山形県内に甚大な被害をもたらした大雨から9月25日で2カ月。被災した鮭川村のホテルは、土砂は片付いたが営業の再開ができず、あの日から時は止まったままだ。現在の場所での再建は難しく、移転の選択を迫られている。

ホテルの1階はほぼ壊滅

鮭川村の羽根沢温泉にある「ホテル紅葉館」。2カ月前の大雨で裏山が崩れ、ホテル1階に大量の土砂が流れ込んだ。ホテル紅葉館の元木洋典専務は「扉の下くらいまで泥が来た、線がついているあたり」と当時を振り返る。

ホテルに流れ込んだ土砂
ホテルに流れ込んだ土砂
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約1カ月前の紅葉館は、1階はほぼ壊滅状態で全てが泥に浸かっていた。ホテルを経営する元木さんは、友人たちの力を借りて大量の泥をかき出し、25日に再び訪れると、床はきれいになっていた。

ホテル紅葉館・元木洋典専務:
再開に向け、直せるようにほとんど荷物も運び出して準備をしていたが、県によると復旧に2年くらいかかるということなので…。

原因となったダムの復旧に2年

今回の大雨で紅葉館が被害を受けた原因は、裏山にある県が管理する「治山ダム」が壊れ、大量の土砂が流れ込んだことだ。この「治山ダム」が復旧しないうちは、土砂崩れの危険があり、営業再開はできない。

元木さんは1日も早い営業再開を望んでいたが、最近になって県から「治山ダムの復旧には2年かかる」と告げられた。元木さんは「裏山の工事が終わらない限りは安全が確保できないので、営業再開は難しいと思っている」と語る。

再建が見通せないこの2カ月、元木さんは「あの日から時が止まったままだ」と肩を落とす。温泉宿の命である源泉をくみ上げるポンプもまだ土砂に埋まったままだ。裏山の安全性が確保できないうちは直せない。

ホテル紅葉館・元木洋典専務:
505号室。ここを見るのが辛いよね、完全に時間が止まっている。本来であれば、ここにお客さんが2人入る予定だった。そのままの状態。それまではここで普通に営業してたんだな…と、これを見ると感じる。

再び土砂が…ホテルは移転検討

さらに追い打ちをかけたのが、20日からの大雨で壊れた「治山ダム」から再び土砂が流れてきたことだ。元木さんは「側溝に入りきらない水がどんどん逃げてきて。下(ホテルの方)に流れてきて、きれいにした場所にまた砂や泥が流れ込んだ」と語る。

元木さんは、一度は再建を諦める考えもよぎったと言うが、「県の今回の支援策を見た時は、(支援の少なさに)がく然として、やはり厳しいかと正直思った。それでもいろんな方法が多分あると思うので、いろんな人にまた助けてもらいながら何とか再建させたいと思っている」と話した。

いま元木さんは、「移転した上での再建」を模索している。現在の源泉が引ける近くの安全な土地に、新たに旅館を建てることを考えている。しかし、移転には約5億円かかる見通しで、元木さんは事業を続けるには国や県のさらなる支援が欠かせないと訴えている。

(さくらんぼテレビ)

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