再建が進む首里城正殿の正面に取り付けられる「向拝透欄間(こうはいすかしらんま)」を制作する作業が2024年9月に公開された。
優美な彫刻物には職人たちの高い技術と情熱が込められている。
鎌倉芳太郎の写真から得られた知見を活かす
首里城正殿の顔、唐玻豊(からはふう)の下に飾られているのが「向拝透欄間(こうはいすかしらんま)」である。
この記事の画像(8枚)正面に3枚、側面に2枚の合わせて5枚ある欄間には、躍動感のある獅子と優雅な牡丹(ぼたん)、曲線が美しい唐草が「透かし彫り」で施されている。
彫刻家 儀保克幸さん:
獅子は百獣の王で、牡丹(ぼたん)は百花の王と言われているように、高貴なものが2つ合わさることですごく品格のあるものにしていきたいと思っています
2024年8月から那覇市首里ではじまった制作には、若手からベテランまで5人の職人が携わっている。
最年長は沖縄県立芸術大学の非常勤講師を務める県出身の儀保克幸さん(56)。
儀保さんは、「当時の精密な写真が出てきたので、なるべく当時の様子がどうだったかというのを観ていただきたい」と意気込む。
制作には新たな発見が反映されている。琉球の文化や芸術の研究者・鎌倉芳太郎が1922年頃に撮影した写真をデジタル解析した結果、当時の文様や彫り方がより鮮明になったということだ。
彫刻家 儀保克幸さん:
彫りながら自分も当時に思いをはせながら、追体験しているようなイメージです。より当時のものに近いものが彫れていくんじゃないかと思います
携われることに喜びと責任を感じて
この向拝透欄間(こうはいすかしらんま)、実は表だけじゃなく裏にも同じ文様を彫っていく。
彫刻家 小泉ゆりかさん:
先行して裏を彫って、様子をみながら表も進めていこうと思って。両側から進めないと中心が分からなくなるので
厚さわずか4センチの板の両面に獅子や牡丹(ぼたん)などを立体的に彫る作業は、高い技術が求められる。
彫刻家 小泉ゆりかさん:
4センチの中で彫らないといけないので、彫り自体の下げるのは1センチぐらいが限度になります。頭をつかいながら、ここはなだらかに落とした方が奥行がみえるし、ここは立ち上がりを残したほうがみえるしなどです
試行錯誤しながら作業するのは、2022年に沖縄県立芸大大学院を卒業した若手彫刻家・小泉ゆりかさん(27)。首里城火災の時は、県立芸大の3年生だった。
彫刻家 小泉ゆりかさん:
しばらくは衝撃で、何がおきたか理解できないような感じだったと思います。思った以上に自分たちの身近にあったものなんだということを、無くなってから初めて気づいた感じです
あの日からまもなく5年、首里城の再建に携われることに、小泉さんは大きな喜びと責任を感じている。
彫刻家 小泉ゆりかさん:
沖縄の方々の心の中でずっと残ってきたものを、自分の手で今までの人たちの想いを感じながら作っていけることが自分の中ではすごくうれしかったので、より身を引き締めてやっていこうと思っています
2026年の完成を目指す首里城正殿。その細部まで職人の技術と情熱が注がれる。
(沖縄テレビ)