「これってなんて魚ですか?」

海に囲まれた日本で魚は身近な存在だが、あまり見たことがない魚の画像がTwitterに投稿され、話題となっている。

それがこちらだ。


目玉が大きく、光の加減もあるかもしれないが、色は銀と淡い青でどこか不気味さを感じさせる。背中と腹でデザインが違うのも特徴的だ。
ボトル缶コーヒーとの比較写真であまり大きくない魚だと分かるが、確かに見た目はインパクトがあり、あまり見たことがない。

Twitterに投稿したのは、都内でサメの標本を作っている学生の「sakuya」(@sakuya_DomasH)さん。sakuyaさんの知り合いの漁師が、1月12日に東京・神津島沖で金目鯛漁をしていたところ、仕掛けに偶然かかった。大きさは10センチほどだったという。

この魚に対して、Twitterでは「目がでかいせいで、ガチで怖い」や「絵に書いたような魚」などの驚きの声が上がり、4万超のいいねが付いている。(1月20日時点)

では、サメの標本を作る「sakuya」さんが「これってなんて魚ですか?」と聞くほどの、レアな魚の正体は何なのか? 深海魚に詳しい高知大学理工学部生物科学科の遠藤広光教授にお話を伺った。

水深100〜350メートルに生息する「ホシホウネンエソ」という魚

ーーズバリ、この魚の名前と特徴は?

ホシホウネンエソ(ワニトカゲギス目ムネエソ科ムネエソ亜科)です。ムネエソ亜科の仲間は、体が極めて扁平で体の高さが高く、背側が黒く、側面と腹側が銀色で、頭部と体の下方に多数の発光器(生物が発光を行う器官のひとつ)を備え、口は上付きで、眼が大きく、上方を見上げやすいように位置しています。最大で全長10センチ程度になります。

この記事の画像(4枚)

ーーこの魚は深海魚? どのくらいの深海にいる?

水深100メートルから350メートルの陸棚斜面の中深層域に生息します。


ーー珍しい魚?

珍しくないです。


ーー生息地域は?

日本では東北以南の太平洋岸沖、西部から中央太平洋の亜熱帯から温帯域に分布しています。


ーーどのあたりにどのくらいの数、分布している?

個体数の密度はわかりません。分布水深は上記の通りです。


食べられるかどうかも聞いてみた

ーー体の背中と腹でデザインが違うのは意味がある?

意味があります。
ホシホウネンエソが生息している中深層は薄暗く、隠れる場所がないので、敵に見つかりにくくするために、このような模様になったと思われます。


ーー何を食べている?

小型の甲殻類(カイアシ類)を主に食べていると思います。


ーー深海魚は陸に上がると水圧の変化で破裂してしまうと聞くが、今回そうなっていないのはなぜ?

正確には深海魚が急に浮上すると、水圧の変化で浮き袋が膨らんで内臓が口から飛び出す現象のことだと思います。今回の魚に関してはデータが少なく、あくまで推測の域を出ませんが、針にかかって、魚が死んだ時に浮き袋内に気体がほとんどなかったのだろうと思います。


ーーこの魚は食べることはできる?

毒は無いと思うので、食べることは可能でしょう。ただ、食べたことはありません。


ーーこの魚を狙って捕まえることは困難?

困難と思います。


ーーこの魚をみてどう思った?

状態が良い標本と思いました。


謎の魚の正体は深海に生息する「ホシホウネンエソ」だった。初めて見たという人も多いと思うが、専門家曰く珍しくない魚ということではあった。そして、ちょっと不気味な見た目も、敵から身を守るということであれば納得だ。


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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。