9月11日の石川県内は夏のような暑さだった。最高気温は小松で36.1℃、七尾と加賀中津原で35.1℃の猛暑日となった。暑い日に涼をもたらすのが海から吹き付ける風だが、この海風について粟原一矢気象予報士が解説する。

「海風」と「陸風」

暑い日に海に遊びに行ったりすると海の方から涼しい風が吹いてくる経験はないだろうか。これは、昼間に海から陸に向かって吹く「海風」と言うのだが、反対に夜は、陸から海に向かって「陸風」が吹くのだ。昼と夜で風向きが変わる海風と陸風の仕組みを見ていく。

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昼間は、太陽に照らされて地面の温度が上がる。すると陸の空気が暖められる。暖められた空気は軽くなるので、どんどん上に上がる。陸のほうは上昇気流になるのだ。そして、この空気は上空までいくと、今度は海のほうに流れていく。これが冷たい海の上空に行くと反対に下降気流になり、この下りてきた空気が今度は海から陸に向かって流れる。この風が「海風」ということになるのだ。

風が止まる「凪」の時間帯も

空気が循環することで海風が吹くということだが、夜はどうなるのかと言うと、逆の現象が起こるのだ。まず、夜は地面の温度が下がる。すると陸の空気は冷やされて重くなるので、今度は下降気流になる。下りてきた空気は海の方に流れる。これが「陸風」なのだが、海に向かった空気は暖かい海の上では上昇気流となって、上空では海から陸への風となる。夜は風の循環が逆になって、陸風が吹くのだ。

また、昼と夜の風が入れ替わる朝と夕方の時間帯は風が止むので、この状態のことを「凪」と言う。「風が止まる」と書いて「なぎ」だ。そして10日の日中も県内で海風が吹いていた。金沢の風向きと風速をグラフで確認してみよう。

上の矢印が1時間ごとの風向きを示している。金沢は西側が海なので、西からの風が海風だ。10日の明け方までは、東寄りの「陸風」となっているが、その後「凪」に近い状態があって、午前10時ごろから午後4時ごろまで西寄りで少し強めの「海風」に変わっている。その後、凪を挟んで夜からはまた陸風になっている。

海風で猛暑日に届かず?

10日は夏本番のような暑さだったのだが、むしろ海風のおかげで金沢は猛暑日に届かなかったのではないかと見ている。10日は、加賀中津原で猛暑日となったが、これは海風が吹く前のお昼の時間帯だった。金沢の10日の最高気温は午後1時20分の34.6℃なのだが、午前中から海風が吹いていたので暑さが抑えられたのだと考えられるのだ。

粟原一矢気象予報士(右)
粟原一矢気象予報士(右)

海風が入ってもしのげない暑さはもうしばらく続きそうで、暑さ対策は欠かせない。

(石川テレビ)

石川テレビ
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