元日の地震で甚大な被害を受けた能登を、再び襲った大雨。輪島市や珠洲市をはじめとする能登に記録的な大雨をもたらした。各地で河川の氾濫や土砂災害が発生したため、一時100以上の集落が孤立し、死者や行方不明者も発生する事態となった。輪島市と珠洲市を中心とした9月23日からの動きをまとめた。

度重なる災害に被災者は…

元日の能登半島地震から9カ月、仮設住宅への入居も進み、生活再建のめどがついてきた住人もいた奥能登地域。そんな被災地に追い打ちをかける豪雨に被災者たちは…

珠洲市に住む人は:
やっと何とか、地震から立ち直れるかなって感じだったのに…

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珠洲市上戸区長会長:
私たちだけこんな酷い、いじめられるんだろうと空の神様を恨みたくなりました。

「直ちに身の安全を!」地震被害の奥能登に無情の雨

気象庁は9月21日の豪雨発生時に会見を開き、命を守る行動をとるように呼び掛けた。

気象庁の会見:
これまでに経験したことの無いような大雨となっています。命の危険が迫っているため、直ちに身の安全を確保しなければいけない状況です。

被災地を襲った大雨は、いったいどんな被害を引き起こしたのか。

震災で津波を経験した珠洲市「津波よりひどいわ」

9月21日珠洲市の定点カメラには豪雨で次第に水嵩が増していき、約40分ほどで泥水が車に到達してしまう様子が映されていた。

輪島市内に店を構える「もとやスーパー」の店主、本谷一知(もとやかずども)さんは、奥能登を襲った豪雨の様子を撮影していた。徐々に水が店舗に流れ込み、水嵩を増していく様子。それはやがて濁流となり、見慣れた町を飲み込んでいった。

本谷一知さん:
津波よりひどい。

本谷さんがこぼしたその一言が、今回の豪雨被害の甚大さを物語っていた。店内に流れ込んだ濁流によって陳列棚や商品は泥土に飲まれ、ほとんどが使い物にもならなくなってしまった。しかも、水も電気も寸断され、片づけもままならない状況だという。

もとやスーパー店主 本谷一知さん:
地震の後にとどめを刺されたなって。もう心が折れてしまった感じ

濁流はグループホームの施設も襲い…

輪島市内の河川では、濁流があっという間に橋桁を飲み込んでいった。

輪島市内にある介護付きグループホーム「もんぜん楓の家」。このグループホームでは、職員総出で施設内に流れ込んだ土砂を掻きだしていた。施設一面が泥にまみれており、すさまじい水の勢いを感じた。

当時を振り返り職員は…

もんぜん楓の家の職員:
ここが池みたいに下まで流れてて…。田んぼの水が流れているから田んぼの土が全部中に入っている状況。目の前でこういうことが起きたのが初めてだったのでビックリしました。

能登半島地震から約9カ月、復旧へと歩み始めた能登を襲った災害。今回の豪雨で、多くの人が再び避難所生活を強いられることとなった。

地震を生き延びた命を豪雨が…

FNN取材団:
トンネルの中に大量の土砂が流れ込んでいます。

輪島市中心部と門前町をつなぐ中屋トンネルでは、能登半島地震からの復旧工事を行っていた作業員など10人が救出された。しかし、その後、この内の男性2人の死亡が確認された。

輪島市の久手川町では、近くを流れる塚田川が氾濫した。住宅4棟が押し流され、4人の安否が分からなくなった。

安否が分からなくなっている内の一人が、中学3年生の喜三翼音(きそはのん)さん(14)。翼音さんの父は「本当は自分も捜索に加わって娘を探したいけれど、見守ることしかできない。娘が見つかった時のことは、その時になってみなければわからないけれど、抱きしめたい」と、悲痛な面持ちで語った。

地震からの生活再建の要、仮設住宅の一部も浸水

今回の豪雨は、仮設住宅に入居し生活再建に向けて歩みだした人々にも猛威を振るった。

仮設住宅の中は、電気が付かないため薄暗く、家財道具のほとんどが水に浸かってしまった。片づけをしようにも、断水が続いていたため、何もできない状況だった。

輪島市宅田町の仮設住宅で暮らす女性:
電気も来ないし、水も来ないし。きちんとした住まいが欲しいですよね。

仮設住宅の浸水被害は珠洲市でも…

珠洲市の仮設住宅でも浸水被害
珠洲市の仮設住宅でも浸水被害

珠洲市宝立町では、入居予定だった人が途方にくれていた。

仮設住宅に入居予定だった男性:
まさかこういうことになるとは思わなくて…明日入る予定だった。水はギリギリセーフで中には入ってないけれど…自然には勝てないですよね。命あるだけマシ。

珠洲市では、市内を流れる若山川が氾濫した。濁流で基礎部分が削られ、傾く住宅が…

傾いた家の住人:
どうしていいか分からないから、うちが流れないように見ている。中のものは、取り出していない。ダメですね、行くところないです。

珠洲市内では羽田登喜雄さん(72)が土砂崩れに巻き込まれて亡くなった。羽田さんを知る人「何でもよくマメに動く人やった。地域のためにもよく体を動かす人だった」と、突然の突然の死を悼んだ。羽田さんの姉・田甫初美さんは「私、両親の死に目にも会えなくて運が悪いのかな…弟にはよくしてもらったんで本当に感謝しかないです」と弟の死に涙を流した。

今回の豪雨は、能登半島地震からの復興へと歩み始めた被災者の心をも傷つけた。復興への歩みを止めないよう手厚い支援が必要だ。

(石川テレビ)

石川テレビ
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