ったというのだ。
そんな森岡さんのお気に入りの1枚は写真集の表紙になっている、ほっぺが赤くて可愛い「ランチュウのおかめちゃん」だそう。金魚は成長の段階で色が出たり消えてしまうこともあるそうで、「奇跡的にこんなかわいい模様の写真を撮れて本当にうれしいです」と話してくれた。
全て正面からではあるが、微妙に上から見たり下から見たりと、いろんな角度から良い表情を狙ったという“うおづら”。9月19日~27日には、京都市のギャラリー「GALLERY35」で写真展が開催される。
写真集以外の“うおづら”に興味を持ったら、足を伸ばしてみるのはいかがだろうか。
【関連記事】
「めっちゃ幻想的」外出せずに壮大な“月の写真”を撮影…驚きの発想がTwitterで話題
偶然捕獲した不気味な「謎の魚」は何? “独特の模様”のワケを深海魚の専門家に聞いた